差別乗り越え…「日米の架け橋に」俳優・奈緒さんが“戦争花嫁”を取材「世間と戦った」歴史の証言【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-03-19 21:53

第二次世界大戦後にアメリカ兵などと結婚し、“戦争花嫁”と呼ばれた日本人女性。
様々な差別や偏見を乗り越えて、日本とアメリカの架け橋となった“戦争花嫁”の皆さんが、今を生きる私たちに伝えたい言葉を、俳優の奈緒さんが取材しました。

【写真で見る】舞台で“戦争花嫁”を演じた奈緒さん

“戦争花嫁”という言葉の起源 日本ではネガティブなイメージ?

高柳光希キャスター:
奈緒さんは2025年、アメリカで“戦争花嫁”と呼ばれた日本人女性4人を取材されています。

戦争花嫁を英語では“War Bride”といいますが、どれくらいの人たちがご存知でしょうか。私も恥ずかしながら今回、初めてこの言葉を知りました。

戦争花嫁は、第二次世界大戦後にアメリカ兵などと結婚した女性のことを指します。日本からアメリカに渡った戦争花嫁は、4万人から5万人ともいわれています。

「戦争花嫁」研究の第一人者である安冨成良さんによると、この言葉は、第一次世界大戦後には英語で存在していたといいます。そして第二次世界大戦後に、日本人に対してもこの言葉が当てはめられました。

広めたのは当時のメディアで、アメリカ兵と付き合う女性を一括りに「戦争花嫁」と報じていたため、「娼婦」と同一視されることもあったということです。日本国内では、どちらかというとネガティブなイメージが大きい言葉だったといいます。

今回、奈緒さんはどのような思いで、なぜ取材をしたのでしょうか。

奈緒さん:
一番最初のきっかけは、私が2025年に出演した「WAR BRIDE」という舞台です。桂子・ハーンさんという一人の戦争花嫁の女性を演じるにあたって、ぜひご本人のお話をお聞きしたいと思いアメリカに渡りました。

奈緒さんが取材した4名の“戦争花嫁” それぞれの結婚の経緯は…

高柳キャスター:
奈緒さんが実際に取材をした4名の戦争花嫁の方たちは、現在もご存命ということですが、皆さん90歳を超えています。

▼恵子・ジョンソンさん(90)
→東京・立川基地のアメリカ兵と、8年の文通を経て結婚されました。

▼マリコ・スパックさん(94)
→福岡・米軍基地の聖歌隊で歌う姿をみそめられました。

▼ツチノ・フォレスターさん(94)
→同僚の家にいたツチノさんに、夫が一目ぼれしました。

▼桂子・ハーンさん(95)
→キャンプ座間に勤務し、休み時間の卓球で夫と出会いました。

井上貴博キャスター:
「戦争花嫁」という言葉に最初はピンとこなかったのですが、奈緒さんが取材した映像と映画を拝見して最初に驚いたのが、90歳を超えた方々が矍鑠(かくしゃく)とされていたことです。

時代、国境、国籍、性別、環境などはまったく関係なく、今この時代を生きている我々が非常に重要にすべきことや、ヒントになる言葉がちりばめられていました。

私たちには、どういうふうに戦争の記憶を伝えるかという使命が絶対にあると思うのですが、難しくなってきていますよね。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
私はワシントンにいたときに聞いたのですが、アメリカではこういうことを研究したり、資料を集めたりしている人がいるそうです。

そういう点では日本のほうが研究が遅れているので、皆さんがご存命のうちに、いろいろな話を集めておくことが必要だと思います。

出水麻衣キャスター:
今、社会で分断が広がっています。いろいろな差別や偏見を乗り越えた方々だからこそ語れる言葉のなかには、今の時代に重要な、胸に刺さるものがたくさんあるなと私も思いました。

「日本と戦えますか?」 アメリカ市民権の試験で激しく葛藤

奈緒さん:
お一人お一人の今までのストーリーは壮絶な人生でしたが、恵子・ジョンソンさんにお話を聞いたときに、知らないことが本当にたくさんあるんだなということを知りました。

当時、アフリカ系アメリカ人の方とご結婚されて、お金はある状態だったけれども家を借りられなかったというお話をされていました。

これも差別の一つで、当時、自分自身もアジア人差別を受けていたし、夫となったアルバートさんも差別を受け、小屋の中でお子さんを育てたというお話をされていました。

また、「この子たちが日本に帰るとき、どういうふうに思われるだろうか」と思うと、とても胸を痛めたというお話をされていたのがすごく印象的でした。

お子さんたちにもお話を聞いたのですが、「私たちはママのおかげで、差別を受けてきたというふうに感じたことは一度もありません」とおっしゃっていました。

お子さんを思う母親の気持ち、父親の気持ちというのはどの時代でも変わらないですし、すごく愛に触れた時間で、とても印象に残っています。

高柳キャスター:
かつて日本とアメリカは敵対していましたが、時を経て、今は気軽に旅行ができます。そこにはこういった方々の、言葉にもできないような辛い経験が隠されていたということを私も今回感じました。

桂子さんはアメリカに渡って2年後、アメリカの市民権を獲得するための試験を受け、役人から「もし戦争が起きたら日本と戦えますか?」と聞かれたそうです。このとき、桂子さんは何と答えたのでしょうか?

奈緒さん:
桂子さんは「イエス」と答えたそうですが、「試験後は涙が止まらなかった」とおっしゃっていました。

当時、桂子さんにとって、日本はお父さんもお母さんもご兄弟もいらっしゃった国なので、「とても戦えない」と自分の中でたくさん悩んだようなのですが、そのあとにもう一つの家族、ご自身の家族のことを考えたときに、子どもたちのためにアメリカ人にならなければいけないと。

そして「乗り越えて『イエス』と答えた」とおっしゃっていたのですが…。そのときのことを思い出している桂子さんは苦しいお顔をされていて、今でも桂子さんにとってはこの「イエス」という一言がすごく大きく残っているからこそ、平和を強く願っていらっしゃるんだなと思いました。

「悲しいことを覚えているよりも…」 奈緒さんが受け継いだ“バトン”

高柳キャスター:
「戦争花嫁」と一括りにされた女性たちですが、それぞれに対して、さまざまな壮絶な物語が隠されています。

桂子さんは現在95歳で、今でも元気に過ごされているということですが、取材のなかで次のようなことをおっしゃっていました。

アメリカ在住 桂子・ハーンさん(95)
「私の人生は幸福でもありましたが、悲しみの生活でもありました。でも私は悲しいことを覚えているよりも、主人が愛してくれた楽しいことを記憶しながら、生涯を終わりまで歩んでいく」

奈緒さんは実際にこの言葉を取材で直接聞いて、どのようなことを感じましたか?

奈緒さん:
当時の辛いご経験も私はたくさんお聞きしましたが、最後に「楽しいことを記憶しながら…」とおっしゃっていたことが「これが平和のバトンなんだな」と改めて感じました。

誰かを憎む気持ちや恨む気持ちではなく、その辛い経験から私たちが学び、誰かを笑顔にできる気持ちや、幸せがそばにいることの尊さをしっかりと握りしめて生きていかないといけない──そう私自身も桂子さんからバトンとして受け継いだので、伝えていきたいと思います。

井上キャスター:
きっと今日本で生活している我々には想像だにできない、筆舌に尽くせないような差別や偏見があったのではないかと、想像しかできませんが、時間が経って、またその差別の形も変わっていきます。

奈緒さんはずっと、戦争のそういったことを伝えたいという気持ちをお持ちだったと思いますが、これから我々の世代ができること、やるべきこと、今感じていらっしゃることを教えてもらえますか?

奈緒さん:
まず私自身、「学べる」ということがものすごく幸せだと感じています。

世界情勢も大変ななかで、皆さん「どうやったら平和につながるんだろう」と、平和を願いながらもヒントをたくさん探していらっしゃると思います。

戦後80年を超えて81年目の今、だんだんと当事者のお話を聞く機会も減っていますが、これから戦争を一緒に学び、そして語り合える場所を私たちは選んでいけます。まだまだその希望が残されていると思うので、信じてこれからも伝え続け、皆さんで語り合っていきたいです。

今を生きる、そして戦後からすると未来を生きる自分たちだからこそ、平和の大輪を咲かせられると心から信じております。

==========
<プロフィール>
奈緒さん
俳優 2025年1月アメリカで取材
ドキュメンタリー映画「War Bride2 奈緒と4人の戦争花嫁」に出演

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