ついにガソリン“1リットル200円超”…戦争集結しても「原油価格は安定しない」可能性も?【Bizスクエア】

アメリカとイスラエルによるイラン攻撃開始から2週間。ホルムズ海峡の封鎖状態が続き原油が高騰している。戦争終結のシナリオとその後も続く影響とは?
イラン「1バレル200ドル超を覚悟しろ」
石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖が続き、ペルシャ湾から出られない船が攻撃されている。
イラン革命防衛隊報道官:(11日)
「米国とイスラエル、その支援者のための石油は1リットルたりともホルムズ海峡を通過させない。原油価格が1バレル200ドルを超えることを覚悟しろ」
さらに、イランの新しい最高指導者に選出されたモジタバ師が初めての声明でー
モジタバ師の声明:(12日)
「私たちは殉教者の“血に対する報復を決して放棄しない”ことを確約する」
イランが徹底抗戦の構えを見せていることで原油価格は高騰。
一方、アメリカ中央軍はホルムズ海峡周辺で機雷敷設艦16隻を含むイラン海軍艦艇を攻撃する映像を公開。トランプ大統領は、ホルムズ海峡の安全は確保されていると繰り返し強調している。
備蓄放出決定でも原油価格は上昇
原油価格の高騰に対応するため、高市総理は世界に先立ち石油備蓄放出を発表。
この発表に続き、IEA(国際エネルギー機関)は11日、32の加盟国が“過去最大規模となる4億バレル”の石油備蓄を協調放出することで合意したと明らかにしたが、原油先物価格は再び1バレル100ドルの大台に迫るなど期待されたほどの相場の押し下げ効果はみられていない。
【IEA加盟32か国】
▼放出量:4億バレル(海峡通過量の20日分)⇒過去最大規模
▼備蓄量:12億バレル以上(60日分)
【日本】
▼放出量:約8000万バレル(民間備蓄15日分・国家備蓄1か月分の45日分)⇒過去最大
▼備蓄量:約4億7000万バレル(245日分)
この事態を「石油の時代に入って最大の危機」と話すのは、エネルギー安全保障政策が専門の久谷一朗さんだ。
『日本エネルギー経済研究所』久谷一朗研究理事:
「“実際の実需と価格が別物”であるということ。実需については備蓄の放出があれば当然需給のバランスがとれるはずで、マーケットも若干落ち着くことが期待できる。一方価格は、実需だけではなく市場で取引に参加した人がこの先の見込みなども含めて取引をする。現在のマーケットの見方は“戦争がもう少し続く”という方に寄っていて、その結果値段が下がらないということだと思う」
戦争終結のシナリオは?
山形県では“1リットル200円超”になるなど原油高騰の影響が広がる中、政府は新たなガソリン補助金の導入を決定。3月19日の出荷分から「ガソリン価格が170円を超える分については全額補助」の方針だ。
原油価格安定のためには、「アメリカが大きな鍵になる」と久谷さんは話す。
『日本エネルギー経済研究所』久谷一朗研究理事:
「この戦争はアメリカとイスラエルがイランを攻撃するという形。イスラエル自身は徹底的にイランと戦う気持ちは強いが、“トランプ氏にしてみれば政治生命を賭けるほどでもないと考えている”。アメリカがこの戦争からどこで手を引くかを考えるのが一番現実的な戦争終結のシナリオ」
その可能性はあるのだろうかー
久谷さん:
「歴代の大統領が一番気にしてきたのは“国内のガソリン価格”。米国内のガソリン価格はどんどん値上がりして1ガロン4ドルの水準になってきている。 これが続くと、トランプ支持者層が何やってるんだと言いかねない」
戦争終結でも「原油は高い状況が続く」
戦争が終結しても原油価格の安定化は難しいと指摘するのは、慶応義塾大学教授の白井さゆりさんだ。
『慶應義塾大学』総合政策学部教授 白井さゆりさん:
「戦争が終わったとしてもイランの政権が西側寄りではなく、不安定な状況が続けばホルムズ海峡の通過は非常に危険。つまりそれは保険料や輸送料が高騰するということ。また、イランでの民間人の反政府運動が思ったほど大きくなく政権によるコントロールができそうだという憶測もある。そうなると原油価格は結構高い状態が続く。イランの体制がどうなるかが一番大事だと思う」
日本政府は原油高騰への対策を打ち出しているが、その後の影響も心配だ。
<日本 原油価格の高騰対策>
▼19日から“ガソリン価格170円を超える分は全額補助”
▼当面は既存の“基金2800億円で対応”・追加の予算措置は考えず
▼必要に応じ25年度の予算予備費(約8600億円)の活用検討
――ガソリン価格200円なら30円を補助すると。これが長くなれば相当財政負担が出てくる
白井さん:
「暫定税率の撤廃で25円下げるのに1兆円かかったので、財政負担が大きくなる可能性はある。何よりもまたコストプッシュインフレの再燃という感じになると、国民にとっては生活が非常に苦しい状況になる」
原油高騰の影響は広範囲
原油高騰はガソリンだけでなく、広範囲に影響を与える。
日本は原油から作られる「ナフサ」を中東各国から輸入しているが、そのナフサを原料に製造される「エチレン」がすでに減産に追い込まれている。
その結果、プラスチックや合成繊維、洗剤をはじめさらにその川下にあたる自動車部品やタイヤなど多くの製造業に影響が出ることになる。
『慶應義塾大学』総合政策学部教授 白井さゆりさん:
「今回の問題は、日本が石油だけでなくナフサもかなり中東に依存していたことがあらわになった。つまり地政学リスクは対中国だけではなくて、中東の方ももう少し多様化して見直さないといけないということだ」
――ホルムズ海峡の封鎖は、もし起きたら大変だとずっと言われていた。封鎖されないような手があって戦争に踏み切ったのかと思ったら、実は何もなかったということが驚きだ
白井さん:
「トランプ政権は“最初のところだけ決めてプランBやその後の計画がない”と言われている。だからイランの情勢がどうなるかが本当に見えにくい」
通貨安も株安も「日本と韓国が突出」
ドル円相場では“有事のドル買い”で、14日は159円72銭と円安が進んでいる。
――日本は原油が高くなれば貿易赤字が増えるので円安が進むのは当然だが、そうなると円安と原油高のダブルパンチになってくる
『慶應義塾大学』総合政策学部教授 白井さゆりさん:
「興味深いことに原油を中東に依存しているアジアの国を見ると、韓国と日本が突出して対ドルで通貨が安くなっている。株価も韓国と日本が突出して下落。それは中東に依存しすぎているから。一方中国が株も通貨もほとんど影響がないのはロシアから原油が買えるしもっと多様化しているから。インドもロシアに依存できるので、影響は日本や韓国ほどではない」
「そう簡単に利上げできない」
今後の利上げにも影響が出そうだ。
『慶應義塾大学』総合政策学部教授 白井さゆりさん:
「今回のように原材料や化学産業に大きなダメージを与えるものは、国内経済をすごく冷やす。景気が悪くなる中で物価が上がる<スタグフレーション>の可能性があるときは、そう簡単に利上げができないと思う。だからよく経済を見ながら、円の動向も見ながら、非常に多方面で見ていかなければいけない。物価高圧力が強まったから利上げします、という感じにはならないと思う」
――今まではグローバルな経済危機や景気後退があったときには、まず利下げ、あるいは金融緩和をして景気を下支えした。これはデフレ時代だから。インフレ時代になって同じことをすると火に油を注ぐことにもなる。そうなると物価2%達成だとか、そういう議論からは脱しないといけないということか
白井さん:
「日銀もどうしても古いやり方をして物価2%の達成を目指して、いつ到達するだとか言っているが、地政学とコストプッシュの時代になったときにはあまり意味がない。先のことは誰にもわからないから。それよりも為替や国内の経済状況を見て物価を安定させることが大事。2%にこだわったインフレーションターゲティングは意味がなくなってきていると思う」
――元々白井さんはインフレーションターゲットというのをかなり支持していたが、少しニュアンスが変わってきてると
白井さん:
「日本はずっと0%ぐらいでデフレに近いところで内需も弱かったから2%を掲げた。欧米と同じ2%を達成するために緩和したわけだが、今は内需は弱いけどコストプッシュでインフレになっている。円安もすごく進んだわけだから、当然同じようなフレームワークを持っていること自体意味がないのでは思う」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2026年3月14日放送より)