きょうから始まる共同親権 78年ぶり改正で「離婚後の関係」どう変わる?子どもの利益確保の裏で、DV被害者からは“つきまとい”不安も

何が変わる?「子どもの利益」確保するための共同親権
共同親権の導入を柱とする改正民法が4月1日、施行されました。親権のあり方が変わるのは戦後初めてで、実に78年ぶりです。「子どもの利益」を重んじた法改正ですが、共同親権の導入をめぐっては、議論が始まった時から「DVや虐待が続くのではないか」など、懸念も寄せられてきました。共同親権の導入で何が変わるのか?ポイントを解説します。
(TBSテレビ報道局社会部・永橋風香)
そもそも親権とは?
そもそも親権とは、未成年の子どもの身の回りの世話や教育、財産の管理をする権限と義務のことです。離婚した場合、これまでは父親と母親のどちらかが親権者となる「単独親権」しか選べませんでしたが、今回の改正では、双方が親権者となる「共同親権」を選べるようになります。話し合いで決まらない場合には、家庭裁判所が「何が子どもの利益になるのか」という観点から判断します。
共同親権のもとでは、転居や進学など子どもに重大な影響を与える事柄について決めるときには、父親と母親が合意する必要があります。一方、食事や服装など「日常の行為」や、DVや虐待から避難や緊急手術など「急迫の事情」がある場合には、1人で親権を行使することができます。
ポイントは、共同親権が父母ではなくあくまでも「子どもの利益」を確保するために導入されたことです。
改正民法では、父親と母親が婚姻関係の有無にかかわらず、互いを尊重して協力すること、子どもの人格を尊重して養育することなどを「親の責務」として定めています。これまで、離婚後に養育費の支払いが滞ったり、別居親と子どもが交流する機会が途絶えたりするといった問題点が指摘されてきましたが、「離婚しても子どもにとって親は親」という考え方のもと、子どもにとってより良い養育を選択できるようにすることが狙いです。
これまでどちらか一方しか親権を得られなかったことで、争いを有利に進めるために片方の親が子どもを連れ去るケースもありましたが、こうした親権をめぐる争いを緩和することも期待されています。
DVや虐待のおそれがある場合は?根強い懸念も
一方、離婚後の共同親権の導入をめぐっては議論が始まったころから「DVや虐待が継続する」など強い懸念が寄せられてきました。
改正民法ではこの点について、虐待やDVのおそれがある場合には「裁判所は単独親権にしなければならない」と定めていますが、シングルマザーを支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の小森雅子理事長は、「相談の中でDVや虐待があるケースは想像以上に多い。早期離婚を望む当事者が、DVやモラハラをしてくる相手から、『共同親権にするなら離婚する』と言われ、受け入れてしまうことがないかを心配している」と話します。精神的なDVで客観的な証拠がないというケースもあるといいます。
また、離婚成立後にも共同親権の申し立てができるため、子どものためではなく、離婚相手に絡むために共同親権を申し立てるなど「つきまといのためのツール」が増えるのではないかという危惧もあります。
不安な人は1人で悩まず「まず弁護士や支援窓口に相談を」
こうした不安の声に対し、法務省の担当者は「まず離婚協議は、お互い対等な立場で話し合いが出来ることを前提としている。DV被害に遭っている方は無理に当事者だけで協議せずに早めに弁護士や支援窓口に相談してほしい」と話します。
DV被害に遭っている場合、都道府県の「配偶者暴力相談支援センター」に相談に行くと、一時保護や情報提供を受けられるほか、相談記録がDV被害の証拠になり得ます。また、無料で法律相談ができる「法テラス」では、一定の基準を満たすと弁護士の依頼料など費用を利息なしで立て替えてもらえる制度があります。
離婚事件に詳しいアディーレ法律事務所の近藤姫美弁護士は「精神的なDVなど依頼者が『証言しかない』と思い込んでいるケースでも、話を聞いていくと何らかの証拠を出せる場合がある」といいます。
また、そうでない場合にも「家庭裁判所の調査官調査を入れることで、調査官が父、母、子どもそれぞれに直接話を聞くと、お互いに何を話したかわからない状態で聞いても、証言が一致する部分が出てくる。この調査により暴力の事実などが引き出されることもあるし、嫌がらせ目的の場合はそのことが透けることもある」と指摘。家庭の事情によって出来ることはケースバイケースなので、離婚事件を多く取り扱う弁護士に相談するよう呼びかけています。