2026年注目の日本アスリート~冬季五輪、WBC、サッカーW杯など国際大会目白押し~【調査情報デジタル】

今年も日本アスリートの活躍に期待が高まる。それぞれの種目の注目選手と注目ポイントをスポーツライターの佐藤 俊氏が紹介する。
2026年は、ミラノ・コルティナ冬季五輪に始まり、3月にはWBC、6月には北中米ワールドカップが開催され、スポーツへの関心がより一層高まり、熱狂と興奮が国内を席巻する1年になるだろう。そういうなかで、注目すべきチームやアスリートはいったい誰になるのだろうか。
女子フィギュア 17歳の新星に期待
女子フィギュアスケートの女王・坂本花織が今季限りでの引退を表明した今、日本の新星として期待されているのが中井亜美だ。
まだ17歳だが、シニア転向1年目、グランプリシリーズ初出場のパリ大会で初優勝を飾った。12月のグランプリシリーズ上位6名で行われるファイナルでは日本勢最上位の2位になり、新しい時代の女王たる存在感を見せた。
中井の良さは、得意の鋭いトリプルアクセル、リズミカルな表現などの技術に加え、高みを目指す姿勢と強いメンタルだ。
練習後、大会後は5歳の時からつけている練習ノートに思いついたこと、感じたことを書き連ね、同じ失敗を繰り返さず、良かったことは持続できるようにしている。
また、試合で失敗しても『全てのウミを出し切ったから、もう大丈夫』と自分に言い聞かせ、ダメージなく演技を続ける。完璧を目指すというよりはミスした時の対処に重きを置いている実戦派タイプのスケーターだ。
「憧れのスケーターは真央(浅田)ちゃん」と語るように、浅田をリスペクトする。浅田は2014年のソチ五輪でショートプログラムで16位と出遅れて放心状態に陥ったが、気持ちを切り替えるとフリーで最高の演技を見せ、6位入賞を果たした。そうした気持ちの強さも中井の演技からは透けて見える。
全日本選手権は4位ながらもミラノ・コルティナ五輪の女子フィギュア代表に内定した。「五輪ではプレッシャーが掛かると思いますが、それに負けないように自分らしく楽しみたいと思います」と中井は語る。
浅田のように記録にも記憶にも残る選手になれるか。ミラノ・コルティナ五輪、そして今後の活躍が楽しみだ。
アジア大会では女子長距離にも注目
陸上では、女子長距離の山本有真に注目だ。
昨年の世界陸上東京大会の5000mで田中希実のペーサーを自ら買って出て、7周までトップで引っ張った。その甲斐あって田中は5000mの予選を突破し、ゴール後は山本と抱き合って感謝の気持ちを示した。
山本自身は、自己ベストには届かず、悔しい想いをしたが、「世界レベルを痛感した。今の私ではまだ難しいけど、経験を積んで再度、世界の舞台に戻って来て、自己ベストを出す走りをしていきたいです」と今後に向けて意欲を示した。
山本の持ち時は「スピード」だ。名城大学時代は1年から全日本女子大学駅伝と富士山女子駅伝に出場し、4年生まで8レース中、7回区間賞を獲得し、すべて優勝した。大学時代から今も速さを磨き、ラストスパートに強みを持つ。
また、美への意識が高い。ヘアスタイル、メイクに気を配り、陸上女子に大きな影響を与えている。
今年は、アジア大会があり、世界選手権の悔しさを晴らす舞台が待っている。開催地の名古屋は、山本の地元であり、名城大学で4年間を過ごした思い出の地でもある。出場すれば地元の大きな声援を受けて、歓喜のシーンが見られるかもしれない。
ロス五輪見据え飛躍の1年へ
バドミントンでは宮崎友花が大きく飛躍するだろう。
2006年生まれ19歳の宮崎は2024年のバドミントン全日本選手権の女子シングルスで史上5人目の高校生優勝を果たし、初参戦した世界選手権で16強入りするなど、急成長を遂げている。
宮崎の良さは、巧みなリストワーク(手首の動き)で強敵との試合をコントロールするなど、マネジメント能力の高さにある。また、高校時代から筋力強化で体重を7キロ増やすなど、世界に勝つために肉体改造にも取り組んできた。
2025年は、全英オープンで準々決勝で山口茜に敗れ、世界選手権は3回戦で敗退。国内ではジャパンオープンは2回戦で敗れ、熊本マスターズで1回戦負けを喫するなど、足踏みが続いた。女子シングルスでは山口茜、奥原希望がトップランナーだが、数年後には追い抜くだろうと、国内外の評価が高い。
宮崎は、2028年のロサンゼルス五輪出場を見据えている。「自分が目標にしている大会ですし、そこで金メダルを取ることが夢です。先輩方があの舞台で戦っているって思うと、自分自身も勇気をもらいますし、4年に1度の大会で、すごい価値のある大会なので、金メダルを取りたいなって思います」と語る。そのステップとなる1年になるか、宮崎にとっては非常に重要な2026年シーズンになる。
21歳の新大関 綱取りに挑戦へ
安青錦新大には綱取りの期待がかかる。
安青錦はウクライナ出身の21歳で、2023年9月場所で初土俵を踏んだ。その後、2025年3月場所に新入幕を果たすと11月場所では関脇として初優勝。直近3場所で通算33勝以上(11勝、11勝、12勝で計34勝)に到達し、大関昇進を決めた。
初土俵から14場所での大関昇進は、年6場所制となった1958年以降では琴欧州の19場所を更新して、史上最速での昇進になった。大関昇進を伝える使者には「大関の名に恥じぬよう、またさらに上を目指して精進いたします」と述べ、シンプルな口上には安青錦の実直な人柄が感じられる。
安青錦の強さのベースは、ウクライナでのレスリング経験に裏打ちされた体幹の強さと粘り強い足腰だ。さらに日本で突っ張りを覚えたことで突き押しにさらに磨きがかかった。
「常に自分の相撲を取ることを意識しています」と語るように、いかに自分の力を発揮できるか、考えて相撲を取るタイプ。戦火を逃れて海を渡り、安治川部屋に入って約3年。常々、「横綱になりたい」と口にしており、そのために140キロの体をさらに大きくしていく予定だ。
今年は、横綱への大事なファーストステップになる。1月場所から賢く、強い、圧倒的な相撲を見せてくれるはずだ。
4度目の正直で五輪初出場 金メダルへ
2026年、チームとして活躍が楽しみなのが、初めて冬季五輪に出場する女子カーリングのフォルティウスだ。ミラノ・コルティナ冬季五輪の最終予選に臨み、2枚のチケットのうち1枚を獲得し、五輪初出場を決めた。
ここまでは苦難の連続だった。2022年の北京五輪の代表を逃すとスポンサーの北海道銀行の契約が終了し、クラブチームとして再出発した。資金難に苦しみ、遠征費用を捻出できず、クラウドファンディングで活動資金を捻出、その間もスポンサー探しに奔走し、今では20社以上の企業がサポートをしてくれるようになった。
主力でスキッパーの吉村紗也香は、「4度目の正直で、ようやく五輪の舞台に立てる。金メダルを獲りたいと思っています」と、期待を膨らませている。前回大会の北京五輪ではロコソラーレが銀メダルを獲得した。フォルティウスは、その一歩先に歩を進められるか、非常に楽しみだ。
大会連覇を狙う侍ジャパン
今年は、野球熱が再燃しそうだ。
プロ野球は3月27日に開幕するが、その前にはWBC(ワールドベースボールクラシック)が開催される。大会は3月5日にスタートし、17日に決勝が行われる。井端弘和監督が率いる侍ジャパンは大会連覇を狙うことになる。
このチームで攻撃の軸になり、注目したいのが森下翔太(阪神)だ。2025年セリーグの覇者となった阪神タイガースにおいて主に3番を任され、打率.275を残し、本塁打23本と打点89はリーグ2位の成績だった。勝負強さと長打力が魅力で、守備はライトが主だが、WBCでは外野にメジャーリーグで活躍する鈴木誠也(カブス)、強打者の近藤健介(ソフトバンク)らがいるので、センターでの守備も任されることになるだろう。
森下の出来が阪神の優勝に大きく寄与したようにWBCでも彼のバットが優勝のキーになるであろうし、阪神のリーグ優勝連覇にも昨年以上の打撃で貢献してくれるはずだ。
投手では、髙橋宏斗(中日)が楽しみだ。前回大会でも侍ジャパン入りし、1次リーグの韓国戦に登板し、1イニングを完璧に抑えた。一昨年のWBSCプレミア12のアメリカ戦では4回2安打無失点、8三振を奪う好投を見せた。
持ち味は、150キロ後半のストレートと鋭く落ちるスプリット、さらに110km/h台前後のカーブ、スライダー、カットボールもあり、髙橋が尊敬する山本由伸投手のように多彩な球種を持つ。アメリカの舞台で活躍して優勝に貢献し、将来メジャーへの足がかりを作れるか。
侍ジャパンのWBC連覇は、メジャーリーグの日本人選手をどれだけ招集できるかに因るだろう。前回大会で精神的な支柱だったダルビッシュ有投手が右ひじの手術のために出場が絶望になったが、幸いなことにワールドシリーズ2連覇を達成した大谷翔平(ドジャース)が参加を表明。他にも鈴木誠也(カブス)、今永昇太(カブス)、菊池雄星(エンゼルス)ら日本人メジャーリーガーが参加に意欲を示している。
彼らが合流すれば戦力的にアップし、ライバルであるアメリカとの勝負も互角以上に持ち込め、優勝の可能性が一段と高くなる。果たして、マイアミの地で井端監督の胴上げが実現するか。
「まだ見ぬ景色」へ 森保ジャパンの注目選手
WBCと並んで期待されるのが6月に始まるサッカーW杯での日本代表の活躍だ。
森保一監督が前回のカタールW杯を含む8年間の総決算となる戦いに臨むわけだが、チームは海外組が主の分厚い選手層から“史上最強”と呼ばれている。その選手層の中で、注目したいのが佐野海舟(マインツ)だ。
ボランチの選手だが、彼の良さは遠藤航の守備力の高さと鎌田大地の攻撃力を兼ね備えていることだ。危険察知能力が高く、危ないスペースを潰し、対人能力も高いのでボール奪取のレベルも非常に高い。
また、攻撃では縦につけるパスセンス、ゴール前に入っていくタイミングも良く、まさに高次元の万能型ボランチだ。佐野自身も「守るだけではなく、攻撃に積極的に顔を出していけるのが自分の持ち味」と語る。W杯予選の時は、守田英正と遠藤の2枚看板だったが、本戦では佐野がレギュラーになり、自らの評価を高めていくだろう。
攻撃面では、上田綺世(フェイエノールト)に注目だ。日本代表は大迫勇也以来、ひさしくストライカーが定着しなかったが、2025‐2026シーズンに入っての上田の活躍はめざましい。ポストプレーで受けるだけではなく、ゴール内に入るタイミングとポジショニングが良くなり、シュートが増えた。体の強さも増し、2025年10月、パラグアイ戦で同点ゴール、ブラジル戦でも逆転ゴールを決めるなど勝負強さも宿って来た。
「チームでの活躍が自信になっている。エースとしての自覚を持って、自分が点を取るんだという意識が一段と強くなった」と語る。日本のエースとして、北中米W杯で結果を出し、オランダからイングランド、スペインなどのビッグクラブへのステップにしてほしい。
チームは、「W杯優勝」が目標だが、これまで壁だったベスト8の壁を破れるだけのメンバーが揃っている。とりわけ攻撃陣は、上田を始め、久保建英、三笘薫、堂安律、南野拓実、伊東純也、鎌田大地と非常に充実している。
個がきらめく攻撃陣と比較して危惧されているのが守備陣だ。
守備の主軸の冨安健洋が度重なる膝・ふくらはぎ故障で長期離脱し、ようやく復帰。伊藤洋輝(バイエルン)もプレシーズンで右足中足骨骨折したが、12月に戻って来た。町田浩樹はブンデスリーガ開幕直後に、左ひざ前十字靭帯断裂の重傷を負い、復帰が未定だ。板倉滉が軸になり、鈴木淳之介が成長しているが、W杯を勝ち抜くためには強固な守備が不可欠。
大会中、累積警告で出場停止になる場合もあるので、冨安らの完全復帰がなければ日本は守備に苦しむかもしれない。逆に守備のメンバーが整えば、その総力からして「まだ見ぬ景色」をW杯で見ることができる可能性は非常に高い。
<執筆者略歴>
佐藤 俊(さとう・しゅん)
北海道出身、青山学院大学経営学部を卒業後出版社を経て、93年よりフリーのスポーツライターとして独立。サッカーを中心にW杯は98年フランス大会から22年カタール大会まで7大会連続で取材継続中。他に箱根駅伝を始め陸上、野球、卓球等さまざまなスポーツをメインに執筆。現在、Sportiva(集英社)、Numberweb、文春オンライン(ともに文藝春秋)などに寄稿している。
著者に「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根5区」「箱根2区」(徳間書店)など多数。
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