選挙中に溢れる“フェイク”対策は?世界各国で摸索… ファクトチェックは「民主主義を守るもの」“偽発言” 見破るドイツの公共放送【news23】

目前に迫った衆議院選挙ですが、AIなどを使った偽の画像や動画がSNS上で拡散され、問題となっています。選挙の際に出回る“フェイク情報”にどう対処すればいいのか、世界各国でも模索が続いています。
「リアルだし…感化されそう」選挙中もネットに溢れる“フェイク”
真冬の選挙戦もいよいよ最終盤。異例の短期決戦でしたが、それでもネット上に溢れかえっているのが、フェイクニュースやフェイク画像です。
街の人にフェイク動画やフェイク画像を見てもらいました。
30代女性
「喧嘩してる…。信じてしまう人がいるなら怖い」
20代男性
「自分は信じてしまうかもしれない。実際にいそうだなと思って」
中道改革連合はSNSで、「悪意ある改変や虚偽の示唆については、法的措置も検討する」としました。
20代男性
「リアルだし、手の動きとかも熱弁している感じなので、それに感化されそうだなと」
20代男性
「携帯はずっと見てるものなので、そこで流れてくる情報は真実でも真実じゃなくても、少なからず自分の考えに影響してしまう」
50代女性
「見分けるコツですか?勘ですかね…」
「フェイク」との戦いでもある今の選挙。海外ではどのように対応しているのでしょうか。
URLを入れるだけ 精度90%の「フェイク検知ツール」
トランプ氏が民主党のハリス氏を破って勝利した、2024年のアメリカ大統領選挙。
選挙期間中、トランプ氏はSNSで人気歌手のテイラー・スウィフトさんが自身への投票を呼びかける画像を引用し、テイラーさん本人がフェイクと否定する事態になりました。
この時、アメリカで公開されたのが、ディープフェイクを見破る「無料の検知ツール」。URLを入れるだけで、フェイクかどうかを90%の精度で判別できるといいます。
例えば、女性が「カマラ・ハリスという権力者に車ではねられました」と話す動画。検知ツールはこれを“明らかに情報操作された動画”であると見分けました。
検知ツール開発担当 オレン・エツィオーニ氏
「今は唇の動きに違和感があるかもしれないが、すぐに解消され、人間の目では見分けられなくなる」
韓国では選挙管理委員会が監視 大学やAI企業とも連携
2025年に大統領選挙が行われた韓国。この選挙戦でフェイク動画の取り締まりに動いたのが、選挙管理委員会です。
記者
「韓国の中央選挙管理委員会です。こちらの部屋では、ディープフェイク動画に対する監視が行われています」
対策チームを新設し、職員450人態勢で対応にあたりました。
韓国中央選挙管理委員会 サイバー調査課 キム・ソンウン 主務官
「顔のデータベースをもとに、ニセ動画か判断します」
大学やAIの開発企業とも連携して、判断が難しい場合に解析を依頼。
こうして中央選挙管理委員会が選挙期間中に見つけたフェイク動画や画像は、1万510件にも上ったということです。
政治家の“偽発言”を見破るドイツ公共放送
ドイツでは、政治家の発言にも目を光らせています。
記者
「SNS上でデマやフェイクニュースなどが拡散されていないか、確認作業が行われています」
公共放送局の「ARD」。「ファクトファインダー」と呼ばれる専門チームで、SNS上のフェイクニュースや政治家の発言などが事実か確認する「ファクトチェック」を行い、日々、市民に発信しています。
そんな「ファクトファインダー」が、特に厳しい目を向けているのが選挙です。
「移民排斥」などを掲げる極右政党が躍進した2025年2月の総選挙。選挙直前に行われた極右政党「AfD」の共同代表とアメリカの実業家イーロン・マスク氏との対談で、「ファクトファインダー」は次々と間違いを指摘。
極右政党「AfD」 ワイデル共同代表
「ほかの既成政党は、どれも移民を大量に受け入れ、犯罪率が急上昇しています」
ARDファクトファインダー ジッゲルコフさん
「より長い期間の状況を見ると、犯罪率は実際に低下していることが分かります」
マスク氏の発言も…
アメリカの実業家 イーロン・マスク氏
「現在、ドイツ首相の最有力候補であり、世論調査でも最も支持率が高いアリス・ワイデルとの対談へようこそ」
ARDファクトファインダー ジッゲルコフさん
「彼女の人気について言えば、世論調査では5番目に過ぎませんでした」
ドイツではファクトチェック=民主主義を守るもの
ナチスがプロパガンダを利用した過去を持つドイツ。ファクトチェックは「民主主義を守るもの」として、社会に浸透しています。
ドイツ市民
「真実ではない情報を拡散することは、社会を分裂させようという試みです。政治家たちが私に真実を伝えているかどうか、私は知りたいと思います」
「私は見出しを見たら、必ず下に書かれている本文も読むようにしています。その情報の情報源の背後に誰がいるのかも把握したいからです」
選挙前の党首討論会でも、ファクトファインダーによるチェックが行われます。
極右政党 共同代表
「私の主張は正しい!ファクトチェックしてください」
政治家たちも当然、ファクトチェックされることを前提に臨んでいますが、それでも…
メルツ党首(現首相)
「働く能力があるにもかかわらず、働いていない人々は、将来、生活保護金は受け取れなくなるでしょう。その数は180万人にも上ります」
現在、ドイツの首相であるメルツ氏のこの発言。ファクトファインダーは、この180万人には、幼児を抱える一人親や重度の障がい者なども含まれていて、実際に労働を拒否している人は1万6000人しかいないことを情報源と共に掲載しました。
ARDファクトファインダー ジッゲルコフさん
「ポピュリスト的な人たちは、好きなことを何でも主張します。複雑な問題をそのまま描くよりも、誇張して白黒はっきりと表現した方がはるかに簡単だからです」
「フェイク」と隣り合わせの時代。ドイツ公共放送のプロデューサーのマライ・メントラインさんは「情報との向き合い方」をこう話します。
ドイツ公共放送 プロデューサー マライ・メントラインさん
「ドイツ人は(選挙を)エンタメとして見るのが好きだったりします。感情が激しく動いたとき、一歩下がって、いったん考えて、もしかしたら違う情報もあるのではとちょっと見に行くことだと思います。それが全てだと思います」
偽・誤情報を“正しい情報”と認識「47.7%」
喜入友浩キャスター:
総務省が行った調査によると、偽・誤情報について47.7%の人が「正しい情報」「おそらく正しい情報」と認識していたということです。
【偽・誤情報の認識】(調査:総務省)
▼「正しい情報」「おそらく正しい情報」47.7%
▼「誤った情報」「おそらく誤った情報」26.7%
▼「どちらともいえない」25.6%
「正しい情報」だと認識していた人のうち25.5%(4人に1人)が、家族に話したり、SNSで拡散するなどして「周囲に拡散」しています。理由として「驚きの内容だった」「話題になっていた」ということがあるといいます。
上村彩子キャスター:
「驚き」「恐怖」「怒り」など、何か心が動いたものを人に共有したくなりますね。
偽・誤情報の拡散スピードは、真実・事実の6倍ともいわれているので注意が必要です。