日本人トップの平林清澄が“冬眠”から醒めるプロセスに東京世界陸上 世界へ再挑戦するスタートラインに【大阪マラソン】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-02-23 12:00
日本人トップの平林清澄が“冬眠”から醒めるプロセスに東京世界陸上 世界へ再挑戦するスタートラインに【大阪マラソン】

9月のアジア大会代表選考会を兼ねた大阪マラソンが、2月22日、大阪府庁前をスタートし、大阪城公園内をフィニッシュとする42.195kmのコースで開催された。吉田響(23、サンベルクス)が8km手前で飛び出し、30kmまでは日本記録(2時間04分55秒)を大きく上回るペースで走ったが、そこからペースダウン。37kmで吉田を抜いたI.ハッサン(29、ジブチ)が2時間05分20秒の大会新記録で優勝した。日本人トップの5位には平林清澄(23、ロジスティード)が、2時間06分14秒の自己新記録で入った。

【写真で見る】平林選手

平林の強さは30kmからのペースアップ

平林が“マラソンの強さ”を2年ぶりにアピールした。30kmを過ぎてハッサンが集団から抜け出すと、平林も間もなくそれを追い始め、32km付近ではハッサンとともに吉田を追う展開に。30kmまでの5km毎は14分49~55秒のイーブンペースで、集団の中で存在感を消していた。だが35kmまでは14分40秒にペースアップし、他の日本選手を大きく引き離した。

「30km過ぎの折り返しで響君との差が、まだ1分近くありました。35kmまで待ってから行くつもりでしたが、もう行かないと追いつかない。脚も持つかもしれないと思い、迷いましたが行くことにしました。しかしハッサン選手に追いつくところで脚を使ってしまいました(力を使ってしまった、の意味)」

36km過ぎでハッサンに引き離され、最後は5位まで落ちたこともあり、外国勢に敗れた反省を強調した話し方になった。

だが平林も37km過ぎには吉田を抜き去り日本人1位でフィニッシュ。2年前のこの大会に初マラソンで優勝(2時間06分18秒=当時初マラソン日本最高)したときも、コースで唯一起伏がある30~35kmを14分37秒で走破した。気象条件も違うので単純比較はできないが、30km以降の勝負どころでペースを上げられる力が、平林のマラソンでの強さと言っていいだろう。

平林は今回で3回目のマラソン。24年大阪は前述のように2時間06分18秒で優勝したが、東京2025世界陸上代表入りを狙った25年別大は2時間09分13秒の9位(25年8月の北海道にも出場したが練習として走ったので、平林はマラソン回数にカウントしていない)。30~35kmを14分46秒にペースアップして勝負に出たのは同じだったが、35km以降で大きくペースを落とした。

別大での失敗で、平林はその後の“冬眠”期間に入ることになる。

“冬眠”から醒めたきっかけは東京世界陸上を見学に行ったこと

“冬眠”は國學院大・前田康弘監督が、平林に対して使った言葉だった。ロジスティード入社後も平林を引き続き指導しているが、焦らなくていいぞ、という意味も込めて“冬眠”という言葉を使った。2人ともその時の状況を詳しく話してこなかったが、今回初めて平林が具体的に明かしている。

「別大で負けて何もかも失ったような顔で帰り、前田監督は『立ち直ってこい』という意味も込めて2週間の休みを与えてくれたのですが、ちょうど1人暮らしを始めた時期と重なって、何事も上手くいきませんでした。マットレスと段ボールの机で、2か月くらい暮らすような状態で。大学駅伝がなくなったことで、目標とする試合がなくなったような感覚に陥ってしまいましたし、一緒に練習する学生たちとの距離感も難しくて。昨年までは自分がキャプテンでチームを作ってきたのに、(別のチームのように感じられて)そこに寂しさも感じてしまっていましたね」

2月の終わり頃に左脚腸脛靱帯を痛めたことも影響した。故障自体はすぐに治ったが、メンタル面の落ち込みもあり、「立ち上げに時間がかかった」という。実業団初戦として7月に10000mに出場し、28分25秒85はそこまで悪い記録ではなかったが、平林の気持ちは上向かない。きっかけは9月の世界陸上を応援しに行ったことだった。

「東京世界陸上は見たくないと思っていましたが、周りから日本代表どうこうより、自分が走ることを考えて見たらいいんじゃないかと言われて、大学の後輩達と一緒に見に行きました。そこでマラソンをやりたい気持ちが大きくなりましたね」

11月の東日本実業団駅伝はアンカーの7区で区間4位。区間賞選手と13秒差で悪くはなかったが、納得のいく走りでもなかった。しかし11月22日の八王子ロングディスタンス10000mでは、27分37秒13と自己記録を大幅に更新。そしてニューイヤー駅伝では、21.9kmの2区を1時間01分29秒(区間3位)で走破。ハーフマラソン換算59分14秒のスピードを見せた。ニューイヤー駅伝2区の走りも、大阪マラソンに向けて自信になったという。

秋には海外で日本記録に挑戦するプランも

昨年の別大マラソンで東京世界陸上代表入りを逃したが、今回の結果で27年10月開催のMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。ロサンゼルス五輪代表3枠のうち1人、または2人が決定)出場権を得た。今回出場を決められたことで、残り1年半を自由に使うことができる。平林は秋の海外マラソンで「タイムアタック」をする計画を持っている。

「大学の間に前田監督にマラソンの入り口を開いてもらい、今も一緒に世界に挑戦しています。今までは(国内の)勝負のマラソンを続けて来ましたが、そこでしっかり結果を出してから海外マラソンにチャレンジしたいと思っていました。今後は(日本記録への)タイムアタックにもチャレンジしたいと思っています。自分の強みは挑戦しているときに、成長を感じられることです」

条件に恵まれれば日本記録や、ロサンゼルス五輪代表枠の1つであるMGCファストパスの、2時間03分59秒にも挑戦していく。最終的な目標はロサンゼルス五輪で戦うことだ。東京世界陸上を見に行ったときも、注目したのは世界の戦いだった。

「日本代表の走りよりも、世界の選手がどんな走りをするかに注目していました。沿道で何回も選手たちを見ましたし、国立競技場で胸の差だった勝負もスタンドから見ていました。暑さの中、アフリカ以外の国の選手も戦えていた。コンディション、コースの起伏によっては戦っていけることを直接見ることができました」

大阪マラソンでMGC出場権を獲得して「ひと安心」できたのは確かだが、次に戦うべき相手である外国勢が目の前にいた。「最後は脚がピタッと止まっていました」。次の課題を実感して、再び世界に挑戦していくスタート地点に立った。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

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