春闘「満額回答」ラッシュの裏に人材争奪戦?大手スーパーではパート従業員の賃金上昇率が8%超 中小企業への波及は【news23】
企業が労働組合に対し、賃上げなどの回答を行う春闘の集中回答日。大企業からは、ことしも「満額回答」が相次ぎました。企業が賃上げに応じる背景にある、厳しい「人材争奪戦」の実情を取材しました。
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春闘“満額”回答ずらり 裏に人材争奪戦
物価高が続く中、私たちの暮らしを左右する賃上げ。その行方を占う「春闘」の集中回答日を迎えました。
記者
「たくさんの報道陣が見守る中、次々と春闘の回答が書き込まれていきます」
ホワイトボードに書き込まれた数字を見ると、日立は満額回答でベースアップは過去最高となる1万8000円に。トヨタ自動車は6年連続の満額回答で最大で月2万1580円の賃上げを決定しました。
また、流通や外食・製造業の労働組合が加盟するUAゼンセンの会場でも満額回答がずらり。
2026年も大企業を中心に2025年を上回る賃上げが相次ぎました。
イランをめぐる情勢など、先が見通せない中でも高水準の賃上げに応じた大企業。
その背景に何があるのでしょうか?
日本商工会議所 小林健 会頭
「企業の存続を考えたら人をキープしなければいけない。そのためには賃上げをしなければいけない。嫌々、死ぬ思いで賃上げをするという人(経営者)も結構いるが、それでも賃上げをする。したがって賃上げということで言えば“前向きな回答”が出てくる」
人材流出防止へ パートも8%UP
総合スーパー大手のイオンリテールでは…
喜入友浩キャスター
「こちらのスーパーではこの春、パートタイムで働く方の賃金を過去最高水準でアップさせます」
昼時の店内を歩いてみると…
喜入キャスター
「魚をさばいていらっしゃいますけど、こうした専門的なお仕事も?」
イオンリテール 近藤健治 人事総務本部長
「パートタイマーでやっておられる方もたくさんいらっしゃいます」
バナナの品出しを行っていた女性も、レジ打ちをする女性もパート従業員。
この店舗では、85%の従業員がパートやアルバイトだと言います。
イオンリテール 近藤健治 人事総務本部長
「非正規…時間給で働かれる方が売り場でも主役ですし業務的にもメイン」
そのため今年はパートの待遇改善に重点を置き、正社員の5.89%を上回る、8.38%の賃上げを決定。時給にして、101円の引き上げです。
対象は約9万人。人件費の増加は避けられませんが…
イオンリテール 近藤健治 人事総務本部長
「人材流出のリスクはあるので、どうやって入社いただいた方に定着して長く働いていただけるかは私たちの大きな課題だと認識している」
喜入キャスター
「その中で賃金というのは大きいと思うが?」
イオンリテール 近藤健治 人事総務本部長
「大きいですね。自分が仕事をマスターすれば賃金が上がっていく。これも大きな魅力になっていくのではないか」
こうした対応についてパートで働く人は…
喜入キャスター
「今回は平均で8%上がるという話は聞きましたか?」
イオンリテール パート従業員
「聞きました。嬉しいです」
ただこんな本音も…
イオンリテール パート従業員
「昨今物価もどんどん上がってきているので、それに見合って、もうちょっとずつでも上がっていってほしいかなと思う」
別のパート従業員も…
イオンリテール パート従業員
「物価も高いので(賃金アップは)そういった意味では良い事かなと」
喜入キャスター
「物価の上がり具合と賃金の上がり方は?」
イオンリテール パート従業員
「バランス的には良いとは思えないので、やはり買い物をするたびに控えてはいる」
賃上げの効果 中小企業への波及は?
物価高が続く中、今後、賃上げの効果をどこまで実感できるようになるのか?
特に、中小企業の従業員や非正規労働者ではその効果に課題が残ります。中小企業を中心に非正規労働者などの組合員を有する全労連は…
全労連・黒澤幸一事務局長(13日)
「大手の大企業の水準には遠く及ばないという状況。企業の業績によってかなり二極化する」
町工場など中小企業が多い東京・蒲田で話を聞くと…
中小企業の社員
「物価高とかもあって給料とか上がってもそこまでかなと」
中小企業の社員
「賃上げは年度によって。2年前に一度されて今年は多分ない。他でカバーですよね」
Q.他でカバーとは?
中小企業の社員
「今流行ってる投資をやったり、そういうので困らないようにしなければと」
一方、中小企業の経営者からは切実な声も…
中小企業の経営者
「(賃金を)上げていかないと逃げられちゃうので。積極的に上げていくことはやっている。ただ給料って高く上げても皆慣れちゃうので、上げた瞬間は皆感謝はするが。永続的に効果があるかというとそんな事はない。その辺が非常に難しい。一回上げると下げられない。不利益変更はできないので慎重にならざるを得ない」
大企業では好調な数字が並んだ今年の春闘。その効果はどこまで中小企業に波及するのでしょうか?
“満額ラッシュ”も…賃上げのジレンマ
小川彩佳キャスター:
中小企業や非正規雇用の方たちに影響が波及するかどうかが課題になってきました。
藤森祥平キャスター:
“満額”と言っていても、ハッピーという感じでお伝えできない微妙な雰囲気ですよね。
小川キャスター:
多くの経営者の皆さんを取材してこられた立場から、賃上げについてはどうご覧になっていますか。
Podcastプロデューサー 野村高文さん:
かつて、経営者の孤独や苦悩について扱う番組を作ったことがあったのですが、そのときに一番、経営者と従業員で意識のずれが大きいのが「給料」の話でした。なぜかというと、経営者は給料上げるときに、一度上げたら下げられないので、割と勇気を持って上げます。
ただ、手取りに関して考えると、実は給料が上がった分だけ、手取りが増えるかというと、
社会保険料や税など負担も増えるということが起きます。年収にもよりますが、例えば、給料が5%上がったとしても、手取りでいうと賃上げをそこまで実感できないことの方が多いようです。
そうすると、給料は上がったけれど、そこまで物価高騰に対応していないという捉え方をされることがあります。ですので、賃上げの話は手取りを増やすこととセットで議論しないとあまり誰もハッピーにならないということになりがちだと思います。
藤森キャスター:
そして、2025年に人手不足で倒産した件数が過去最多427件という数字もあります。何とか人を確保しなければいけないので、無理してでも賃上げをやらなくてはいけません。リスクはどれほどでしょうか。
Podcastプロデューサー 野村高文さん:
人件費というのは完全に固定費で、一度上げたら下げづらいという傾向にあるので、身の丈を超えて給料を上げてしまうと、それは企業業績に直結するというところですね。
ただ、私が取材で伺っている限り本音で言うと経営者の方は、給料を払いたい。しっかりと従業員の方に報いたいということをおっしゃる方が多いです。今回、まさに人手不足で働いてくださる方に魅力を感じて続けてもらうために、上げるという決断をされたのだと思いました。
藤森キャスター:
もう一つ世代別の格差も見えてくるデータがあります。年齢別の月給の伸び率を2020年と2025年を比べたグラフです。2020年当時と比べますと、2025年の20歳から24歳は15.8%アップしており、若い世代は伸び率が高いです。
一方、50~54歳は-1.3%と減っています。いわゆる就職氷河期にあたる世代で若いときに不景気で、成果を出しても給料アップの機会がない、または少なかった。
この差は、またしわ寄せが来ているのではないかということを露骨に感じてしまいます。
Podcastプロデューサー 野村高文さん:
やはり表で見るとかなりシビアで、特定の世代の方が不利な状況に置かれています。ですので、所得を根拠にしながら、手当をしていくことが大事だと思います。
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<プロフィール>
野村高文さん
Podcastプロデューサー
Podcast制作会社の代表
経営者への取材多数
外資系ファームでコンサルタントの経験も