【全日本実業団ハーフマラソン展望】不破聖衣来と山﨑りさが初ハーフ レジェンド・ランナーたちの背中を追ってマラソンへ

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2026-02-07 12:00
【全日本実業団ハーフマラソン展望】不破聖衣来と山﨑りさが初ハーフ  レジェンド・ランナーたちの背中を追ってマラソンへ

第54回全日本実業団ハーフマラソンが2月8日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで、2026海外ハーフマラソン派遣選考競技会を兼ねて行われる。初めてハーフマラソンを走る新人2選手に注目したい。不破聖衣来(22、三井住友海上)は拓大時代に10000mで30分45秒21と、ハイレベルの学生記録を出し、クイーンズ駅伝優勝7回の名門三井住友海上に入社。山﨑りさ(23、積水化学)は日体大時代にインカレで活躍し、クイーンズ駅伝優勝2回の積水化学に次期エース候補として加入した。2人とも目標とするマラソンでの代表入りに向け、ハーフマラソンで一歩を踏み出す。

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不破は1月の合宿で1日60km走った日も

ロードの長い距離への適性が高いと期待されている不破が、いよいよハーフマラソンに初参戦する。不破本人も「私の強みは一定ペースでしっかり押して行けるところ。それを10km以上の距離でどこまで行けるか、知りたいと思っています。未知な部分もあって、その分ワクワクしています」と、胸を高鳴らせている。

1時間10分前後の優勝記録が多いが、気象条件に恵まれたり好ペースになったりすれば、1時間8分台も出ている大会だ。不破はペースを「(1km)3分20秒を余裕を持って走れれば」と考えている。3分20秒で走り通せば1時間10分20秒のフィニッシュタイムになる。3kmから5kmまでがゆるやかな上りで、ハイペースになりにくいコースだが、不破は「上りも下りも得意、不得意は感じていません。でも、なだらかなダラダラ上りは意外と強いかもしれません」と言う。余力を残し、5km以降で「押して行く走り」に入って行けそうだ。

駅伝ファンは全国都道府県対抗女子駅伝の不破を見て、心配していることと思う。1区(6km)で最初から先頭集団に付けなかった。「年末年始に股関節の痛みが出て、練習を積めない時期がありました。群馬県チームの事情で出場することになりましたが、一番後ろから徐々に上がって行く走り方しかできませんでした」(鈴木監督)

その走り方でも区間23位まで浮上し、区間賞選手とは41秒差で2区にタスキをつないだ。最低限の役割は果たし、群馬県チームは6位に入賞した。不破も「年明け以降は少しずつ練習を積めていますし、万全とは言えませんが、1月後半の合宿は走り込みがある程度できました」と練習に多少の手応えを感じている。多い日には60kmを、3回に分けて走った日もあったという。3分20秒を基準に走るため、いきなり1時間8分台で走る可能性は少ないかもしれない。だが自身が先頭を走る可能性があることは、条件付きではあるが認めている。

「牽制し合うよりも“自分のしたいレースをする”ことをいつも思っているので、“自分の走りたいペース”よりも遅いと感じたら、自分でレースを作る可能性もなくはありません」

走り始めてから“自分の走りたいペース”が3分20秒よりも速くなった場合、1時間8分台でフィニッシュする可能性も出てくる。

トラックとマラソンの両立を目指す山﨑

山﨑はクイーンズ駅伝で、後半の長距離区間である5区(10km)に起用された。学生時代はインカレの1500m、5000m、10000mで優勝や日本人トップを占め、23年のユニバーシティゲームズ(学生の世界大会)では5000m銅メダルを獲得。駅伝ではトラックのスピードを生かせる前半区間出場も予想されていた。積水化学の選手層が厚かったからではあるが、今後ロードでの活躍が期待されることも考慮しての5区起用だったようだ。

トラック型の選手と思われているが、実はマラソン志向の強い選手。そもそも走り始めたきっかけが、シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんの書籍を読んだことだったという。

「小学校で初めて読書感想文を書いたのが、高橋尚子さんの書籍でした。当時は水泳のクラブに入っていましたが、6年生の持久走大会で優勝して、長距離って楽しいと感じて中学から陸上競技部に入りました」

そしていよいよロードにも、本格的に進出する。「将来マラソンをするために、現状を知りたいと思っています。初ハーフなので失敗しても、課題ややるべき練習が見えたらいい。不安よりも楽しみの方が大きいです」。ここまでの練習と、レース展望については以下のように話している。

「12月から距離走にも取り組んで、年末に故障で中断した期間もありましたが、最近はしっかり戻して来られています。5kmまでは上りでタイムがかかってしまっても、そこからは(1km)3分20秒切りで行きたいと思っています。過去の成績を見ても後半上げて、押し切っている選手が上位に入っています。15、16km以降が勝負になってくると思うので、15kmまで余裕を持って走りたいです。1時間10分を切れるようにしたいですね」

マラソン志向だが、「ロサンゼルス五輪まではトラックと両立させたい」と山﨑は言う。目指しているのは、トラックのスピードをロードでも生かすことだ。実業団ハーフでは「トラック仕様の走りが体に染みついてしまっている部分があります。そこを上手くロードに落とし込めるようにしたいと思っています」という。山﨑のトラックとロードを両立させる挑戦が始まる。

マラソン選手のハーフマラソン自己記録は?

不破は入社時にマラソン挑戦を強くアピールしていたが、その時に憧れの選手として名前を挙げたのが、レジェンド・ランナーの1人である渋井陽子だった。三井住友海上の先輩で、現在は三井住友海上のコーチ。10000mの前日本記録保持者で、マラソンでは01年エドモントン世界陸上4位、04年には高橋尚子が持っていた日本記録を5秒更新する2時間19分41秒(当時世界歴代4位)をマークした。

山﨑は積水化学の大先輩でもある高橋尚子が、長距離を始めるきっかけだった。ロードとトラックを両立させることに関しては、23年と25年の世界陸上にマラソンで連続出場した佐藤早也伽(31、積水化学)を、「どちらも行けることを、身近で証明してくれている」と言う。

渋井のハーフマラソンの自己記録は1時間09分31秒で、高橋は1時間08分55秒、佐藤は1時間09分03秒。3人ともマラソンで日本トップレベルに成長してから出した記録だが、ハーフマラソンにはステップとして出場するケースが多く、その選手の実力が現れているとは限らない。マラソンの中間点通過の方が速い選手もいるくらいだ。ちなみに初ハーフマラソンの記録は、世界陸連サイトのデータでは、渋井は1時間11分14秒、高橋は1時間10分35秒、佐藤は1時間13分50秒である。

初マラソンの記録に一喜一憂する必要はないが、その一方で、レジェンド・ランナーたちの記録を一気に抜いてもおかしくない。ハーフマラソンの結果をどう受け止め、自身の成長にどう生かすかが重要になる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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