ランドセルが思い出と共に次の子どもたちへ「笑顔でつなぐランドセルプロジェクト」が生まれた場所

2026-01-30 08:00

小学校を卒業すると、多くの家庭で役目を終えるランドセルがあります。
毎日背負って通った6年間は、長いようであっという間で、思い出が詰まっているからこそ、簡単には手放せない存在でもあります。

そんなランドセルが、もう一度、誰かの背中で新しい時間を刻んでいるとしたら。
そう想像すると、その先にどんな物語が生まれているのか、少し気になってきます。
新潟県十日町市のリゾートホテル、あてま高原リゾート ベルナティオでは、そんな想いを形にする取り組みとして国際協力NGOジョイセフが主催するランドセル寄付活動に賛同し、「笑顔でつなぐランドセルプロジェクト」を続けています。

日本で役目を終えたランドセルを、貧しくて学校に通うことが難しいアフガニスタンの子どもたちへ届けるこの活動にベルナティオは2019年から参加し、今年で8年目を迎えます。
一度きりの支援ではなく、静かに、そして着実に続いてきた点が、この取り組みの大きな特徴です。

ランドセルが届くまでの長い旅路、その先で生まれる小さな変化、そして、なぜこのホテルが活動を続けているのか。
モノを贈るだけでは終わらない、このプロジェクトの背景に目を向けてみたいと思います。

なぜベルナティオはランドセルを寄付し続けているのか

「ホテルがランドセルを海外に寄付する」。
一見すると、少し意外な組み合わせに感じるかもしれません。
しかし、この取り組みが8年という時間をかけて続いてきた背景には、単なる支援活動以上の理由があります。

あてま高原リゾート ベルナティオがこの活動を始めたのは2019年です。
きっかけは、使い終えたランドセルが家庭の中で役目を終えていく一方で、世界には学校に通いたくても環境が整わない子どもたちが多くいるという現実でした。
「まだ使えるものを、次の学びにつなげられないか」。
その問いから、このプロジェクトは静かに始まっています。

特徴的なのは、単発の取り組みで終わらせなかった点です。
毎年続けることで、ランドセルを預ける側にも、受け取る側にも、少しずつ変化が生まれてきました。
現地NGOのスタッフが撮影した写真やメッセージが、ジョイセフを通じて共有されるようになり、取り組みの実感が積み重なっていったといいます。

また近年では、ご宿泊されるお客さま以外に、地元や県外の学校からも、ランドセルを寄付したいという声が寄せられるようになりました。
誰かの善意が、次の誰かの行動を生み、少しずつ輪が広がっていく。
8年という年月は、その積み重ねの結果でもあります。

ベルナティオが大切にしているのは、「支援をすること」そのものではなく、「続けること」です。
続けるからこそ、相手の状況を知り、改善点に気づき、より良い形へと少しずつ近づいていくことができます。
ランドセルを通じたこの活動には、そんな姿勢が一貫して感じられます。

ランドセルの旅 ホテルから子どもたちの手へ

写真提供:国際協力NGOジョイセフ

このプロジェクトでは、ランドセルが預けられた瞬間がゴールではありません。
むしろ、そこからが長い旅の始まりです。

使い終えたランドセルは、宿泊の際にあてま高原リゾート ベルナティオへ直接持ち込まれます。
郵送ではなく、顔の見える形で預かるという点にも、この活動の丁寧さが表れています。

集まったランドセルは、すぐに海外へ送られるわけではありません。
まずは状態の確認や検品が行われ、その後、国際協力NGOジョイセフを通じて海外輸送の準備が進められます。
ランドセル一つひとつに、次に使う子どもたちのことを思い浮かべながら手が加えられていきます。

写真提供:国際協力NGOジョイセフ

日本を出発したランドセルは、横浜港から船に乗り、海を越えます。
船を降りたあとは、さらに陸路での移動が続きます。
舗装されていない道や、車が入れない場所では、人の手によって運ばれることもあります。
こうして、日本を出てから子どもたちのもとへ届くまでには、およそ2か月ほどの時間がかかります。

写真提供:国際協力NGOジョイセフ

現地に到着したランドセルは、学校で先生から使い方の説明を受けたうえで、一人ひとりに配付されます。
その様子は、現地NGOのスタッフによって写真に収められ、ジョイセフを通じて共有されています。
遠く離れた場所で、ランドセルが新しい持ち主の手に渡る瞬間が、こうした形で伝えられているのです。

長い距離と時間をかけて届けられるからこそ、このランドセルには、日本で過ごした6年間とはまた違う、新しい役割が生まれています。
単なる物資ではなく、「学びへ向かう合図」として、次の場所で静かに使われ続けていきます。

ランドセルが届いた先で起きていること

写真提供:国際協力NGOジョイセフ

ランドセルが子どもたちの手に渡ったあと、最初に変わるのは日常の風景です。
これまで教科書を手に持ったり、袋に入れて通っていた子どもたちが、ランドセルを背負って歩くようになります。
それだけの変化ですが、地域にとっては大きな意味を持ちます。

多くの地域では、学校という場所や「勉強をする」という行為そのものが、目に見えにくい状況にあります。
ランドセルを背負った子どもが村の中を歩くことで、周囲の大人たちは「学校へ行っている」という事実を自然と認識します。
その積み重ねが、教育への意識を少しずつ地域全体へ広げていくきっかけになります。

写真提供:国際協力NGOジョイセフ

また、ランドセルは子どもだけのものではありません。
配付の際には、先生や地域の代表者から使い方の説明が行われ、ランドセルの中には、保健や衛生に関する簡単な情報が掲載されたカレンダーや文具が入れられます。
それらは、家庭に持ち帰られ、お母さんたちの手にも届きます。

外出や情報収集の機会が限られている地域では、こうした小さな情報が、家族の健康を考えるきっかけになることもあります。
ランドセルを通じて、学びだけでなく、暮らしそのものに目を向ける流れが生まれているのです。

現地では、ランドセルを受け取った子どもたちが、将来の夢を語る場面も見られます。
「将来は助産師になりたい」といった言葉が紹介されているように、ランドセルは学用品であると同時に、未来を思い描くための存在にもなっています。

一つのランドセルが届くことで生まれる変化は、決して派手なものではありません。
けれど、その積み重ねが、学びや健康、そして地域の意識へと静かにつながっていきます。

「笑顔でつなぐランドセルプロジェクト」という名前に込めた想い

写真提供:国際協力NGOジョイセフ

この取り組みには、「笑顔でつなぐランドセルプロジェクト」という名前が付けられています。
ランドセルを贈る活動は数多くありますが、ここで大切にされているのは、モノを渡すことそのものではなく、「想いをつなぐ」という考え方です。

日本で役目を終えたランドセルには、通学路の記憶や、友だちとの時間、家族に見送られた朝の風景など、持ち主それぞれの思い出が詰まっています。
そのランドセルが、次の子どもの背中で新しい時間を刻み始める。
その連なりを、笑顔でつなげていきたいという想いが、この名前には込められています。

写真提供:国際協力NGOジョイセフ

プロジェクトでは、ランドセルと一緒に、オリジナルの鉛筆も届けられています。
この鉛筆は、日本国内の間伐材を使って作られたもので、「A wish comes true(願いは叶う)」という言葉が刻まれています。
日本でランドセルを預けた人と、遠く離れた場所でそれを受け取る子どもたちが、同じ言葉を手にする。
そこには、国や文化を越えて想いを共有するための、ささやかな仕掛けがあります。

写真提供:国際協力NGOジョイセフ

さらに近年では、折り鶴を一緒に届ける取り組みも行われています。
宿泊者が折った鶴をランドセルに入れ、日本の文化や願いを添えて送り出すというものです。
長寿や幸福を願う折り鶴は、言葉が通じなくても気持ちが伝わる存在として、ランドセルの中にそっと加えられています。

ランドセル、鉛筆、折り鶴。
どれも特別なものではありませんが、組み合わさることで、ただの支援物資ではない意味を持ち始めます。
「誰かが自分のことを思ってくれている」。
その感覚こそが、このプロジェクトが届けている本当の価値なのかもしれません。

ランドセルがつないでいく、これからの時間

写真提供:国際協力NGOジョイセフ

ランドセルは、本来、6年間という限られた時間を共に過ごす存在です。
けれど、このプロジェクトでは、その時間が終わったあとも、役割を変えながら、次の場所で使われ続けています。

誰かの学びを支えたランドセルが、次の学びへと受け継がれていく。
そこには、大きな仕組みや特別な演出はありません。
ただ、「続けること」を選び続けてきた人たちの姿勢があります。

あてま高原リゾート ベルナティオが行っている「笑顔でつなぐランドセルプロジェクト」は、支援の成果を声高に伝えるものではなく、目の前にある現実と丁寧に向き合いながら、少しずつ輪を広げてきた取り組みです。

ランドセル一つひとつに込められた思い出と、それを次の未来へと手渡そうとする気持ち。
その両方を大切にしてきたからこそ、この活動は8年という時間を重ねてきました。

誰かの「使い終えたもの」が、別の誰かの「始まり」になる。
そんな循環が、これからも静かに続いていくことを願わずにはいられません。


あてま高原リゾート ベルナティオ 概要

あてま高原リゾート ベルナティオは、新潟県十日町市の自然豊かな高原に位置するリゾートホテルです。
「人を活かし、お客さまに感動をお届けし、地域とともに発展する」という理念のもと、宿泊や食、体験を通じて、地域と深く関わる取り組みを続けてきました。

館内での滞在だけでなく、地域や社会とのつながりを大切にする姿勢は、今回紹介したランドセルプロジェクトにも表れています。
訪れる人にとって、心に残る時間を提供すると同時に、その先にある社会とも向き合うリゾートとして歩み続けています。

公式サイト:https://www.belnatio.com

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