【全日本実業団ハーフマラソン展望】細谷恭平、西山未奈美、山本有真が三者三様の狙いでハーフ&10kmに出場 団体戦の優勝争いにも注目を

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2026-02-08 05:00
【全日本実業団ハーフマラソン展望】細谷恭平、西山未奈美、山本有真が三者三様の狙いでハーフ&10kmに出場 団体戦の優勝争いにも注目を

第54回全日本実業団ハーフマラソンが2月8日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで、2026海外ハーフマラソン派遣選考競技会を兼ねて行われる。大会前日には男子の細谷恭平(30、黒崎播磨)、女子の西山未奈美(26、三井住友海上)、女子10kmに出場する東京2025世界陸上5000m代表だった山本有真(25、積水化学)が取材に応じてくれた。今大会出場の目的が三者三様で、各選手の置かれている状況や背景が興味深い。

【写真で見る】西山、山本、細谷選手

アジア大会代表入りに向けて弾みをつけたい西山

昨年の全日本実業団ハーフマラソンが、西山未奈美にとって「転機」となった。3000m障害の日本歴代4位(9分39秒28)を持つが、2シーズン記録を更新できていなかった。練習にももっと余裕を持たせる必要があると考え、高校以来のハーフマラソンに出場し、1時間10分24秒の5位と健闘した。

「ハーフに出場したことで、練習に対する気持ちの余裕度につながり、トラックシーズンへの移行も上手くできました」

自己記録は1秒少しというところで更新できなかったが、日本選手権に優勝し、9分40秒台を5試合でマーク。10月のプリンセス駅伝2区(3.6km)、11月のクイーンズ駅伝2区(4.2km)と連続区間賞。一段階上のレベルに成長した。

8月にはベルギーの試合にも遠征し、9月開催の東京2025世界陸上代表入りに最後まで挑んだが、あと少しというところで逃してしまった。代表漏れを知らせるメールが来たときは、「かなりのショック」を受けたが、9月の全日本実業団陸上を目標とすることで、「気持ちをシフトさせることができた」という。そこで自己記録に2秒少しと迫る記録で優勝した。今年のアジア大会代表入りに向け、立ち直るきっかけになった。「今回も山口で、気持ちに弾みをつけられる結果を出したいですね」。

前回はハーフマラソンに向けて「とにかく走った」という。実質初ハーフマラソンに対して、距離を踏むことに主眼を置いた。今回は「走り込みプラス、無駄のない走りをすること」も意識してトレーニングを積んできた。三井住友海上の鈴木尚人監督は「去年は10kmまではすごく楽だったのに、そのあと少しペースが上がったところで離されてしまいました。離されてからも粘って、最後は3位と4位の選手との差を詰めたのですが、今回は我慢するところで無駄なく走り、ペースを維持できたら」と期待する。

タイム的には「昨年1時間10分台だったので、10分切りを狙いたい」と西山。「折り返してからの後半で、取り組んできたことを出したいと思っています。今年もトラックシーズンにつながるレースにしたいですね」。西山にとって全日本実業団ハーフマラソンは、アジア大会につながる大会と位置付けられる。

山本は高地練習につなげるための10kmに

東京2025世界陸上5000m代表だった山本有真が、女子10kmに出場する。1年前の今大会でも優勝(32分33秒)しているが、大会の位置づけ方が異なる。前回は「初めての10km」への出走で、入社2年間はクイーンズ駅伝2区(4.2km)に出場してきた山本が、1区(7km)や3区(10.6km)など、長距離区間に出場していくための布石だった。

「最初の1kmが遅かったり上手く自分を追い込めなかったりして、直後は悔しさもありましたが、後半を1人で押して行く走りができたことは良かった点です。去年はこの大会まで練習で距離を踏んでから、5000mの自己新を出した金栗記念(4月12日)に急ピッチで合わせました。今年は直近で狙っている試合は今のところなく、4月に初めてアルバカーキ(米国ニューメキシコ州)で高地練習をします。そこで良い練習をしたいので、今から練習をしっかり積んで、アルバカーキでさらに質の高い練習をしたいと思っています」

名城大時代にも国内で高地練習は経験しているが、期間は1週間程度で、距離も今と比べれば少なかった。山本の中では「初の試み」ととらえている。長期的な高地トレーニングを行うことは、入社1年目(23年)から考えていたが、23年のブダペスト世界陸上、24年のパリ五輪、25年の東京世界陸上と代表入りしたため、新しい練習パターンにチャレンジすることができなかった。

今年のアジア大会は山本の地元の愛知県開催。家族や友人の前で走ることを大きな目標としてきたが、出る試合やできる練習が限られてしまうことは避けたい。「今年の目標は5000mで(日本人6人目の)14分台を出すこと。海外で高地練習をして14分台を出すことができたら、アジア大会代表も自ずと付いてきます」。

4月の高地トレーニングにつながる10kmレースとするために、「昨年のようなスローにはしたくない」と言う。1年前は5km通過が16分49秒と遅く、フィニッシュタイムは32分33秒(後半5kmは15分44秒)だった。

「スローにはしませんが最初の5kmは落ち着いて入ります。後半5kmは昨年のように上げて行って、31分台が出せたらいいな、と考えています」

今年の山本は積極的なレース展開をして、新たな練習パターン確立につなげていく。

細谷は団体の部の優勝にも意欲

細谷恭平は大会前日の取材で、「いつもの通り」と強調した。2週間後の大阪マラソンに出場するが、昨年も全日本実業団ハーフマラソンで8位(1時間00分43秒の自己新)に入賞し、大阪マラソンの自己新(2時間05分58秒)での4位につなげている。

「マラソンに生きるハーフにすることが目的です。前回もこの大会でしっかり叩いて(追い込んで)、大阪マラソンで結果を出したので、今回も入賞や自己新で、しっかり追い込みたいと思っています。大阪では優勝と自己新が目標です」

アジア大会マラソンの選考競技会期間(2025年12月7日~2026年3月1日)でトップの記録を出せば、代表入りが決まる。細谷は前回の杭州アジア大会の代表に一度は決まったが、大会が1年延期になり代表を解除された。その後の細谷は東京2025世界陸上の補欠になるなど、毎回代表入りにあと少しの成績を残してきたが、代表入りはできていない。日本代表への意欲は大きい。

大阪の1週間後の東京でも記録が出る可能性があり、アジア大会代表入りのためには日本記録(2時間04分55秒)前後が必要だと言われている。細谷もそれを認めつつ、大阪マラソンの目標は「優勝と自己記録です」と、欲張らない方針だ。

先週の別大マラソンでは、チームの後輩の福谷颯太(25、黒崎播磨)が、2時間07分11秒で4位(日本人3位)に入り、昨年12月の福岡国際で獲得している細谷に続き、チーム2人目のMGC(来秋開催のマラソン・グランドチャンピオンシップ。ロサンゼルス五輪選考会)出場権を勝ち取った。現時点で2人がMGC出場権を獲得しているチームは黒崎播磨とトヨタ自動車だけだ。

全日本実業団ハーフマラソンには細谷以外にもマラソンで2時間6分54秒を持つ土井大輔(29)、2時間07分38秒の田村友佑(27)、前回19位(1時間01分12秒)の松並昂勢(24)らが出場する。澁谷明憲監督(48)は「大阪マラソンと東京マラソンに向けての調整が一番の目的ですが、主力が全力で走りますから、団体の部でも優勝したいですね」と意欲を見せる。キャプテンでもある細谷も「みんな状態良さそうですし、そこは視野に入れています」と同意する。

トヨタ自動車やロジスティード、トラックの代表経験者が出場する富士通など、ライバルは多いが、黒崎播磨が団体の部で優勝したときは、今後のマラソンでさらにMGC出場権獲得選手が増えていきそうだ。

女子の団体の部では三井住友海上が、西山の他にも樺沢和佳奈(26)、不破聖衣来(22)、小松優衣(25)、永長里緒(23)が出場する。24年、25年と団体2連勝しているチームで、鈴木監督は「優勝が数年後のクイーンズ駅伝優勝につながれば」と言う。団体の部の優勝争いも、今後の長距離界の勢力図に関わる可能性がある。注目すべき点だろう。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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