「新しい観光名所か、環境破壊か」 保護猫による「猫島」計画に賛否両論 インドネシア

2025-12-10 06:00

ジャカルタ沖に「猫島」を設けるプランが提案されました。増え続ける野良猫を管理するとともに、多くの観光客をひきつける場所にするのが狙いですが、これには反対意見も出ていて、まだまだ議論が続きそうです。

猫の繁殖を抑え、観光名所にも

海岸でくつろぐ猫たち

画像はイメージです

インドネシア・ジャカルタのPramono Anung知事は、「管轄する島々の1つに野良猫を集めて、猫島を設置する」というプランを2025年5月に発表しました。市内の野良猫の数を抑制するとともに、猫が数多く住む日本の青島のように、多くの観光客をひきつけることを狙っています。

2024年推計によると、ジャカルタ市内には75万匹の野良猫と11万匹の飼い猫がいます。猫は1年に3、4匹の子猫を産むため、今後5年間でその数が4倍に増加すると予測されています。これは、病気の伝染や人間とのトラブル、野鳥の減少など生態系の不均衡といったリスクが高まることを意味します。

市は年間約2万匹の猫に不妊手術を行っていますが、それだけでは間に合いません。しかも、保護された猫たちを収容する施設も不足しています。

そこで知事が目をつけたのが、ジャカルタ本土から北西160キロメートルにわたって広がるサウザンド諸島です。

1000匹の猫を島に移住させる計画か

日本の猫島の風景

画像はイメージです

同諸島は約340の島からなり、多くは昔ながらの漁業を営む人々が暮らしています。なかにはリゾート地になっていたり、人が住んでいない島もあります。

「猫島ができれば、保護された野良猫などが収容されます。でもそのまま放置されることはありません」というのは、ジャカルタ食料安全保障・漁業・農業庁のHasudungan Sidabalok長官です。

「島内では1000匹ほどの猫たちが快適に過ごせる場所を用意し、十分な世話とグルーミングを受けられるようにします。人々はここを訪れ観光を楽しむとともに、猫に関する学びを得ることもできるのです」

ところが海の真ん中にある無人島に猫を移住させるという考えは、専門家や環境保護活動家の間で物議を醸しています。「猫が新しい環境に適応できないかもしれない」「島の野生動物に影響を与える可能性がある」というのです。

猫が在来種への脅威に?

インドネシアの猫の保護施設

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サウザンド諸島のMuhammad Fadjar Churniawan暫定知事は、「現在、猫たちにふさわしい島を探しているところです」と話しています。

「なかでもレッサー・ティドゥン島が適していると考えています。同島の面積は0.32平方キロメートルで、平坦な地形に加えインフラがそろっているからです」と彼。

この島は無人島で、主に野生動物の保護活動に利用されています。島にはウミガメの孵化場とマングローブの苗床があります。

しかしジャカルタ市議会では賛否両論があるようです。「自然保護区であるこの島に生息する動植物は、すべて保護すべき」「猫は捕食動物で、鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類を捕獲するため、保護活動の脅威になる」という意見がある一方で、「真剣に取り組めば、日本のように多くの観光客をひきつけることができる」という賛成論もあります。

賛否両論の議論が展開中

子猫を抱くアジア人男性

画像はイメージです

動物保護団体は、この計画に疑問の声をあげています。

「野生動植物が危険にさらされるだけではありません。すでに同諸島では、一部の島で猫が大きな問題となっているのです。猫を無人島に捨てる人々がいて、野良猫が増えてきているからです。こうした猫たちは餌が足りずに苦しんでいます」というのは、Jakarta Animal Aid Networkの創始者Femke den Haasさんです。

一方でHasudungan長官は「市は猫の適切な世話と固有種の野生生物の保護を確実に行う」と約束しています。

「環境保護専門家と協議中です。猫島が持続可能な形で運営できるよう調査し、提言を受ける予定です。それに猫島があるからといって、不妊手術プログラムや動物保護施設の建設を中止することはありません」と彼。

加えて彼は「猫島建設の目的は、動物への愛情を育み、猫の不妊手術とワクチン接種の重要性について市民を啓発することです。同時に医療従事者や運営スタッフの雇用まで提供できます。島内で食べ物やTシャツなどの猫関連のお土産も販売できるし、猫の排泄物からバイオガスを生成することもできます」と語っています。

猫島計画をめぐって、人々の議論は今後もしばらく続きそうです。

出典:Cat island’ in Java Sea? Jakarta mulls moving stray felines offshore but experts flag concerns

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