春闘・大企業で満額回答相次ぐ一方「中小企業の賃上げ」は黄色信号か?【Bizスクエア】

2026年の春闘。大企業では満額回答が相次ぎ、その勢いが中小企業へも波及していくかが焦点だが、イラン情勢や原油高で「非常に不安定要素が多い」との声も出始めている。
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大企業は「満額回答」続出
春闘の集中回答日だった18日、大企業では2025年を上回る回答が相次いだ。
日立製作所は満額回答で、ベースアップは過去最高となる1万8000円に。トヨタ自動車は6年連続の満額回答で、最大で月2万1580円の賃上げを決めている。
『経団連』筒井義信会長:(18日)
「人への投資が企業における成長と分配の好循環、さらに社会全体の成長と分配の好循環につながっていく。その確かな手応えを感じている」
流通・外食・繊維など2100を超える労働組合が加盟し、組合員の約6割をパートが占める国内最大級の労働団体『UAゼンセン』の第1次集計では、平均賃上げ率は▼正社員:5.45%▼パート:6.92%で、パートは同じ時期として過去最高を更新している。(19日発表)
賃上げはしたいが「できるのか…」
一方、日本の雇用全体の約7割を占める「中小企業」が多く加盟する『日本商工会議所』の小林会頭の表情は厳しい。
『日本商工会議所』小林健会頭:(18日)
「“非常に不安定要素が多い中での賃上げ”というのが今年の特色。楽観はしていない」
懸念されるのが、やはり原油高などの影響だ。
小林会頭:
「全国いろいろ回っているが、“生の声を集約すると身を割かれる感じがする”。本当に賃金を上げたいんだけど、上げられるだろうかと」
原油高・原材料高騰で“戦々恐々”
「イラン情勢は本当にどうなっちゃうのか…」
そんな不安を口にするのは、東京・目黒区にある町工場『富士精器』の社長だ。従業員17人で、機械部品の製造を手がけている。
藤野雅之社長(62):
「我々、電気がないと仕事にならないので、電気を安価に安定供給をどうしていってくれるかというのは本当に戦々恐々としている」
電気代は5年前に比べ毎月10万円以上高くなっていて、加えてアルミなどの原材料高騰で生産コストが上昇しても“価格転嫁できていない”のが現状だ。
藤野社長:
「生産性をあげて少しでも早く安く作れるようになって、『材料費ぐらいは上げてくださいよ』というところでも、取引先に難しいと判断されてしまうとかなり厳しい」
こうした状況でも、藤野社長は4月から全従業員に対して3~4%の昇給を決断。背景にあるのは人手不足の中での人材確保だ。
藤野社長:
「魅力ある会社じゃないと勤めたくないと思う。自分のやった成果が認められる。そんな会社作りをしていかなきゃいけない。頑張ったら頑張っただけ賃金を上げていくよと」
「賃上げは未来への投資」と言っていた矢先
連合による26年の春闘賃上げ率要求は、【全体5.94%】【中小組合6.64%】となっているが、『第一生命経済研究所』の熊野さんは、「中小では厳しい」との見方だ。
『第一生命経済研究所』首席エコノミスト 熊野英生さん:
「今回の原油高、イラン攻撃は、中小企業には大きな足かせ。今後イランの問題が長期化すれば中小企業は、6.64%という高い数字では着地できないと思う」
また、金融・財政政策が専門の矢嶋さんは、「タイミングが悪すぎる」とため息だ。
『ニッセイ基礎研究所』エグゼクティブ・フェロー 矢嶋康次さん:
「企業側と話しても、これまで『設備投資や人件費はコストだ』とずっと言っていたのが、『未来への投資だ』と言い始めていた。相当前向きになってきたところに、結局これでまた価格が上がってしまって、しかも量も入らないということになると、『人件費・研究開発はコストだ』と、また昔に先祖返りしそうで本当にタイミングが悪い」
「実質賃金プラス」を維持するためには?
一番の焦点となっていた「実質賃金」は、26年1月は「前年同月比1.4%」と13か月ぶりにプラスとなったがー
――ニッセイ基礎研の予想では、1月以降も何とかプラスが維持できそうとなっていたが、実現できるだろうか
『ニッセイ基礎研究所』矢嶋康次さん:
「今までの予想だと4年ぶりぐらいで数ヶ月連続でプラスになりそうだと思っていたが、原油価格が今の90ドル100ドルが続いちゃうと3月ぐらいから物価の方が高くなってしまって、ちょっとしんどいなという感じだ」
――物価が予想以上にまた上振れしてくると実質賃金が下がる。また中小企業を中心に名目賃金が期待ほどは上がらないとなるとこれも下押しと。お先真っ暗になっちゃう
『第一生命経済研究所』熊野英生さん:
「実質賃金プラスにはからくりがあって、年前半に政府がガソリン・電気代の補助をやると。それが1%ぐらい物価を下げるから差し引きすると、実質賃金がプラスマイナスゼロぐらいになる。ところがイラン攻撃による原油高騰が長引いて裾野が広がっていくと、これはマイナスになるから名目賃金をより上げないといけない。そこはやはり中小企業の賃上げにかかっている」
――もちろん短期的な経済運営も大事だが、賃上げできるように生産性を上げていかないと続かないという問題に改めて直面することになる
熊野さん:
「ちょっと厳しい言葉で言うと、いつまでも痛み止めを打ち続けていたら自己改革、生産性上昇に向けた設備投資などに動きにくくなる。ここは奮起して中小企業が生産性を上げて行くような行動をとるしかない」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2026年3月21日放送より)