子ども達に働き方などを教える取り組み。児童養護施設で開催する「大人博物館」とは?

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-12-10 15:30
子ども達に働き方などを教える取り組み。児童養護施設で開催する「大人博物館」とは?

様々な職業や働き方を知ってもらい、子どもたちの巣立ちを応援する取り組み

児童養護施設は、保護者が居なかったり虐待を受けたりした児童の自立を援助する施設です。

【写真を見る】子ども達に働き方などを教える取り組み。児童養護施設で開催する「大人博物館」とは?

今回取材した『大人博物館』は、そこで暮らす子ども達に世の中の様々な職業や働き方を知ってもらい、巣立ちを応援するイベントです。

先日、東京都調布市の「社会福祉法人六踏園 調布学園」で開催された『大人博物館』を取材しました。
この日の参加者は「調布学園」で暮らす20名ほどの小中学生です。

様々な職業の大人たち8人が仕事の話をしたり、質問に答えました。

その職業は、エスティティシャンやフラワーアーティスト、シンガーソングライターから料理人、自衛官まで多種多様にのぼります。

8人それぞれのスペースに子どもたちが訪問し、仕事の内容からプライベートまで、様々な話を聴けます。

お菓子などを食べながらリラックスしたムードで進み、開始から15分ほど経過すると、子ども達は他の大人の所へ移動します。
この日はそれぞれの子ども達が、3人の大人と交流しました。

会場のやりとりから
司会
「お待たせしました。『大人博物館』を始めます!」
大人①(エスティティシャン)
「身体がすっきりしたり、明日からも頑張れそうとか、そう思ってもらえる方を増やしたくて、私はエステの仕事をやっています」
子ども
「えっ、スゴ~い」
大人②(フラワーアーティスト)
「私はフリーランス。1人でやってるから、どうしても自分から営業しなければならない。たまにアルバイトしたりとか、貯金を崩しながら生活したりとか…」

このイベントで大人は子ども達に、良い話だけではなく、結構シビアな話もします。
先ほどの“フリーランス”の方はフラワー・アーティストですが「フリーは会社に縛られることなく、やりたい仕事をやれる反面、キツいこともある」と、子ども達に伝えていました。

『大人博物館』に参加した子どもたちの反応
男の子
「サービスデザイナーの話がすごく面白かったです。『当然あるものに対して疑問を抱くことが仕事』というのは、そんな職業があるってことも知らなかったです」
女の子
「みんな凄い、凄いなと思って。興味がちょっと出たものは、沢山あります。全部かな?」

『大人博物館』館長が語る「環境づくり」への思い

イベントを通じて、子ども達には未知の仕事に対する興味が広がっていきます。

『大人博物館』の環境作りについて、主催者で『大人博物館』館長の林めるりさんに聴きました。

「大人博物館」館長 林めるりさん
「子どもたちにプレッシャーを与える場にしたくないので、どうしたら子どもが来やすい場になるかな、楽しめる場になるかなって思い『博物館』と名付けました。
大人の人が喋ります、ではなく、大人が展示されてますという言い方をして、子どもが楽しく、緊張せずに未来のことを考えられるよう『大人博物館』としています」

「大人博物館」に参加する大人たちは「展示物」ならぬ、「展示人」と呼ばれています。

子どもたちの巣立ちを支える取り組み。兄の自死がきっかけのひとつに

館長の林めるりさんは、現在25歳。

4歳の時に親からの虐待を疑われ、4人の兄弟と共に児童養護施設に入所し、18歳まで施設で暮らしました。
高校を卒業すると、料理人として旅館に就職しましたが、労働条件が厳しい、いわゆる「ブラック」な労働環境だったそうです。

林さんは4年半勤めて退職した後、ケータリングや料理専門の家事代行などを経てフリーランスに転じ、現在に至ります。

林さんは、自分の経験からも、養護施設の子ども達が「こう働かなきゃいけない」などの思い込みを抱かないように、様々な働き方を知るのが大切だと考えています。

その背景には、林さんと同じ施設で育ち、同じ料理人になった兄の存在があります。
林さんの兄は職場の人間関係などに悩んで精神疾患を患い、自ら死を選んでしまいました。

「大人博物館」館長 林めるりさん
「私がさっさと会社を辞めて、色々なことをしている姿を見せていたら、兄も会社を辞めようと思ったのかなとか、考えます。
兄はずっと私達兄弟のようにちゃんと働かなきゃ、周りはちゃんと働いてるのに、という考えにすごく捉われていたという印象がありました。
私は、そうじゃないっていうことに、気付けたんです」

目標は「5年後に100の施設で大人博物館を実施」!

林さんは去年7月に仲間と共に、一般社団法人「いまからつくる」を設立し、10月から『大人博物館』をはじめました。
それから1年2か月の間に、6回『大人博物館』を開催しています。

「大人博物館」館長 林めるりさん
「私たちの団体はヴィジョンに、~誰でも自身の価値を見出せる社会を作る~と掲げています。
『大人博物館』を通じて、まだ社会に出てない子どもたちにいろんな生き方、働き方があることを知ってもらい、自分を苦しめないルートを選んで欲しい。
そして関わった大人たちにもそれが伝わって、輪になっていければと思っています」

林さんは、これから全国の施設を回り、5年後には100施設で「大人博物館」を開催し、その後は、毎年の開催を目指したいと話しています。

TBSラジオ「人権TODAY」担当:松崎まこと(放送作家/映画活動家)

  1. マチアプ彼氏は“妻子持ち”当事者が語る「独身偽装」被害 突如音信不通…そして法廷で2年ぶりの再会 地裁は「貞操権侵害」認め約150万円の賠償命じる【news23】
  2. 「タイトル失う…」最強女流棋士が訴え “出産”か“対局”か…迫られる規定めぐり将棋連盟に“決意の一手” 専門家は「マタハラにあたる可能性」指摘【news23】
  3. 発見してすぐには通報せず…77歳のベビーシッターの女性を書類送検 1人で入浴していた4歳の女の子の注意怠り窒息死させたか 警視庁
  4. 河川敷で男子児童(12)の下半身触ったか 不同意わいせつの疑いで塾講師を逮捕 「小学校高学年くらいの男の子を見ると心がわくわくする」 警視庁
  5. 父に家族を託された16歳の少女 「爆撃」「強姦」の恐怖におびえ…数え年97歳を祝う沖縄の行事「カジマヤー」迎えた山城スミさん
  6. 中国・広東省で住宅火災 12人死亡
  7. 【速報】妙義山の火事が鎮圧
  8. 【速報】国民民主 補正予算案賛成へ 賛成多数で成立の見通しに
  9. アサヒグループHD 新たに情報流出か ハッカー集団「Qilin」が闇サイト上に公開 少なくとも1440件のファイル・フォルダがダウンロード可能に
  10. 中国から“おもちゃ拳銃”を輸入か 57歳の男性を書類送検 群馬県内で初
  11. 「住宅ローン減税」中古住宅に支援手厚く 減税の適用期間を新築と同じ13年間、ローン上限は最大4500万円に 「子どもNISA」も解禁へ
  12. 【 ヒコロヒー 】ぱーてぃーちゃんも驚き!ヒコ様すぎる理想のクリスマスの過ごし方