高市総理、トランプ大統領への「平和を導けるのはドナルドだけ」発言の裏側 機内で4回練り直した“外交巧術”【Nスタ解説】
世界が注目するなか行われた日米首脳会談。政府内からは「大成功だった」との声もあがりますが、早速、日米の認識に齟齬も見え始めています。
100点満点の成功? 日米首脳会談の成果とは
高柳光希キャスター:
今回の日米首脳会談について、政府内では「“100点満点”の成功」との声もあるそうです。
挙げられている成果は、▼次世代の原発と呼ばれる小型原子炉の建設、▼2か所で新たにガス火力発電所の建設など、日本からアメリカに対して11兆円超の投資で合意したということです。
さらに、関係悪化が進んでいる日中関係の立場について、「アメリカ側の理解を得たい」というのが日本政府の思惑でした。
アメリカ側の発表によると、台湾問題については「力による一方的な現状変更の試みに反対する」という認識で一致しました。
つまり、「軍事力で台湾を統一しようとするならそれには反対する」ということで、改めて足並みを揃えた形です。
TBS報道局政治部 官邸キャップ 中島哲平 記者:
今回、日本は第2弾の対米投資の発表になりますが、トランプ大統領は「日本はちゃんと約束を守る」と評価してくれていると見ていいでしょう。
日本がこのタイミングで日米首脳会談を開いたのは、もともと3月末に米中首脳会談が予定されていました。その前に、中国に対する日本の立場をトランプ大統領に理解してもらいたいという思惑がありました。
トランプ大統領からは、「日本のいいところを習近平主席に伝えておくよ」という発言もあり、トランプ大統領に日本の立場を伝えることができて、対中国に関しては良い会談になったのではないかと思います。
結果は同じでも言い方を工夫…トランプ大統領の受け止めは
高柳キャスター:
対米投資、そして日中関係については一定の成果が得られたなかで、大きく注目されていたのが中東情勢についてです。
トランプ大統領は日米首脳会談より前に、日本を名指しする形で、艦船派遣の期待を表明していました。
今回の首脳会談でも、自衛隊派遣など難しい要求をされる懸念がありましたが、結局そのような事態にはなりませんでした。これをどう乗り切るのかという戦略を練るのに、日本政府はかなり苦労を強いられたのでしょうか。
TBS報道局政治部 官邸キャップ 中島哲平 記者:
防衛大臣や外務大臣も、首脳会談の前に何度も会談をしています。
高市総理は、日本メディアの取材の際には「日本の法律の範囲内で、できることとできないことがあると説明した」と発言しています。
しかし実際、私たちの取材によると、高市総理はトランプ大統領に「日本としてできることをやる」と伝えたそうです。
憲法や法律の都合によりできることとできないことがあるなかでも、日本のメディアに対しては、どちらかといえば「できないこともある」ということをちゃんと説明したというトーンで伝わっていると思います。
一方で、トランプ大統領に対しては「法律の範囲内でできることをちゃんとやります」という言い方をしており、結果は同じですが、少し言い方は工夫したようです。
高柳キャスター:
すごく慎重な言葉選びが試されるなかで、日本政府は首脳会談前に周到な準備を重ねていました。
政府関係者によると、冒頭の挨拶はアメリカへ向かう機内で、少なくとも4回練り直しを行っていたということです。
高市総理の「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだと思っています」という発言に関して、手放しでヨイショしているようにも聞こえるニュアンスですが、暗に「平和と繁栄のためにイランへの攻撃をやめましょう」と伝えているとも取れる言い方となっています。
トランプ大統領を怒らせずに、言いたいニュアンスを伝える言い回しをギリギリまで調整していたということでしょうか。
TBS報道局政治部 官邸キャップ 中島哲平 記者:
会談で何を話すのか、そして話す順番の組み立ても含め、かなり工夫をされていたようです。
ただ、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだと思っています」という発言も、実際トランプ大統領にどのくらいちゃんと真意が伝わったのかはわかりません。
トランプ大統領も早速「イランがホルムズ海峡を開放しなければ、イランの発電所を攻撃する」と発言するなど、戦闘を止めようという姿勢がまだ見えないため、今後も注目していきたい点です。
「憲法9条」でトランプ大統領を説得 今後の議論にどう影響?
井上貴博キャスター:
個人的に気になったのは、トランプ大統領を説得するうえで持ち出したのが憲法9条だったということです。日本には平和憲法があるため、自衛隊を派遣することはできないし、艦船を派遣することはできないと伝えました。
裏を返すと、憲法9条がなかったら、違う結果になっていた可能性もあります。
これから憲法改正議論は加速しますが、護憲派も改憲派も、どういう憲法にしていくべきかを考えるうえでものすごく重要な意味合いを持つ首脳会談だったのではないかと思います。
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
本当に議論したいことがたくさんありますね。
まずは、想定される最悪の事態は免れたと思います。トランプ大統領の言動が未知だからこそ、最悪の事態にならないために、どのようなコミュニケーションが必要かという戦術がすごかったと思います。
一方、「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだと思っています」という言葉はダブルミーニングで、裏もあります。その裏をトランプ大統領がどの程度汲み取っているのかどうかは、日本側がコントロールできることではないですが、「日本側はそうなんだ」と言い続けることはできます。
憲法9条の話も、要は日本はアメリカとどうしていくのかということについて考えさせられました。
高柳キャスター:
憲法9条に関しては、今後の議論にも影響が出てくるのでしょうか。
TBS報道局政治部 官邸キャップ 中島哲平 記者:
今後の議論にどう影響してくるのかは不透明ではありますが、憲法9条がある種、自衛隊派遣の歯止めになっていることが見えてきたのではないかと思います。
憲法改正議論をするなかで、またアメリカとの向き合い方を考えていくなかで、憲法がどうあるべきかということは、国会でじっくりとちゃんと議論しなければならないと思います。
出水麻衣キャスター:
「できることはやる」というメッセージを強く伝えたといいますが、ここだけトランプ大統領の脳裏に焼きついて残っている可能性もあるなかで、日本は今、何をすることができるのでしょうか。
TBS報道局政治部 官邸キャップ 中島哲平 記者:
高市総理は、戦闘が行われている間にできることはなかなかないだろうとしています。
ただ、戦闘が終わったあとの機雷の掃海などについて日本はかなり高い技術を持っているので、トランプ大統領はそういったものにも期待しているようです。
出水キャスター:
トランプ大統領にも、日本ができることは何かということは伝わっているのでしょうか。
TBS報道局政治部 官邸キャップ 中島哲平 記者:
どのタイミングでできるか、できないかということを事細かに把握しているかはわかりませんが、ある程度のことは認識しているのだろうと思います。
井上キャスター:
できることをやるためにも、とにかく即時停戦をしてほしいということは、世界中の願いなのだろうと感じます。
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<プロフィール>
中島哲平
TBS報道局政治部 官邸キャップ
日米首脳会談を同行取材
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰