新NISA3年目で「1月一括」VS「積立」ファイナルアンサーは?【Bizスクエアで学ぶ 投資のキホン#39】

2026年の株価はどうなる?投資戦略として勝率がいいのは「1月一括」か「毎月積み立て」か?投資のプロに聞いてみた。
【データを見る】新NISA3年目で「1月一括」VS「積立」ファイナルアンサーは?
2026年は「“AIの牽引力”スローダウン」
「26年末の日経平均は5万3000~4000円をイメージしている」
こう話すのは、『ニッセイ基礎研究所』の井出真吾さんだ。その根拠はー
「2024年末(約4万円)⇒25年末(5万円前後)と、1年で25%はなかなかない上昇率。簡単に言うとAIが牽引したということだけど、“AIの牽引力は26年はさすがにスローダウンする”と思う。AIの代わりになるスタープレーヤーがいるかというと、軍事関連やウクライナの復興関連とか想定できるものはあるが、いずれも25年のAIみたいに力強く相場を引っ張っていくことにはならなさそう」
結果的に、26年の上昇率は「巡航速度」だという。
井出さん:
「有名なフランスの経済学者トマ・ピケティは、株のリターンは大体年率6~8%だと言っている。僕もそのぐらいだと思う。なので25年末が5万円だとして、そこから6%上がると5万3000円。8%上がると5万4000円。そのあたりが今の時点ではターゲットになってくるのかなという感じ」
株価5万円は「バブルというほどではない」
足元の5万円前後という水準はどう見ればいいのか?
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「中間決算が終わった段階で、2026年度は純利益ベースで11.7%増が見込まれている。市場ではそれよりちょっと上ぐらいを既に織り込んでいるということ。そうは言ってもちょっと高すぎでは?と思うかもしれないが、バブルっていうほどでもない」
25年の「TOPIX」の値動きを見てみる。
井出さんによると、「26年度の12~13%増益」を前提とした場合、TOPIXの“高過ぎず安過ぎず”の標準レンジは3000~3500ポイントぐらい。
井出さん:
「25年7月下旬ぐらい、関税合意辺りからガンガン上がってきているが、12月で3400ポイントぐらいでまだ標準レンジの中。企業の業績に対して株価が何倍になっているかという指標のPER(※標準は14~16倍)でいうと、15.4倍辺りで少し上値余地もある感じ。もちろん26年度の12~13%の増益が本物かどうかのリスクは残っているが、それを前提にすれば別に高すぎることはない」
26年4月以降は“トランプ関税”が「増益要因」に?
日経平均ベースの数字を分析すると、「26年に5万3000円超えもあり得る」という。
【PER16倍】
▼会社予想:4万2030円⇒(EPS15%増で)4万8335円⇒(20%増で)5万436円
▼市場予想:4万5472円⇒(EPS15%増で)5万2293円⇒(20%増で)5万4566円
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「PER16倍というのは、先ほどの標準レンジ。仮に日経平均ベースでEPS(1株当たりの純利益)が15%増えると大体5万円前後で、最近の株価と一致している。なので株式市場では大体10~15%ぐらいの増益を今織り込み済みということ。さらにこの先EPSがもっと増える可能性はあると思う」
「アメリカの景気次第」としたうえで井出さんがあげたのは、26年4月に「トランプ関税の影響が一巡する」という点だ。
井出さん:
「自動車とか鉄鋼は25年度はトランプ関税でかなり業績が厳しい。ところが26年度になると、減益要因ではなく、むしろ増益要因になる。というのも25年4月から9月中旬までは関税が27.5%だったが今は15%。このまま15%でいけば26年4月以降は12.5%分の減税効果が得られる。おそらくそれで販売価格を引き下げることにはならないだろうから、結局企業側のマージンが増える。だから増益要因」
そのようなことで仮にEPS20%増となれば、「上は5万4000円ぐらいまでファンダメンタルズで見て正当化できるようになる」という。
25年は「一括投資」の方が「安く買えた」
こうした株価の動向予測を踏まえての「1月一括」か「積立」、どちらが有利な投資戦略なのだろうか。
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「お給料とかボーナスで投資してる場合は、結果的に毎月積立になる。別に毎月積み立てが良いとか悪いとかそういう話ではないというのは先に申し上げておくが、25年の株価をみてみる。2月の下旬のDeepSeekショック、4月のトランプ関税ショックで前半は大きく下がり、その後は順調に回復して大幅上昇している状況。なので25年に関しては、1月一括投資の方が毎月積立投資よりも、日本株で6%ぐらい、海外株でも1~4%安く買えたという結果」
<購入単価の比較>※24年12月=100
【TOPIX】▼一括投資:100.0▼積立投資:106.4
【S&P500】▼一括投資:100.0▼積立投資:101.2
【全世界株式】▼一括投資:100.0▼積立投資:104.1
過去38年の検証でも「一括」に軍配
さらに、過去38年間のデータも遡って検証してみた。
<1988年~2025年の実績>
▼一括投資の勝率
【TOPIX】58%(22年間)【S&P500】74%(28年間)【全世界株式】66%(25年間)
▼平均購入単価は一括購入の方が安い
【TOPIX】2.5%安【S&P500】6.2%安【全世界株式】5.1%安
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「積立投資よりも1月一括投資の方が安く買えた・リターンが高かったという“勝率”でみると、S&P500や全世界株式で7割ぐらい。購入単価も一括の方が5~6%安く買えた。TOPIXはちょっと勝率が下がって単価の割安さも若干薄れるが、日本株は38年間にバブル崩壊の時期を含んでいる。株価が下がっていく時は積立投資の方が有利なので、日本株はちょっと分が悪い。ただ日本株もバブルの清算は終えたから、今後はS&P500、全世界株式と近い状態をイメージしておけばいいと思う」
――そうなると、26年は一括なのではと思ってしまう
井出さん:
「ただ、1月一括はなかなか精神的な負担は大きい。年が明けてAI関連銘柄に大きめの下落局面なんていうのも来るかもしれないし、高市政権も今のところ順調だけど議員定数削減で維新との連立に亀裂が入るかもしれない。もしくは解散総選挙に打って出て負けたら、高市さんの責任論みたいなこともあり得る。そういうリスクを諸々考えると、“26年も年前半ぐらいにある程度分散した方がいい”のかなという気はする。少なくとも精神衛生上はその方がいい」
また、年前半の投資では「インフレ効果」も期待できるという。
井出さん:
「26年も恐らくインフレは続く。インフレだと企業の売上高や利益がその分増えるので、株価は上がりやすい。そう考えると、年間12ヶ月に分けて投資するよりは年前半ぐらいに投資しておいた方が、“インフレ効果を取り入れる効果”はあるのではないかと思う」
26年後半に“株価上昇”要因も?
26年後半にかけて“株価上昇”につながりそうなこともある。
1つは、アメリカの中間選挙。「トランプ大統領はなりふり構わず色々やってくる」と井出さん。また、日本株では26年に予定されている「コーポレートガバナンス・コード(上場企業の行動指針)の改訂」も大きいと話す。
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「改訂の目玉は、日本の上場企業が貯め込んでいるキャッシュにメスを入れるところ。キャッシュは何も生み出さないし、むしろインフレで目減りしていくだけ。そのキャッシュをたくさん持っていて適切なんですか?と。そういうのは海外の投資家から見るとわかりやすい。キャッシュを設備・人材・研究開発の投資に使うようになるかも、株主還元も更に強化されるかもと。なので改訂が見えてくると海外投資家が日本株の評価を少し高めるということも期待できる」
12月の格言「株を買うより、時を買え」
もともとは、銘柄よりも“タイミング”という意味だが、井出さんが強調する「時」は、長期間のこと。
『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「上がったり下がったりのタイミングを当てに行くのは“投機”といって非常に難しいし、この配信でもすすめていない。手っ取り早く儲けて一攫千金みたいなことはできないけど、長期投資、長く持ち続けることで少し儲けることができるよねと、そういう意味での解釈」