“ゲーム”に参入したテレビ局の本気度~大手「スクエニ」と組んだ「TBS GAMES」の次の狙い~【調査情報デジタル】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-02-28 09:00
“ゲーム”に参入したテレビ局の本気度~大手「スクエニ」と組んだ「TBS GAMES」の次の狙い~【調査情報デジタル】

2年半前、異業種であるゲーム事業に参入したTBSテレビ。これまでは自社の番組をゲーム化したタイトルをリリースしてきたが、今回、ゲーム大手の「スクウェア・エニックス(スクエニ)」と組んで本格的なオンライン対戦ゲームをローンチした。そこにはどんな狙いがあるのか、「TBS GAMES」の時松隆吉氏(ゲーム開発室長)に話を聞いた。

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「TBS GAMES」の誕生とグループ戦略「EDGE」

Meta社のゲーム機「Meta Quest」のヘッドマウントディスプレイを装着すると、眼前にテレビで見慣れたあのアスレチック・フィールドが出現、コントローラーを握った手を勢いよく振って突進するも…あっけなく池にドボン!

取材中に筆者がトライさせてもらったのは、約29年にわたるTBSテレビの人気番組「SASUKE」をバーチャル体験できるゲーム「SASUKE VR」。去年12月、日本に加え、アメリカやイギリスなどの海外でも「NINJA WARRIOR VR」として発売された。「Meta Quest」のユーザー数が多い海外を中心に、上手にステージをクリアしていくプレイヤー動画がYouTubeなどに投稿され、盛り上がりを見せているという。

これをゲーム会社と手を組んで世に送り出したのが「TBS GAMES」。つまりテレビ局自らが番組をゲーム化するなどの異業種ビジネスに挑戦しているのだ。

TBSテレビが「TBS GAMES」ブランドを掲げてゲーム事業に参入したのは、2023年7月。以来、「アイ・アム・冒険少年 超・脱出島」や「あたまおしりゲーム」など10近いゲームタイトルをリリースしている。 

このゲーム事業のベースとなっているのが、TBSが2021年に打ち出した「TBSグループ VISION2030」の中核戦略である「EDGE」だ。

「EDGE」=Expand Digital Global Experienceは、「コンテンツ価値の最大化を目指す拡張戦略」の意で、「デジタル分野」「海外市場」「エクスペリエンス(ライブ&ライフスタイルなど体験するリアル事業)」の3分野をコンテンツ拡張の最重点領域と位置付けている。この戦略に沿う形でTBSが海外市場も見据えて「アニメ」と並び力を入れているのが「ゲーム」というわけだ。

去年7月には、体制を強化するため、プラットフォームビジネス局内に「ゲーム開発室」が新設された。初代の室長となった時松隆吉氏はゲーム事業参入の具体的な狙いについてこう語る。

「狙いは『放送以外でのIP(注)展開』という文脈の中で、ゲームを単なる収益手段ではなく、『次のコンテンツビジネスの柱』として育てることにあると思っています。

テレビ局には、番組やキャラクターなど『強力なコンテンツIPの保有』、番組に加えSNSやイベントなどを通じた『マスへのリーチ力』、『社内外のクリエイターとの接点』、『映画・ドラマ・アニメなど映像制作や舞台・イベント制作のノウハウ』といった他業界にはない資産とリソースがあります。

また、『ゲーム発の番組化』なども今後視野に入れていくことで<テレビ×ゲーム>のクロスメディア戦略を両輪で回していくことが、TBSだからこそ挑戦できる領域であり、強みになると考えています」

(注)IP…Intellectual Propertyの頭文字から取った略称で、「知的財産」の意 

ゲーム大手「スクエニ」と組んだテレビ局ならではの狙い

この「ゲーム発の番組化」という観点からも、「TBS GAMES」が今大きな期待をかけているのが、ゲーム大手の「スクウェア・エニックス」と組んだ初のゲーム、「KILLER INN(キラー・イン)」(2月13日配信開始・冒頭の写真)だ。

これはオンライン対戦のマーダーミステリーアクションゲームで、謎に満ちた古城を舞台に最大24人のプレイヤーが「多数の羊チーム」と正体を隠した「少数の狼チーム」に分かれて戦い、相手チームを全滅させれば勝ちというもの。 

「TBS GAMES」が今回「スクエニ」と組んだのは、「開発力の高さとTBSが単独では到達できない世界観やゲーム体験を実現できると考えたから」だという。ただ、時松室長は、この「KILLER INN」がヒットして大きなIPに育ち、次の展開につながることに期待を込める。

「実写化できたらいいなと思うんですね。24人のタレントが集まったドラマで、狼チームと羊チームがお互いがわからない状況の中で騙し合ったり、倒し合ったりして最終的にどんどん人数が減っていくと。

また、謎解きみたいなミステリーの要素があるならば、イベントとして事業展開できる。TBS社内にはそうした関連の部署がいっぱいあるので、そういう横展開も狙いたいです」

“激しい競争”や“テレビとゲームの親和性”で苦労も

時松室長の話しぶりからは、ゲーム事業にかける本気度が伝わってくる。ただ、そもそもゲーム業界の競争は激しく、さらに、テレビ局以外にもマンガの出版社や映画会社など異業種からゲームに参入する企業は増えている。時松室長も現在のゲーム事業を取り巻く環境の厳しさを認めつつ、こう話す。

「最近は『インディーゲーム』と呼ばれますが、ゲーム制作の人員もお金も小規模で新規のゲームを開発して、それがマルチ展開できる。まあ、『8番出口』がいい例だと思うんですけど、ああいう実例を見ると、やっぱりゲーム事業へのチャレンジと言いますか、夢を描く企業は結構多いのかなっていう気はしてますね」

また、テレビとゲームは一見、親和性があるように見えて、実は楽観視できないのが現実だと打ち明ける。

「人気番組の『ラヴィット!』は放送後にネットで話題になったり、若い子たちが盛り上がったりしているので、番組キャラクターのラッピーを使った『LAPPY GAMES』を開発し、番組で扱ってもらったら売れるだろうと甘く見ていたんですけれども、蓋を開けてみたらそうでもないという現実を突きつけられて」 

「番組をリアルタイムで観ている人たちって、やっぱりそれなりの生活習慣がある。一方、ゲームユーザーは自分の好きな時間にゲームをする人たち。となると、『この時間にはこの番組を観よう』とリアルタイムでテレビ視聴している人たちとはちょっと違うのかなと。自分の時間で娯楽を楽しむ人たちって考えると、TVerだったりとか、U-NEXTやNetflixとかの配信を観ている人たちの方が圧倒的にゲームとの親和性が高いのかなと思っています」

認知度アップへ「まずは1本」

「TBS GAMES」(ゲーム開発室)のメンバーは、ゲーム業界経験者も含め5人。時松室長はゲーム業界内で目指す立ち位置について、「異業種コラボの開拓者」と話す。

「本格始動からまだ2年半のチャレンジャーですが、テレビ局ならではのリソースを生かした『異業種コラボの開拓者』という独自の立ち位置を目指しています。他のゲーム専業企業と真っ向から戦うのではなく、“TBSにしかできないゲーム体験”を提供し、エンタメ×ゲームのハイブリッド企業としてのポジションを築こうとしています」

そして、「ホップ、ステップ、ジャンプ」に例えると、現在は「ようやく『ステップ』に足をかけた段階」として、こう続けた。

「この部署に来た時、上司からは『ゲームを10本出して1本当たればいい方だから』と。だから9本が、失敗とは言わないですけれど、仮にトントンだとしても、その中にやっぱり何かしら得るものがあると思うので、今はそうした知見をどんどんためる時期かなと思います」

最後に、「TBS GAMES」の当面の課題について尋ねた。

「社内リソースや人材確保もありますが、課題は社の内外で、『TBSがゲーム開発を手がけている』ことの認知度アップと信頼感の醸成です。そのためにも、まずは1本、IPとして育つタイトルを生み出すこと。それが信頼の起点になると考えています」

「調査情報デジタル」編集部

<時松隆吉(ときまつ・たかよし)氏の略歴>
2002年 TBSテレビ入社。営業局に配属されたのち、バラエティー制作に異動しディレクターを経て、編成局(現コンテンツ戦略部)で企画班に異動。
2015年~2024年に再びバラエティ制作に戻りプロデューサーとして、ジョブチューンやせっかくグルメ、櫻井・有吉THE夜会、輝く!日本レコード大賞などを担当。
2024年にマーケティング部門で視聴データ分析を推進。
2025年7月からプラットフォームビジネス局ゲーム開発室長(現職)。

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。

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