【獣医師執筆】犬の脾臓腫瘍とは?症状や検査・治療法を徹底解説

2026-01-09 17:20

脾臓の腫瘍はほとんど症状があらわれません。しかし、悪性腫瘍の場合には突然の急変、命に関わることもある病気です。ここでは、脾臓腫瘍の早期発見の方法や治療について解説していきます。

脾臓とはどんな臓器?

聴診器

「脾臓」という臓器を、普段あまり意識することはないのではないでしょうか。脾臓はお腹の左側に長く伸びるような形で存在している臓器です。

血液の貯蔵をおこなっていますので、健常時でも大きさの変化があります。呼吸にも消化にも関係しない臓器ですが、実は大事なはたらきを担っています。

赤血球の処理

古くなった赤血球、異常な赤血球を破壊し、使える成分を再利用しています。

血液の貯蔵

赤血球や血小板を蓄え、運動時や出血時に放出します。全血液量の3割近くを脾臓に貯蔵していることもあります。

免疫機能

「リンパ球」を産生することで、身体を感染から守る免疫機能を担っています。身体の中で、一番の大きさを占める免疫器官です。この他にも、胎仔の間には血液を作る「造血」を担います。

このように脾臓は、血液や免疫にとって重要なはたらきを担う臓器なのです。

脾臓にできる腫瘍

犬と獣医

脾臓には血液が多く存在しています。そのため腫瘍ができた場合には、腫瘍の破裂から大量出血のリスクがあります。

中でも一番多く認められ、注意しなくてはならない悪性腫瘍が「血管肉腫」です。血管肉腫は、血管が存在しているところなら身体のどこにでも発生する可能性がある腫瘍です。

脾臓は多くの血液を蓄えているため、この腫瘍の発生が他の臓器よりも高い傾向にあります。肉眼ではいわゆる「血豆」のように、暗赤色の血液を多く含む腫瘍です。

この腫瘍は脆弱で、破裂することで大量の出血を引き起こす危険があります。その他にも腫瘍ではない「過形成」や、「リンパ腫」なども脾臓で認められることがあります。

こんな症状には要注意!

診察される犬

脾臓の腫瘍の中でも緊急性の高い症状は、血管肉腫による「腹腔内出血」です。

大量の出血は命に関わりますが、脾臓の出血はお腹の中で起こるので、気付きにくいという難点があります。

また、出血が少量であれば止血・血液の再吸収などもお腹の中で見えない間におこなわれてしまうので、継続的な症状としてあらわれないことが多いです。

元気消失や食欲不振

お腹の中の出血が原因で貧血が起きると、元気や食欲が急激に落ちることがあります。ただ、このような症状は他の多くの疾患でも認められます。出血によるショックを起こしているような場合には、突然倒れたり、意識を消失してしまうようなこともあります。

粘膜の色が白くなる

出血による貧血のため、粘膜の色が白っぽくなります。一番はっきりと色を確認できるのは「口の中」でしょうか。健康な舌の色や歯茎の色などを、普段からしっかり見ておくことで、貧血時の色の変化にいち早く気付くことが出来ます。

お腹が膨らむ

大量の出血により、お腹がいつもより膨らんで感じられることがあります。急激なお腹の膨らみと上記のような症状を併せて発症しているようであれば、急いで動物病院にかかった方が良いでしょう。

腹腔内の出血は気づきにくいですが、出血が起きることで腫瘍細胞がお腹の中にばらまかれてしまい、血管肉腫の転移の可能性を大きく上げてしまいます。転移が起きると、お腹の中に新たな血管肉腫を作ることで、出血のリスクも上がり、出血のショックで命に関わる可能性が高くなります。

出血時には元気がなくても、血が止まってしまえば元気が回復することも多いです。そのため、日によって元気に波があるような場合も要注意です。回復したから様子を見るのではなく、気になる症状があれば一度検査を受けてみましょう。

早期発見するには?

検査中の犬

脾臓の腫瘍は出血がなければ他に大きな症状を起こさないため、発見が遅れがちになってしまいます。

早期発見をするには、定期的な検査を受けることをお勧めします。7歳以上のシニアの子では、腫瘍のリスクも高くなるため、半年に1回程度の検査を受けるのが良いでしょう。

血液検査

貧血がまさに起こっている時には、赤血球の減少が認められますが、出血が止まってしまえば赤血球は新しく産生され、異常値を認めないこともあります。急な貧血傾向(ヘマトクリット値や赤血球数の低下)などには気を付けましょう。

レントゲン検査

大まかな脾臓の大きさなどはレントゲンで検査することが出来ます。しかし、脾臓の中の腫瘍までしっかりと写ってくることは少ないです。

超音波検査(エコー検査)

脾臓の腫瘍を一番しっかりと見つけられる検査です。もちろん脾臓に何かしらの「できもの」が出来ているからといって、全てが悪性腫瘍ではなく、過形成の場合もあります。

小さなものであれば、定期的な検査で大きさの変化を追っていく、または針などで細胞をとってきて検査を進めることもあります。ただ、血管肉腫を疑う場合には出血やそれに伴う転移のリスクもありますので、細胞診の手順を踏まずに手術を勧められる場合もあるかと思います。

治療について

チェックリスト

脾臓の腫瘍を認めた場合には、「脾臓の全摘出」をおこなう手術を勧められます。

脾臓は血液や免疫に関して多くのはたらきを担っていますが、他の臓器で代わりのはたらきをしてくれることが多いので、脾臓を摘出することで、普段の生活に大きな影響を与えることは少ないです。

ただ、血液量のコントロールや免疫機能のある程度の低下はありますので、感染症や激しい運動などには気を付けましょう。

脾臓腫瘍からの大量出血を起こしている場合には、緊急的な手術が必要です。

また、出血のショックで亡くなってしまう可能性もあるため、輸血が必要な場合もあります。ただ、犬の血液型は人間よりも複雑で、輸血用の血液を貯蓄していくような仕組みもありません。

輸血ドナーを確保している動物病院は非常に限られていますので、注意しましょう。摘出した脾臓は病理検査をし、腫瘍の分類を明らかにします。病理検査の結果、悪性腫瘍と判断された場合には、術後に抗がん剤治療を行うこともあります。

まとめ

まとめ

健康診断で超音波検査までおこなうことはまだまだ少ないと思いますが、気になる症状が少しでもある場合には、一度詳しく全身を検査することをお勧めします。

小さな症状を見逃さず、定期的に検査をおこなうことで、できるだけ早期発見を目指していきましょう。

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