「私が死んだら引き取る人がいません」増加する孤独死の現実 希薄化するつながりの中で“死者の尊厳を守る”自治体の取り組みと思い

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-01-04 07:00
「私が死んだら引き取る人がいません」増加する孤独死の現実 希薄化するつながりの中で“死者の尊厳を守る”自治体の取り組みと思い

高齢者の一人暮らしが増え、地域社会とのつながりも薄れる中、身寄りのない方の「孤独死」が増加している。頼れる家族や親族がいない場合、誰に頼ればいいのだろう。そんな不安に寄り添おうと、全国に先駆けて独自の終活支援事業に取り組んでいる神奈川県・横須賀市を取材した。

【写真を見る】横須賀市の一時安置所に保管されている遺骨

「私を引き取る人がいません」孤独死した高齢男性からの遺書

幕末以来、海軍の街として発展してきた横須賀市。ここで10年前、あるアパートの一室で当時79歳の男性が誰にも看取られることなく亡くなった。数日後、市職員が遺品整理のため男性の部屋に入ると、ある手紙を見つけたという。それは自分の死後について記した、”最期のメッセージ”だった。

『私し 死亡の時 十五万円しかありませ 火そう 無いん仏にしてもらいせんか 私を引取る人がいません あにとぞお願い致します(原文ママ)』

遺書とも見られるその手紙は、肌着を買ったときについている厚紙を利用して書かれていた。さらによく見ると、『十五万円で』の“で”にバツ印をつけて『十五万円しか』と書き直した形跡がある。どんな思いで書き直したのだろうか。

手紙を見つけた市の職員に当時の状況を聞くと、偶然手にしたお菓子の空き缶に入っていたという。

横須賀市 民生局 福祉こども部 地域福祉課 終活支援センター
特別福祉専門官・主査 北見万幸さん

「枕元のそばに中身が空っぽのような缶があったので、どかそうとしたんですが、なんとなくフタを開けてみたんです。そうしたらこの手紙が入っていました。がんで余命宣告を受けたメモも見つかりました」

「いつ亡くなるかわからない、そのような状況の中、たった一人で必死に葬儀費用を貯めていたんです。生前に相談に応じていればご本人の意思に沿った弔いができたはずでした」

警察庁によると、2024年に自宅において死亡した一人暮らしの人は7万6020人。そのうち8割近い5万8044人が65歳以上の高齢者だったという。

単身の高齢者が増加する中、「おひとりさま」の人生の最期を誰がどう支えるのか。相談や支援体制の構築が全国の自治体で課題となっている。

引き取り手のない遺骨が急増 市民の尊厳と税を守るために

そんな中、横須賀市では全国でいち早く、高齢者の一人暮らしや、身寄りのない方の孤独死といった課題に向き合い、自治体独自の終活支援事業に取り組んでいる。

北見さん
「福祉は“ゆりかごから墓場の手前まで”なんて言われていますが、それでは市民の生前はもちろん、死後の尊厳を守ることができません。先ほどの手紙は事業を始めて間もない頃に見つけたんですが、その重要性を確信した出来事でした」

北見さんによると、携帯電話が普及し始めた頃から、身元がわかるのに引き取り手のない遺骨が急増し、様々な問題が発生するようになったという。

北見さん
「以前であれば、本人の住民票や戸籍などですぐに親族と連絡をとることができたのですが、携帯電話やLINEが主流になった現代では連絡先を見つけることが本当に難しくなりました。

その結果、離れて暮らすお子さんと連絡がとれず、やむを得ず市が火葬して遺骨を保管するといったケースも発生するようになりました」

引き取り手が見つからない遺体は、各自治体が法律に基づき火葬や遺骨の保管を担うことになる。その財源の一部は税金だ。そのため葛藤を感じる自治体も少なくない。

全国初 「おひとりさま」の最期を自治体がサポート

そこで横須賀市は全国初の自治体独自の終活サポートを始めることにした。まず2015年に開始したのは、身寄りがなく、生活にゆとりのない一人暮らしの高齢者を対象にした終活支援事業だ。

利用者は市の協力葬儀社と生前契約をして約27万円(2025年度)を支払う。市は定期的な家庭訪問と、死後は火葬から納骨まで一括で寄り添うというシステムだ。

これにより、2024年度末までに169件の登録があり、うち84人を納骨まで見届け、10年間で1000万円以上の市税削減につながったという。

その後、2018年には「エンディングノートの保管場所」や「緊急連絡先」などを登録して、登録者が亡くなったり、意思表示ができなくなったりした場合、市が本人に代わって登録された情報を関係者に伝える取り組みも始めた。

横須賀市のこれらの取り組みは全国の自治体から注目を集め、日々多くの問い合わせが寄せられているという。

自分の死は“自分で責任を”「終活」の適齢期はいつ?

一人暮らしの高齢者が増え、家族や親族の関係も希薄になる中、北見さんは「自分の死は自分で責任を持つ時代になっている」という。そのためにも「終活」は必要な備えであるとわかってはいるが、なかなか「死」について考えられないという気持ちもある。

北見さん
「日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えています。しかし健康で判断力や理解力がある健康寿命は70代なんです。そこから終活を始めても健康な期間は短いし、突然死の可能性もあります。だから「終活」は60代半ばまでには終わらせた方がいいと思っています」

「私を引取る人がいません」と書き残して亡くなった79歳の男性は、お経をあげてもらうことなく火葬された。「もしかしたら引き取り手が現れるかもしれない」と、北見さんは遺骨を2年に渡り安置所に保管していたが、「無いん仏にしてもらいせんか」という男性の“最期のメッセージ”を思い出し、知り合いのお寺の無縁納骨堂におさめてもらったという。

人生100年時代、という言葉が唱えられて久しくなっている、いまの日本。一方で、「人と人とのつながり」が希薄になってきている現実もある。

人との「つながり」とは何か。1人1人に寄り添う優しさが求められているのかもしれない。

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