子育て世帯の救世主となるか?家賃約2割安で住める「アフォーダブル住宅」とは【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2025-12-12 20:05

大都市を中心に住宅価格の高騰が続くなか、東京都が始めようとしているのが、手頃な家賃で住むことができる「アフォーダブル住宅」の提供です。
対象は「子育て世帯」、いったいどのような取り組みなのでしょうか。

【画像を見る】子育て層が助かる工夫「アフォーダブル住宅」モデルの部屋

安心して子育てができる環境を整える新事業「アフォーダブル住宅」

高柳光希キャスター:
子育て世帯の皆さんが、賃貸住宅に今よりも2割安く住めるようになる未来が来るかもしれません。

いま東京都が進めているのが、新事業「アフォーダブル住宅」。affordable=手ごろな・入手可能なという意味で「アフォーダブル住宅=手ごろな住宅」ということです。

この新事業を展開することで、都は何を目指しているのでしょうか。

TBS報道局 社会部 寺島学 記者:
東京都は、手頃な家賃の住宅を子育て世帯に提供することで、まずは子供を望む世帯が安心して子育てをできる環境を整えることを目指しています。都は早ければ2026年度にも、約300戸を提供予定であることを明かしています。

入居条件は、▼子育て世帯、▼ひとり親世帯ということが明かされています。入居条件は現在も調整中で、今後、収入条件などがどのように定められるのかが注目ポイントです。

日比麻音子キャスター:
そもそも「アフォーダブル」、なぜ難しい横文字が使われているのでしょうか。

TBS報道局 社会部 寺島 記者:
海外では「アフォーダブルハウジング」という名称で、こうした政策が様々に実施されています。おそらくそれを参考にして「アフォーダブル」という言葉をとってきたのではと思います。

リターンがポイント?約2割安くなる仕組みとは

高柳キャスター:
実際に「アフォーダブル住宅」はどのような住宅なのでしょうか。モデルとなる住宅を見てみましょう。

【モデルの1つとなるマンション】
▼ネウボーノ菊川II
・都営新宿線「菊川駅」から徒歩3分
・2LDK+WIC(55.21㎡)

このような住宅をモデルに、新たに建設、または空き家を改装することが行われるようです。アフォーダブル住宅は、今の家賃から約2割安く住むことができるとされています。

どのような仕組みで安く住めるのか。

まず、東京都と民間企業が100億円ずつアフォーダブル住宅の事業=“アフォーダブル住宅ファンド”に出資。現在参加している民間企業は9社ほどです。

“アフォーダブル住宅ファンド”が集めたお金をもとに住宅を取得し、子育て世帯やひとり親世帯などを対象に、住宅が提供されます。

この仕組みの結果、なぜ家賃は約2割安く収まるのでしょうか。

TBS報道局 社会部 寺島 記者:
家賃収入が投資者にとってのリターンとなる点において、出資した東京都と民間企業への利回りの割合を通常と比べて小さくしていることが要因です。結果、減らしたリターンの分、家賃を低くすることができる仕組みです。

今回、取材させていただいた不動産会社には、子育て世帯専用のマンション建設や、空き家を活用した住宅も提供される予定があるということです。

東京都の「子育て世代層の流出」を防ぐための援助か

高柳キャスター:
東京都の小池知事はアフォーダブル住宅について、このように発言しています。

小池都知事(12月9日)
できるだけ多くの戸数を確保していけるように、知恵を絞っているところ。東京都住宅供給公社などからも多くの戸数を提供をしてもらって、まさにアフォーダブルな住宅として確保できるようにしている」

東京都は、なぜいま力を入れてこの事業を進めていこうと考えているのでしょうか。

TBS報道局 社会部 寺島 記者:
実は、住民基本台帳人口移動報告による「東京都の転入出超過数(年代別)」によりますと、「子育て世帯が30代以上になると転出超過の側になる」(=子育てしていく世代が東京都から出て行ってしまう)というデータがあります。東京都にとっては、将来を考えると失いたくない層です。

若い子育て世代はまだ稼ぎもなく、養育にかかるお金などの出費も多いことから、まずは子育て世帯を援助していくというのが、東京都のいまの方針です。

高柳キャスター:
提供対象者も安く住めて、出資する企業としても新しい稼ぎ方ができるという、メリットがたくさんある事業ですが、これから成功を収めるためには何が大事になってきますか。

TBS報道局 社会部 寺島 記者:
まずは「きちんと入居戸数を増やしていく」ことだと思います。

さらに、現在の提供予定は300戸であり、それだけでは全ての希望者は入居できない可能性があります。

東京都としては、この事業を民間企業が自力でやっていけるようにしたい思惑があります。そのために、まずはこの300戸できちんと出資に対するリターンも回収できることを示せる成功を収めたいはずです。

300戸は最初のステップ 民間事業へもプラスを目指す

高柳キャスター:
不動産価格がぐっと上がっています。需要はあるけれども、供給がどこまで追いついてくるのかですね。

「フォーサイト」元編集長 堤伸輔さん:
提供予定が300戸だとすると、例えば4人家族で1200人しか受け入れることができないわけですから、このベースをどれだけ増やしていけるかだと思います。

この場合のミソは、東京都が半分ファンドに出資して、都としては別にそこに対するリターンを、極端な言い方をすればいらないです。

100億円のファンドというのは、現在9社加わっているという民間ファンドとしてはそんなに大きなものではないと思います。

そのため、大きなリターンを求めるというよりは安定したリターン。むしろ、リターンよりも民間にとっては企業のイメージアップ、東京都にとっては子育てのしやすい自治体イメージの向上を求める事業にすること。それが将来的に、東京都からの人口流出を減らして、結果的には住民税などが安定して入ってくる仕組みを維持することに直結するわけです。

そういうことを考えると、東京都は100億円を呼び水に儲けを求めず、民間企業にたくさん参加してもらう。問題は、それをどう拡散していくかのだと思います。

日比キャスター:
すでに民間で、賃貸の物件がたくさんある中で、この都のサポートにより安価な物件がたくさん増えるとなると、民間事業の圧迫に繋がりかねないと思ったのですが。

TBS報道局 社会部 寺島 記者:
一部でそういう不安の声もありますが、おそらく東京都としてはそこも含めて、民間企業だけでこの事業がさらに広がっていけるよう、この300戸を最初のステップとして構築し、今後民間にとってもプラスになる状況を目指しているのかなと思います。

日比キャスター:
どれだけ持続可能かどうかということが今後、ポイントになってきそうですね。

「フォーサイト」元編集長 堤さん:
これがうまくいくなら、首都圏、さらに近隣の都道府県にも広げていって、空き家の多い自治体もたくさんあるので、そういうのを活かすことに繋がられたらいいと思います。

あとは子育て世帯だけではなく、一人暮らしや学生、そういう人たちにも手を差し伸べられるようになるとベストだと思います。

==========
〈プロフィール〉
寺島学
TBS報道局 社会部 都庁担当
自宅はエレベーターなしの5階

堤伸輔さん
国際情報誌「フォーサイト」元編集長
BS-TBS「報道1930」ニュース解説

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