イラン攻撃で続く報復の連鎖 ミサイル飛び交う下で失われる命 現地で何が?緊迫のイスラエルを取材【報道特集】

アメリカ・イスラエルによる、イランへの攻撃から1週間。報復の連鎖が続く中、イランとイスラエルでは何が起き、ミサイルやドローンが飛び交う下で人々は何を感じているのだろうか。
増え続けるイランの死者数 イスラエル軍は「更なる奇襲作戦」示唆
爆発の煙に包まれるイランの首都・テヘラン中心部。
2月28日に始まった、アメリカとイスラエルによる軍事作戦。最高指導者・ハメネイ師が殺害された後も、攻撃は激しさを増している。
アメリカは核開発をめぐってイランと協議中だったが、その対話の裏で奇襲作戦が行われた。
アメリカ トランプ大統領
「あの狂人たちと交渉していた時、彼らが先に攻撃してくるだろうと思った。もし今やってなかったら、核戦争が起きて多くの国が壊滅していただろう」
幼い命も犠牲になった。イランの国営メディアは、南部の女子小学校が空爆され、170人以上が亡くなったと発表している。
小さな遺体が並ぶ安置所では…
男性
「彼女の算数の教科書です。モハンナ・ザリ、1年生でした」
掘り進められるいくつもの穴は、子どもたちを埋葬するための場所だという。
アメリカ軍は、インド洋を航行していたイランの軍艦を魚雷で攻撃。
死者数はイラン全土で日々増え続けている(※6日・イラン国連大使の会見時点で1332人)。
イラン国民
「イスラエルとアメリカへの怒りと憎しみがこみ上げてきます」
「やり返すどころじゃない。奴らをバラバラにしてやる」
イランは反撃を続けている。
報復攻撃は、イスラエルだけでなく、アメリカ軍の拠点などがある中東各国にも向けられた。
攻撃を受けた国は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦など10以上に及び、一部の国はイラン攻撃に加わる可能性があるとも報じられた。
さらにイランは、世界の石油輸送の要衝・ホルムズ海峡を封鎖して、揺さぶりをかけている。影響は、もはや中東だけにとどまらない事態になっている。
アメリカとともに攻撃を続けるイスラエルは...
イスラエル軍 ザミール参謀総長
「更なる奇襲作戦がありますが、詳細は明かせません。全ての敵を追いつめ、作戦を成し遂げます」
緊迫のミサイル警報 現地の声
村瀬健介キャスター
「エジプトから陸路で国境を越えて、イスラエルに入国したところです。艦船の姿も見え、戦時下の緊迫感が海の様子からもわかります」
今、イスラエルの空域を、民間の旅客機が飛行することはできない。出入国は陸路に限られている。
南部エイラートのエジプトとの国境では、出入りする人や車が数多く見られた。
最大都市のテルアビブに向かうと、幹線道路の脇では、休息をとる兵士の姿も見られた。
村瀬キャスター
「今、アラームが鳴っています。携帯に警報が鳴っていますが、この地域でのミサイル攻撃の警報です。どんどん停車し始めています。我々もいったん避難しましょう。あと50秒で着弾するという警報なので、私たちも急いで…」
村瀬キャスター
「構造物の下にいったん避難しようと思います。子どもたちも避難しています。子どもを連れた家族も避難せざるを得ないという状況です」
高架下に避難した人
「イスラエルでは普通のことですよ。私たちは常に戦時下ですから」
テルアビブに入った。いつもは渋滞している高速道路だというが…。
村瀬キャスター
「この時間帯(午後3時すぎ)、これほど車が流れているのは珍しいということです。皆さん市民生活を止めて、基本的には自宅に待機しているということで」
そして、ホテルでも…。
館内放送
「このエリアに警報が出されました。最寄りのシェルターに避難して、次の指示を待ってください」
村瀬キャスター
「地下シェルターに避難してきましたが、宿泊客が全員集まってきているので、ぎゅうぎゅう状態で満員電車のようです」
地下シェルターには、ベビーカーに乗せられた赤ちゃんや、ペットの犬も。
歌声を上げ、無邪気に過ごす子どもたち。イスラエル出身で、今はイタリアに住んでいるというグループの女性は、戦争を肯定していた。
ーー不安や恐怖を感じますか?
イスラエル出身の女性
「いいえ、とても幸せです。この戦争が終われば、穏やかで良い暮らしができると信じていますから。今、この戦争が必要なんです」
テルアビブに住んでいるカップルは…
女性「うんざり。疲れました」
男性「誰も戦争なんて望みません。強いられてきたのです」
女性「望んでいる人もいると思うの」
男性「アヤトラ(ハメネイ師)とか?」
女性「(イスラエルには)アヤトラたちを排除したいと思っている人がいるの」
男性
「『平和な世界に住めたら』と願っています。でも時にはそうはいかない。立ち上がって自分たちを守らないといけない」
イランの反撃でシェルター避難者が犠牲に 救急ボランティアが語る惨状
今回、イランの反撃で“イスラエル側の被害の象徴”となっている現場がある。
3月1日、イスラエル中部の住宅街にあるユダヤ教の礼拝所「シナゴーグ」などをイランのミサイルが直撃し、9人が死亡した。
2日、ネタニヤフ首相がこの現地を視察して被害を強調した。
村瀬キャスター
「フェンスの向こう側に、瓦礫になっている家があります。白い建物はまだ形が残っていますが、ダメージを受けています」
攻撃直後、現場に駆けつけたという救急ボランティアの男性が当時の様子を話した。
救急ボランティア
「とても凄惨な現場でした。煙と炎が凄まじく、人々が叫んでいて、どこに誰がいるのかもわからないような状況でした。私は20年以上ボランティアをしてきて多くの辛い現場に遭遇しましたが、今回ほどの現場はありませんでした」
地下のシェルターに避難していた人も犠牲になった。
村瀬キャスター
「完全に天井が落ちてきています。鉄筋が完全に抜けてしまって、ぐにゃりと曲がって、まさに、ミサイルが突き抜けてきている。この場所に立っていた2人は亡くなったけれども、こちらの壁側に立っていた人たちは助かったということです」
犠牲者には子どもも含まれていたという。
救急ボランティア
「瓦礫の中から子どもたちの遺体を掘り起こしました。誰も傷つけていない、何の罪もない子どもたちです。犠牲になった子どもと対面するのはとても辛いことです」
国民8割が「攻撃支持」も 報復で家族4人失ったアラブ系イスラエル人の複雑な心境
攻撃の応酬が続く中、イスラエルでは戦争に賛成する人が圧倒的多数を占めている。
世論調査では、約8割の人が今回の攻撃を「支持する」と回答している。攻撃に「反対する」と答えたのは1割余りだった。
しかし、こうしたイスラエルでも、複雑な思いを抱えている人がいる。
中部のタムラという街に暮らすイスラエル人の弁護士、イハブ・ハティブさん。
2025年6月のアメリカ・イスラエルとイランの軍事衝突で、報復としてイランから放たれたミサイルが自宅を直撃した。
高校の教師をしていた妻と、弟の家族3人、あわせて4人が死亡した。
イハブ・ハティブさん
「ミサイルが向こうから飛んできて、私の家に直撃しました。どこの家に落ちようが関係ないんです。どこに落ちたとしても、人が殺されることに変わりはない。とてつもない悲しみが生まれるだけです」
当時、妻らは自宅のシェルターに避難していたが、直撃したミサイルには無力だった。
イハブ・ハティブさん
「痛みは胸に刻まれています。一生背負うことになったこの傷は、決して癒されることはありません」
実は、ハティブさんはアラブ系のイスラエル人で、イスラム教を信仰している。
約1000万人いるイスラエルの人口のうち7割がユダヤ人だが、約2割がハティブさんのようなアラブ系だ。
家族を亡くしたハティブさんは、イスラムとユダヤの宗教を超えて、様々な人に支えられてきたという。
イハブ・ハティブさん
「今回の戦争が始まり、トラウマになっている去年の記憶がよみがえってきました。『一日も早く終わって欲しい』。そう祈りました。私たちが経験したような悲劇を、他の家族に味わって欲しくはありません。
イスラエルには、平和に共存できる善良な人々がまだたくさんいるのです。戦争や混乱を消し去り、憎しみを忘れましょう。結局のところ、私たちはみんな同じ人間です。ユダヤ人もアラブ人も、一緒の人間なのです」
「国民自身が解決すべきこと」 他国による武力介入にイラン人は複雑な心境
東京・港区。日本に住むイラン人は、母国を心配している。ペルシャ絨毯店を営むメラビ・メルダデさん。
店内にある絨毯は、いずれもイランからの輸入品だが、今は発注したものが届かないという。
ペルシャ絨毯店を営むメラビ・メルダデさん
「買ってあるんだけど、イランに置いてあるんですね。もう輸入できないんですね。出せないんです、イランから。これは最近のことで、戦争が起きてから。飛行機が飛んでいない」
メラビさんは9人兄弟。イランで暮らしている兄に電話をかけてみたが、ネットが遮断されているためか、現地の家族とも連絡がとれずにいる。
ペルシャ絨毯店を営むメラビ・メルダデさん
「繋がらない。心配ですね」
3月2日に取材に応じた、日本人の夫と結婚し6年前から日本に住むイラン人の女性は、アメリカとイスラエルによる攻撃を支持している。
日本に住むイラン人女性(20代)
「イラン人にとって、非常に大きな出来事だと思います。とても嬉しくて、素晴らしい日になりました」
理由は、市民に対する弾圧だ。
イランでは、髪を隠すヒジャブが女性に義務づけられている。
4年前、適切に着用していなかったとして、警察に拘束されたマフサ・アミニさん(当時22)が死亡。これが大規模な抗議デモへ発展した。
今回の攻撃の直前である2025年12月にも、物価高などを背景に始まったデモが反体制運動へと急速に広がっていった。アメリカに拠点を置く人権団体によると、2月12日時点で治安当局との衝突で、参加した市民6500人以上が死亡したとされている。
日本に住むイラン人女性(20代)
「2か月前に虐殺された人たちが二度と戻ってこないと思うと、本当に胸が張り裂ける思いで、ただただ悲しいです。
この政権下で得られなかった、最低限の自由が欲しいのです。多くの人は他国による武力介入は良い選択ではないと言いますが、例えば自宅が火事になって自分たちでは消火できないのなら、当然、外からの助けを期待しますよね」
通信状況が悪い中、イラン国内に住む男性と連絡が取れた。男性は複雑な心境を語った。
イラン国内で避難中 イラン人男性
「これからどうなるのか、とても心配です。私が一番懸念しているのは、今後、収拾がつかない状況に陥り、内戦のような事態を招いてしまうことです」
数日前、攻撃があったテヘランから、イラン国内の別の場所に避難したという。
ーーアメリカとイスラエルによる攻撃について、どう感じていますか?
イラン在住のイラン人男性
「非常に複雑です。イランには多くの腐敗や問題があるのはわかっていますが、それは私たち国民自身が解決すべきことです。他の国がイラン国民を助けるために攻撃しているなんて、何の疑いもなく信じることはできません。戦争が一刻も早く終わることを、切に願っています」
ハメネイ師の殺害「暗殺で、テロ行為」 イラン駐日大使が米とイスラエルを糾弾
東京・港区のイラン大使館を訪ねた。
日下部正樹キャスター
「入口に殺害されたハメネイ師の記帳台が設けられています。ハメネイ師だけではなく、攻撃によって殺害されたイランの高官らの写真も貼られています」
アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃後に設けられた記帳台には、絶え間なく人が訪れている。現地での被害の様子を伝える写真が、遺影とともに目立つ位置に掲げられている。
イランのペイマン・セアダット駐日大使がインタビューに応じた。
セアダット駐日大使
「これは被害を受けたイラン南部の小学校の写真です。下の写真は埋葬のためのお墓です。少女たちは全員殺されました」
セアダット大使は、核開発をめぐる外交交渉の途中で攻撃されたことを非難した。
セアダット駐日大使
「アメリカとイスラエルは、交渉しているふりをしながらイランへの卑怯な攻撃を計画していたと言わざるをえません。これは国際法と国連憲章に対する明白な違反です。攻撃してくる者を阻止するまでは、決して降伏しません」
ーー最高指導者であるハメネイ師の殺害を、どう受け止めますか?
セアダット駐日大使
「これは暗殺であり、テロ行為です」
一方で、イランの報復がバーレーンやアラブ首長国連邦、サウジアラビアなど、周辺国に幅広く及んでいることについては…
セアダット駐日大使
「イラン周辺の地域では基地が建設され、(イランへの攻撃の)拠点となっています。イランの自衛のためには、国民を殺害する攻撃に加担しているアメリカ軍基地を放置しておくことはできません」
ハメネイ師の後継候補に挙がっている次男・モジタバ師。トランプ氏は「ハメネイの息子は受け入れられない」との考えを示しているが。
セアダット駐日大使
「後継者選びの手続きは憲法に基づいています。今、その手順に従って進められているのです。我々の新しい後継者選びに干渉しようとするアメリカやイスラエルの脅しは、断固として受け入れられません」
米・イスラエルの攻撃「国際法違反」 スペインはイラン攻撃での基地使用を拒否
イランへの攻撃に対しては、アメリカ国内からも批判の声が上がっている。
CNNテレビの世論調査(2月28日と3月1日に実施)によると、攻撃を「支持しない」人は59%と、「支持」(41%)を上回った。
アメリカの国際法学会は「攻撃が国際法に違反する」と声明を出した。学会の次期会長であるオーナ・ハサウェイ氏は…。
アメリカ国際法学会 オーナ・ハサウェイ次期会長
「国際法の下では、国家が武力を行使できる理由は2つしかありません。1つは、国連安全保障理事会が承認した場合ですが、もちろん、今回はそうではありません。
もう1つは、他国による武力攻撃への対応として自衛権を行使する場合です。これも当てはまりません。『差し迫った脅威があった』とも言われていますが、実際、そのような証拠は示されていません」
国際法に違反するにもかかわらず、アメリカへの批判を避ける国も少なくない。
アメリカ国際法学会 オーナ・ハサウェイ次期会長
「多くの国がトランプ政権からの報復を心配していると思います。トランプ大統領は、自分に反対する国を容赦しません。
そして、多くの国がアメリカによる防衛にも、アメリカとの貿易にも依存しています。報復の影響を懸念しているため、沈黙しています。私が心配しているのは、各国が沈黙を続けると、それが同意したものと見なされるということです」
こうした中、真っ向から批判するのがスペイン。イラン攻撃でのアメリカ軍による基地使用を拒否したのだ。
するとトランプ氏は不満をあらわにし、スペインに禁輸措置をとると警告した。
アメリカ トランプ大統領
「スペインとの全ての貿易を断ち切るつもりだ。スペインとは一切関わりたくない」
これに対し、スペインのサンチェス首相は…
スペイン サンチェス首相
「違法行為に違法行為で応じてはなりません。人類の大きな惨劇は、いつもそこから始まります。スペイン政府の立場はこの言葉に集約されます。『戦争反対』。報復を恐れて、世界にとって有害で、価値観に反することに加わるつもりはありません」
一方で、ハサウェイ氏はイランによる周辺国への報復攻撃も自衛の範囲を超えており、国際法違反であると指摘する。
第二次世界大戦以降に築かれた法秩序は今、最大の危機にあると警鐘を鳴らす。
アメリカ国際法学会 オーナ・ハサウェイ次期会長
「これは中東に限った問題ではありません。武力行使を禁止する国際法が機能しなくなると、各国は様々な理由をつけて武力行使ができると判断するかもしれません。世界の国々が協力して、武力行使の禁止に基づいた法の秩序を再構築する必要があるのです」