「食べるだけ」で脱炭素へ! MIXIに学ぶ、最短ルートで社員を動かす“タイパ重視”の意識変容マネジメント

2026-04-06 11:00

東京都と連携し、持続可能な社会の実現に向けた脱炭素アクション「HTT(電力をへらす・つくる・ためる)」を推進する株式会社MIXI。同社が2026年2月下旬に実施した社内啓発は、従来のような堅苦しい座学の勉強会ではなく、「社内食堂で限定の地産地消メニューを食べるだけ」。驚くほど効率的で、タイムパフォーマンス(タイパ)に優れたアプローチです。

このIT企業流の合理的かつ最短ルートで社員の意識を変えるマネジメント手法について、同社に直撃インタビューを実施。現場の熱量と確かな戦略を紐解きます。

勉強会は不要! 圧倒的タイパを誇る「食べるだけ」のアプローチ

環境問題の啓発といえば、座学の勉強会やeラーニングが一般的。しかし、多忙な業務を抱える社員に対して、一方的に知識を詰め込む手法は必ずしも効果的とは言えません。

AI化をはじめ、テクノロジーの進化に伴いIT企業の電力消費は増加の一途。だからこそ、社員に負担をかけないアプローチが求められます。そこでMIXIが目をつけたのが「社内食堂」でした。

今回の取り組みの背景について、MIXIの担当者は次のように話します。

「業務や作業のAI化も進んでいく中で、我々IT企業にとって電力消費は切っても切れないものになっています。しかし、環境課題や電力削減について、一様に従業員に呼びかけてもその効果は薄いように感じており、ハードルが低く、それでいて自発的に参加してもらうためにはどのような手段があるかを考えました。

そこで、普段の社内での必須行動である『昼食』に着目し、そこにアクションを付加する形で体験してもらえれば、社員は時間を割かずに済みます。環境配慮への『自分ごと化』の入り口に立ってもらえるのではないかと考え、実施に至りました」

「特別なことをしなくても、美味しいメニューを食べるだけ」。この圧倒的なハードルの低さが、社員を無意識のうちに環境アクションへと巻き込んでいきます。

なぜ「かぶ」なのか。鮮度と甘みが導く“自分事化”のフック

今回、社内食堂で提供された限定メニューの主役は、東京都清瀬市産の「かぶ」。数ある食材の中から「かぶ」が選ばれたのには、明確な理由が存在します。

「『春のキャベツ』や『夏の茄子』のように食材には旬の季節があります。『かぶ』は冬から春にかけて旬を迎え、栄養価が高いだけでなく、特に煮物として提供することで食材の糖度や鮮度感を分かりやすく伝えられると考えました。そして、今回提供した『かぶ』の産地である清瀬市は多数の農業エリアの中でも、我々のオフィスのある渋谷区へのアクセスが良く、産地直送という点でも、より新鮮な状態で入荷をすることができます。実際にメニューを食べた従業員からの反響も想像以上で、わずかな時間で完売し、社員同士のポジティブな会話を生み出すことに成功できたと考えています」

身近なエリアで作られた豊かな食材を「ダイレクトに体感してもらう」こと。この実感こそが、フードマイレージ削減という環境保全への理解を深める最短ルートです。

長友選手がオフィスに! 会話を生むクリエイティブ戦略

日々の業務に追われ、情報過多な環境に身を置くIT企業の社員たち。彼らの目を惹きつけるため、MIXIは立体的なコミュニケーション・デザインを展開します。グループ企業であるプロサッカーチーム「FC東京」の長友佑都選手や佐藤恵允選手を起用したポスターやデジタルサイネージをオフィス内に配置しました。

「同グループ企業であるクラブチーム、そして所属選手は従業員にとっても、シーズン中は特に注目し続けている存在であり、関心事のひとつと言えます。また、東京都が推進するHTTの取り組みと、東京を代表するクラブのひとつであるFC東京との接続はスムーズな印象を与えられたと考えています。

ポスターに選手を起用することで、啓蒙へのアテンションはもちろん、社員同士のコミュニケーションに関与させることができると考えました」

押し付けではなく、関心事と結びつける。自社の強みを最大限に活かした、IT企業ならではの鮮やかなクリエイティブ戦略が光ります。

「食べて終わり」にしない。可視化でつなぐ次なるアクション

社内食堂でのファーストアクションから、いかに次のステップへ進めるか。MIXIの狙いは、「食べる」ことをきっかけに、オフィスや自宅での具体的な節電(HTTアクション)へ接続すること。

「社員食堂での地産地消メニューの提供や社内の掲示物による啓蒙アクションによって、HTTの取り組み自体への従業員の認知や理解の第一歩は、うまく踏み出せたのではないかと考えています。今後についてはそれぞれのアクションによる電力削減量などを定量的に見せ、実感してもらうことで、継続性のある取り組みに繋げていきたいと考えています。具体的には、当社ではオフィスワークとリモートワークを融合した新しい働き方として『マーブルワークスタイル』を制度化していますが、エアコンやPCの使用はいずれの勤務形態でも不可欠です。それらの削減アクションを自宅でのリモートワークで定着させ、オフィスでも実行できるような仕掛けができればと考えています」

ただのイベントで終わらせず、データを可視化し、日常の業務フローに組み込む。これこそが持続可能なマネジメントの要です。

社内から社外へ。スポーツ観戦を巻き込むMIXIの挑戦

今回の成功体験を足掛かりに、MIXIの視野はすでに自社の枠を越えています。社内から社外へ。今後の展望について、担当者は力強く語ります。

「今回は社内での従業員を対象とした取り組みとなりましたが、今後は社外向けのアクションプランにも挑戦していけたらと考えています。具体的には、国際情勢の影響等もありひっ迫が予想される夏場の電力削減をテーマに、スポーツ観戦の場での発信力を活用しながら、個人から集団での電力消費の呼びかけ等を現在検討しています。社会情勢の変化もあり、ある意味で電力削減が身に染みて自分ごと化できやすい状況にもなりつつあると感じていますので、生活者ひとりひとりの行動でそれを緩和できる、環境アクションの輪を広げていければと考えています」

負担ゼロで意識を変える。新しい企業マネジメントの形

「環境問題」という壮大で難解なテーマを、「毎日のランチ」という最も身近な行動に落とし込む。MIXIの取り組みは、社員に負担を強いることなく、極めて自然な形で意識変容を促す画期的なマネジメントの成功例です。

タイパを重視し、自社のリソース(スポーツチームの起用や柔軟な働き方)をフル活用する。この「IT企業流・最短ルートの意識変容マネジメント」は、新たな理念やルールを社内に浸透させたいと考えるあらゆる企業にとって、強力なヒントとなるはずです。

行動を変えれば、意識が変わる。MIXIと東京都がタッグを組んだ「食べるだけの脱炭素」は、持続可能な社会へ向けた確かな一歩を刻んでいます。

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