80年続くハンガーづくりの現場へ 中田工芸が工場をひらく理由とファクトリーツアー2026
服を選ぶ時間は、少しだけ気持ちが前向きになる瞬間です。
お気に入りの一着を手に取るとき、その服を静かに支えている存在に、普段どれだけ目を向けているでしょうか。
兵庫県豊岡市にある中田工芸株式会社は、1946年の創業以来、長年にわたり木製ハンガーをつくり続けてきました。
一本の木材が削られ、磨かれ、職人の手を経て、ようやく一着の服を支えるかたちになる。その当たり前の裏側には、積み重ねられてきた時間と、ものづくりへの揺るぎない姿勢があります。
そんな中田工芸が、ものづくりの現場を一般にひらく取り組みとして開催するのが「ファクトリーツアー2026」です。
これは単なる工場見学ではなく、ハンガーづくりを通して、服を大切にする文化や、職人の手仕事に込められた想いに触れる一日でもあります。
なぜ今、工場を公開するのか。
なぜハンガーという存在に、ここまで向き合い続けてきたのか。
このイベントをきっかけに、中田工芸という老舗メーカーの背景と、その歩みを紐解いていきます。
なぜ中田工芸は「工場をひらく」ことを選んだのか
ものづくりの現場は、本来とても静かな場所です。
木を削る音、職人の手の動き、長い時間をかけて培われてきた感覚。
そこには、効率やスピードだけでは語れない価値があります。
中田工芸が一般向けに工場を公開し、「ファクトリーツアー2026」という形で人を迎え入れるのは、単に製造工程を見せたいからではありません。
その背景には、木製ハンガーを通して、服や暮らしを見つめ直すきっかけを届けたいという想いがあります。
同社が毎年2月に設けている「THE HANGER DAYS」は、その考え方を象徴する取り組みです。
2月7日は「国産ブナ材の日」、2月8日は「木製ハンガーの日」、2月9日は「服の日」。
いずれも、日常では意識されにくい存在に、あらためて光を当てるために定められた記念日です。
服そのものだけでなく、
服を支えるハンガー、
その素材となる木、
そして、それを生み出す人の手。
中田工芸は、こうした一つひとつを切り離さず、暮らしやライフスタイルとして捉えてきました。
だからこそ今回のファクトリーツアーも、「たくさんの人を集めるイベント」ではなく、あえて少人数制で、対話や体験を大切にするかたちが選ばれています。
普段は表に出ることのない工場という場所をひらくことは、ものづくりの現場にとって、決して簡単な決断ではありません。
それでもなお中田工芸がこの取り組みを続けるのは、長く使われるものには、きちんとした背景があることを知ってほしいという思いがあるからです。 ハンガーは脇役のような存在かもしれません。
しかし、毎日の暮らしの中で、確かに服を支え続けています。
その当たり前を、当たり前のまま終わらせない。
中田工芸が工場をひらく理由は、そこにある姿勢そのものにあります。
創業1946年、ハンガー一筋で続いてきたものづくり

中田工芸株式会社が創業したのは1946年。
戦後間もない時代から、木製ハンガーという一つの分野に向き合い続けてきました。
ハンガーは、日常の中であまり意識される存在ではありません。
服を掛けるための道具として、当たり前のようにそこにあるものです。
しかし中田工芸は、その「当たり前」に長い時間をかけて向き合ってきました。
木材の選定から始まり、成型、研磨、塗装、仕上げまで。
工程の一つひとつに人の手が入り、職人の感覚が生かされています。
効率だけを追い求めるのではなく、服を傷めず、美しく支えること。
その積み重ねが、今日のNAKATA HANGERというブランドを形づくってきました。
同社が掲げる
「服をかける、幸福もかける」
という言葉には、ハンガーを単なる道具としてではなく、暮らしの質を支える存在として捉える姿勢が込められています。
こうした考え方は、日本国内にとどまりません。
中田工芸は、ロンドンやニューヨーク、香港など海外でも積極的に展開し、2024年にはイギリス王室へのハンガー献上や、The New York Timesで紹介されるなど、国際的な評価も得てきました。
それでも、ものづくりの中心にあるのは、兵庫県豊岡市の工場と、そこに立つ職人たちです。
大量生産ではなく、一本一本に手をかける。
その姿勢は、創業当時から変わることなく受け継がれています。
ファクトリーツアーという取り組みは、この長い歴史や価値観を、言葉だけでなく体験として伝えるためのものです。
中田工芸が長年続けてきたものづくりの背景には、時代が変わっても揺るがない軸があることが見えてきます。
ファクトリーツアー2026は、積み重ねてきた思想の延長線にある

ファクトリーツアー2026は、単発のイベントとして企画されたものではありません。
中田工芸が長年大切にしてきたものづくりの姿勢や、ハンガーという存在に向き合ってきた時間の、これまで積み重ねてきた考え方を形にした取り組みです。
当日、参加者がまず足を踏み入れるのは、普段は公開されていない木製ハンガーの製造工場です。
そこでは、原材料となる木材がどのように加工され、一本のハンガーへと姿を変えていくのか、その工程を間近で見学することができます。

現場に立つのは、「マイスター」と呼ばれる熟練の職人たち。
機械では代替できない感覚や判断が求められる工程を、長年の経験に裏打ちされた手仕事で支えています。
作業の一つひとつに意味があり、その積み重ねが最終的な使い心地や美しさにつながっていることが伝わってきます。

ツアーの中盤では、短編映画『The SHOKUNIN』が上映されます。
この作品は、成型加工を担う実際の職人の日常を描いたもので、ハンガーづくりそのものだけでなく、
兵庫県豊岡市の風景や、そこで営まれている暮らしにも目を向けた内容となっています。
ものづくりは、工場の中だけで完結するものではありません。
地域の環境や人の暮らしと結びついて初めて、その背景や価値が浮かび上がってきます。
映画という表現を通して、それを伝えようとする点も、このツアーならではの特徴です。

そしてツアーの最後には、ハンガーの仕上げ体験が用意されています。
参加者自身が金具(フック)を取り付け、一本のハンガーを完成させる工程に関わります。
完成したハンガーには、この日限定のロゴが刻印され、特別な一本として持ち帰ることができます。
見る、知る、そして手を動かす。
ファクトリーツアー2026は、中田工芸が長年積み重ねてきたものづくりを、体験として共有するための場だと言えるでしょう。
ファクトリーツアー2026 開催概要と申込方法
ファクトリーツアー2026は、誰でも参加できる大規模なイベントではありません。
あえて定員を設け、少人数で行われる点も、この取り組みの特徴です。
開催日は、2026年2月14日(土)。
会場は、兵庫県豊岡市にある中田工芸株式会社の本社工場で行われます。
JR江原駅から徒歩1分という立地で、但馬空港からも車で15分ほどの場所です。
ツアーは14時からスタートし、終了は16時30分頃を予定しています。
参加費は無料ですが、定員は15名までと限られており、応募者多数の場合は抽選となります。
少人数制だからこそ、職人やスタッフに直接質問ができたり、工場の空気感を落ち着いて味わえる時間が用意されています。
ものづくりの背景をじっくりと知りたい人にとっては、貴重な機会と言えるでしょう。
当日は、木粉が付く可能性もあるため、暖かく、多少汚れても問題のない服装での参加が案内されています。
また、同業者の参加については、状況によりお断りする場合があるとされています。
イベントの内容や背景を理解したうえで参加することで、当日の体験はより深いものになるはずです。
参加を希望する場合は、ファクトリーツアー2026特設ページ内の申込フォームから事前申し込みが必要です。
特設ページ:https://www.nakatahanger.com/features/the-hanger-days/factorytour/
ものづくりは、これからも続いていく
ファクトリーツアー2026は、中田工芸が80年近く積み重ねてきたものづくりの時間を、一日というかたちで切り取った取り組みです。
工場を見学し、職人の仕事に触れ、一本のハンガーが完成するまでを体験する。
その一つひとつは特別な出来事に見えるかもしれませんが、中田工芸にとっては、日々続いてきた営みの延長にあります。
ハンガーは、決して主役になる道具ではありません。
けれど、服を大切に扱い、長く使うためには欠かせない存在です。
その当たり前を支え続けてきた背景には、素材への向き合い方や、手仕事への誠実さがあります。
ファクトリーツアーという場を通して、中田工芸が伝えようとしているのは、「ものが生まれる場所には、理由がある」ということなのかもしれません。
効率や価格だけでは測れない価値が、静かに積み重ねられてきた時間の中にあること。
そのことに気づくきっかけとして、この取り組みは開かれています。
イベントは一日で終わります。
しかし、ものづくりはその先も続いていきます。
中田工芸がこれからもハンガーをつくり続ける限り、その背景にある思想や姿勢も、また次の形へと受け継がれていくことでしょう。
中田工芸株式会社 概要

中田工芸株式会社は、1946年に創業した木製ハンガー専門メーカーです。
兵庫県豊岡市に本社を構え、創業以来一貫してハンガーづくりに向き合ってきました。
職人の手仕事によって一本一本生み出されるハンガーには、服を支えるだけでなく、暮らしそのものを大切にしたいという想いが込められています。
現在は「世界一のハンガーブランドになる」というビジョンのもと、国内にとどまらず、海外でも積極的に活動を広げています。
長い歴史の中で培われてきた技術と価値観を、これからの時代にどう伝えていくのか。
その姿勢は、今回のファクトリーツアーにも表れています。