ハーフマラソン競歩で世界記録保持者第1号となった山西利和インタビュー 地元開催のアジア大会代表に

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-02-21 12:00
ハーフマラソン競歩で世界記録保持者第1号となった山西利和インタビュー 地元開催のアジア大会代表に

山西利和(30、愛知製鋼)が2月15日の日本選手権ハーフマラソン(21.0975km)競歩に、1時間20分34秒の世界新記録で優勝した。山西はハーフマラソン競歩の前身だった20km競歩でも、1年前に世界記録を出した選手。しかし昨年の東京2025世界陸上20km競歩では、金メダル候補に挙げられながら28位と敗れた。15kmから勝負に出たところで歩型が乱れ、3枚目の警告を受けてペナルティゾーン待機を命じられてしまった。それから5か月。警告ゼロで歩ききった山西に、レース3日後にインタビュー取材をお願いした。

【写真で見る】8年前のアジア大会では銀メダルを獲得

フィニッシュ時の表情が控えめだった理由は?

――フィニッシュ時はうつむき加減で、喜んだ表情ではありませんでした。世界記録が出ると、何kmか前の時点でわかっていたからでしょうか。
山西:ホッとしている方の気持ちが強かったから、じゃないですかね。後ろと差が開いていたといっても(19kmでは)10秒でした。2番、3番の選手が競りながら差を詰めてくることも考えられましたから。折り返しのたびに差を、ちらちら見ながら歩いていました。

――日本競歩界のレベルアップも感じたと話していましたが、どの局面で、どんな状況だった点に感じていたのでしょうか。
山西:
10kmで残っていた人数が、(距離が20kmだった)去年よりペースが少し遅いこともあって多かったのですが、このくらいいるんだ、と思いました。それがフィニッシュした段階でも、それほど離れていないところにこれだけの人数がいるのか、と。分布の仕方を見て層の厚さを感じました。昨年は先頭集団から離れた後に、崩れていた選手が多かったと思います。

――世界記録を出した喜びは?
山西:
世界陸連が世界記録を公認する条件として、1時間21分30秒を切ることを設定していましたが、昨年出した20km競歩の世界記録が1時間16分10秒だったことを考えると、ちょっと遅いタイムだったと感じています。1年間誰も出しませんでした、という状況になることを避けるために、低すぎるとは言いませんが、易しめのタイムに設定していたのだと思います。

――ハーフマラソン競歩の世界記録保持者第1号になったことについては?
山西:
第1号というところはたまたま、種目が切り換わるタイミングだったからですが、2年連続で世界一の記録を出したことはよかったと思っています。世界陸上や五輪で勝つことが何よりも名誉ではあるし、その1回に全てを懸けるヒリつきは好きなところで、そこは今後も目指して行きたいと思っています。それと同時に(世界陸上と五輪以外で強豪が集まる)ラコルーニャ(スペイン)のような大会で勝つことや、年間を通じて高いパフォーマンスを出すことも、狙って行きたいところです。

東京世界陸上とは違った歩型に対する配慮

――勝負に出たのは16kmでしたが、16kmというより残り5kmという意識の仕方ですか。
山西:
そうですね。距離が20kmからハーフマラソン(21.0975km)になって、最後にプラス1kmがある、ではなく、前半が1km長くなったイメージで歩きました。

――東京世界陸上でも残り5kmからトップに立ってペースを上げましたが、警告を立て続けに出されてペナルティゾーンで2分待機になってしまいました。今回も17kmまでの1kmを5秒ペースアップして集団から抜け出しましたが、注意が3枚続けて出されました(※)。
山西:
警告は掲示板に出るので、掲示板の前を通るまでは出されたことがわからず、立て続けに出されてしまいました。それに対して注意は、パドルで直接選手に出されます。今回は注意を出された時点で単純に、ペースを少し抑えました。(実際には1km2秒しか違わなかったが)体感的には落としています。

――ペースを落とすと同時に歩型も、警告が出ない歩き方ができた?
山西:
上半身の位置と接地位置の関係が、スピードを上げたときに少しズレた感じがあったので、それを元に戻しました。東京世界陸上のときは、注意をされてもその位置のまま歩き続けてしまっていましたね。そこの注意深さが少し足りなかったかな、と思います。谷井(孝行・陸連強化委員会競歩シニアディレクター)さんからも1月の宮崎合宿で、上体が後傾していることを指摘されました。後傾しているとキック脚が早く地面を離れて、振り出すときの足が高くなる、あるいは軌道が少し悪く見えるのだと思います。

――審判からの見方とすり合わせる、という表現をしていました。
山西:
そうですね。それ以上注意が出ないこと、警告になっていないことを18km、19kmで確認はしましたが、ゴールするまでは掲示板を毎周気にしていました。確信を持てたというより、そこにずっと注意を払いながらレースを進めていましたね。今回は後ろが離れてくれたのでペースを落として修正ができましたが、国際大会で最後競り合いになり、ぎりぎりの勝負になった時に歩型違反のリスクと隣り合わせ、という状態は望ましくありません。今後の課題になります。
(※)競歩は審判が歩型を判定し、正しい歩型(両足が同時に地面から離れてはならない。また、振り出した脚が地面についてから垂直になるまで、その脚は曲げてはならない)で歩いていない選手には注意(イエローパドル)が出る。注意されても直らない選手には警告(レッドカード)が出される。3人の審判から警告が出るとペナルティゾーンで待機を命じられる。ペナルティゾーンを出てから1枚警告が出ると失格になる。注意や警告が出されると思い切った歩きができなくなるなど、勝負に影響することもある。

8年ぶりのアジア大会は中国選手と金メダル争いか

――名古屋開催のアジア大会は地元企業(愛知製鋼)の選手ということが、追い風になりそうですか。
山西:
そうですね。愛知製鋼は僕にとって足場なんです。出てほしいという声をたくさんいただきましたし、皆さん応援に来ていただけると思っています。応援に来てもらえるということは、自分の競技を通じて世の中に対して、価値を感じてもらえるものを提供できている、ということです。それを最も足場としている所属企業において感じられることは、自分にとってすごく大きいことなんです。

――8年前のジャカルタ・アジア大会(20km競歩)は、実業団1年目で銀メダルでした。翌年のドーハ世界陸上金メダルへとつながった大会ですが、どんな大会でしたか。
山西:
入社1年目で、以前とは違って長期合宿も多く組めたのですが、新しい環境にアジャストしきれずに、アジア大会ももがきながら出場して中国の王凱華(Wang Kaihua)選手に6秒差の銀メダルでした。悔しい思いもしましたが、もがいていく中で見つかったものもたくさんあり、その意味では学びの多い大会でしたね。

――今年のアジア大会では、東京世界陸上2位の王朝朝(Wang Zhaozhao)選手が出場したら強敵となります。
山西:
ジャカルタで負けた王選手は、その後1時間16分54秒(21年。当時アジア歴代2位)を出す選手ですが、その後の世界大会では力を出し切れなかった印象です(ドーハ世界陸上7位、東京五輪8位)。それに対してリオ五輪金メダルなど勝負強い長身の中国選手(王鎮・Wang Zhen)がいましたが、王朝朝選手は久しぶりに現れた勝負強い中国選手。そういう選手と歩くのはすごく楽しみですし、負けられないな、という思いです。

――名古屋アジア大会は今後に向けて、どういう位置付けになりますか。
山西:
暑さもありますし、来年の北京世界陸上、その先のロサンゼルス五輪へのデモンストレーションと考えています。今後の国際大会に準備をしていく1歩目かと思います。ジャカルタ大会はアジア大会、翌年のドーハ世界陸上、そして東京五輪とつながっていきました。そのステップをもう一度踏んで行きなさい、というメッセージなのかな、とも考えています。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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