「信頼はゼロ」アメリカ・イラン初の協議、トランプ大統領元側近のボルトン氏とイラン大使が語る停戦【報道特集】

アメリカとイランが初めて行った協議についてです。今回の協議を戦闘終結に結びつけられるかが焦点でしたが、停戦の動きをトランプ大統領の元側近や駐日イラン大使はどう見ているのでしょうか。
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アメリカとイランの停戦合意 早くも暗雲
巨大な炎と黒煙が立ち上る。
8日、アメリカとイランによる「2週間の停戦合意」が伝えられた矢先だった。
イスラエルは隣国レバノンに、今回の戦争が始まってから「最大規模」の攻撃を行った。
シーア派組織ヒズボラの軍事拠点など100か所が爆撃され、300人を超える人が死亡したと伝えられている。
イランは「レバノンへの攻撃停止」も合意に含まれるとしているが…
アメリカ・バンス副大統領(8日)
「イランは停戦合意にはレバノンも含まれていると考えているのだろうが、そんな合意をした覚えはない」
“一筋の光り”が差したかと思われた停戦合意だが、早くも暗雲が立ち込めている。
8日、東京の国会前では…
デモ参加者
「戦争反対!NO WAR! NO WAR!」
村瀬健介キャスター
「国会議事堂前、大規模な戦争反対のデモが起きています。これだけたくさんの人が集まっています。皆さん手にペンライトを持って、中には手書きのプラカードを用意している人もいます」
3万人が集まったとされるデモ。様々なデザインのプラカードを手に「戦争反対」などと訴える人たち。「初めてデモに参加した」という人が多くいた。
デモ参加者
「これから戦争に向かっていくのかと考えたら、それだけは嫌だという気持ちを伝えたかった。日本もアメリカの属国ではなくて、ひとつの国なので、もっと対等な関係を築いて欲しい」
デモ参加者
「全然、全く来たことがなくて。自分がデモに行くとは思ってもいなかった。(Q.造花は自分で作った?)はい。戦争反対と言うと『お花畑』とSNSで言われるが、お花畑の方が良いと思って作った」
デモ参加者
「もちろん(アメリカは)同盟国だが、やっぱり国際法に違反しているということは、言わないといけない。とにかくまずは戦争をやめてもらう。そこに注力してほしい」
デモは国会前だけではない。
デモ参加者
「戦争反対!」
この日のデモは47の全都道府県に広がり、戦争反対の声は全国から上がっている。
札幌のデモ参加者
「何があっても戦争によって人が命を落とすことがあってはならない。できるだけ軍拡とか攻撃ではなく、話し合いで紛争を解決していかなければいけない」
アメリカとイラン 停戦合意の背景は
トランプ大統領のSNS
「イランへの攻撃を2週間停止することに同意した。これは双方による停戦だ」
停戦に同意した一方でトランプ大統領は、その直前まで、たびたびイランを口汚く威嚇していた。
国民向けに行った演説では…
トランプ大統領(1日)
「今後2週間から3週間のうちにイランに強烈な打撃を与え、本来いるべき石器時代へと引き戻してやる」
ホルムズ海峡の封鎖についても…
トランプ大統領のSNS(4日・5日)
「あらゆる地獄がイランに降り注ぐまで、あと48時間だ」
「くそったれの海峡を開けろ、ろくでなしどもめ」
キリスト教の復活祭の日にホワイトハウスで行われた恒例のイベント。和やかな雰囲気の中、「イラン攻撃は戦争犯罪ではないか」と問われると…
トランプ大統領
「戦争犯罪が何か分かるか?いかれた国に核兵器を持たせることだよ」
この直後に臨んだ会見ではイランに対して、再び、あの言葉を口にした。
トランプ大統領
「7日午後8時までイランには猶予を与えている。それを過ぎれば奴らは橋も発電所も失う。石器時代だ」
では、なぜ停戦合意に至ったのか。その背景には「トランプ政権の焦りがある」と、アメリカ政治に詳しい同志社大学の三牧聖子教授は指摘する。
同志社大学(米政治・外交)三牧聖子教授
「(トランプ大統領の)戦争を巡る発言に、国際社会はもちろん、アメリカ国内からも懸念されるような発言が相次いでいた。アメリカ市民はずっと物価高問題を争点にしてきて、トランプ大統領も物価高を解決するということで2024年、大統領選を勝った」
「大きい要因としては(中間)選挙があるこの年にズルズル戦争を続けて、今回、世界経済がこれだけ動揺しているわけですので、戦争を続けている限り、物価高問題を解決しようがないと気づいて、やはり(中間)選挙を見据えてどこかで出口を見つけなければならないと、トランプ大統領自身も感じ始めていた」
「強硬な発言をせざるを得ないほど、実は停戦に向けて、アメリカ側もトランプ大統領側も焦りがあった」
停戦を巡りアメリカはイランから10項目の提案をされたというが、「イランのウラン濃縮活動の容認」「レバノンを含む全戦線で戦闘を終結」など、違反があったとイランは主張している。
同志社大学(米政治・外交)三牧教授
「トランプ政権としても今回の軍事行動は何のためだったのか。イランの核開発の脅威を断つんだ。根本から断つんだ、そのためには軍事行動が必要なんだということで軍事行動を始めていますので、(イランの)このウラン濃縮に関しては、アメリカ側としては勝利というふうな合意にするためには、ゼロ濃縮ということにこだわっていく可能性がある。イランとしてもそこは譲れないということになれば、この一つの項目を巡っても、なかなか(停戦)合意は難しい」
停戦合意発表の後、レバノンに最大規模の攻撃を行ったイスラエルのネタニヤフ首相は…
イスラエル・ネタニヤフ首相
「イランとの一時的な停戦にヒズボラを含めないよう強く主張した」
イランのアラグチ外相は、こう釘を刺した。
イラン・アラグチ外相のSNSより(9日)
「アメリカは停戦するか、イスラエルを通した戦争を続けるか、選ばなければならない」
イラン、そして交渉を仲介するパキスタンは、停戦合意にレバノンへの戦闘終結も「含まれる」としているが…
同志社大学(米政治・外交)三牧教授
「アメリカもレバノンが(停戦の条件に)入るということは認識していた。しかし、ネタニヤフ首相がトランプ大統領に電話した。トランプ大統領に働きかけた後に、アメリカ側がレバノンは対象外だと言い出した」
──なぜトランプ大統領は、ネタニヤフ首相の言うことをそこまで聞くのか?
同志社大学(米政治・外交) 三牧教授
「アメリカ国内には福音派と、非常にイスラエルを重視する、そして親イスラエル政策をトランプ大統領がとることによって、福音派はじめ親イスラエルの集団の票を固めることができる」
「停戦するとしても一時的なものにとどめて、将来イランやヒズボラ、レバノンを攻撃する余地を残しておきたいイスラエルを本当に抑え込んで、持続的な停戦合意をイランとの間で実現できるかというのは、そんなに期待が、大丈夫だと言えるような段階ではないと思う」
トランプ大統領元側近のボルトン氏が語る停戦
今回の停戦をトランプ氏の元側近はどう見るのか。
ジョン・ボルトン氏。第1次トランプ政権で、国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたが、外交方針の違いが浮き彫りとなり政権を離れた。
停戦翌日の9日、報道特集の取材に応じた。
元大統領補佐官 ボルトン氏
「トランプ氏は、こうした決定(停戦合意)をその瞬間の思い付きで下す。数人の顧問がいるだろうが、長期的な戦略や分析から決めているわけではない」
4月2日、アメリカ陸軍制服組のトップ、ランディ・ジョージ参謀総長が辞任したが、CBSテレビは「政策を実行できる人物への交代を求めた更迭だ」と報じている。
ボルトン氏は「トランプ政権下では、意に沿わない人物が次々と更迭されていき、慎重な議論がされていない」と指摘する。
元大統領補佐官 ボルトン氏
「停戦やトランプ氏の発言がもたらす影響が、ホワイトハウスで十分に検討されたとは思えない。意思決定のあり方として適切ではなく、まさにいま、こうした状況が明るみに出ている」
──トランプ大統領は、この戦いから早く手を引きたいと考えているのか?
元大統領補佐官 ボルトン氏
「彼は不安に駆られ、進むべき道を見失っているのだと思う。そもそも最初からきちんとした道筋などなかったが、彼は市場を見て原油価格の上昇や株価の下落を食い止めようとしているだけ。今回の決定において、国家安全保障会議が役割を果たした形跡はない。第一次トランプ政権でもそうだったが、彼は執務室に数人だけを集めて座り、思い付きを言っては、部下が実行するだけだ」
ボルトン氏は、トランプ氏が側近だけに留まらず、「同盟国などにも同じような姿勢で臨んでいる」と批判した。
元大統領補佐官 ボルトン氏
「NATOだけでなく中東の湾岸諸国、日本、韓国、台湾、オーストラリアといった同盟国などに相談はしなかった。これは“不意打ち”そのものだ」
──トランプ大統領は、この戦争を始めた時に戦略的な計画を持っていたのか?
元大統領補佐官 ボルトン氏
「彼は戦略的な計画を立てたことがない。それが大きな問題点だ」
対イラン強硬派として知られるボルトン氏は、イランの現政権と和平合意に向かうことへの危機感を示した。
元大統領補佐官 ボルトン氏
「イランの現政権は国民のためではなく、体制維持のための武器開発に莫大な資金を投じてきた。体制そのものが存続すれば、破壊された施設を再建し、“核兵器の保有”に突き進むだろう」
──トランプ氏にアドバイスできる立場にいたら、どのような助言をするか?
元大統領補佐官 ボルトン氏
「最も重要なのは、イラン国内の反体制派と連携することだ。(反対制派には)資金・通信・そして武器が必要だ。これはアメリカが提供することはできるが、もう遅すぎる。軍事作戦が始まる何か月も、何か月も前からやっておくべきだった」
一方、駐日イラン大使が取材に応じ「すでに停戦は崩壊寸前だ」とイラン側の認識を明らかにした。
駐日イラン大使語る「停戦は崩壊寸前」
停戦合意が発表された翌日、駐日イラン大使が取材に応じた。
──現時点(9日)で停戦は維持されているのか?
セアダット駐日イラン大使
「現時点では停戦は維持されているが、崩壊寸前だ。私たちは合意を破っていない。アメリカの同盟国である“壊し屋”のせいだ」
大使は「壊し屋」という言葉を使って、イスラエルがレバノンを攻撃して「合意そのものを壊そうとした」と非難した。
セアダット駐日イラン大使
「アメリカの反応はどうだったのかというと、『レバノンは停戦合意に含まれない』と言った。あえて言うのであれば『信頼はゼロ』です。侵略が再び始まれば、私たちは躊躇なく自衛権を行使する。アメリカは停戦合意を崩壊の危険に晒している“壊し屋”の侵略行為をやめさせることができるはずだ」
イラン側の「ウラン濃縮」と「ミサイル計画」は、依然、アメリカ側の考えとは、大きな隔たりがあることも浮き彫りになった。
──ウラン濃縮の権利を主張し続ける?
セアダット駐日イラン大使
「もちろん」
──ミサイル計画の制限を交渉する意思は?
セアダット駐日イラン大使
「ないない、あり得ない。我々の軍事能力は、交渉の対象にならない。決して妥協しない」
「崩壊寸前」の停戦。「妥協しない」とする交渉。しかし大使が完全に否定しなかったのが、すでに濃縮されたウランを引き渡すかどうかという点だった。
ホワイトハウスのレビット報道官は8日、「イランが濃縮ウランを引き渡す意向を示している」と発表した。
これはトランプ氏の“悲願のひとつ”でもあったが…
セアダット駐日イラン大使
「交渉戦術の一環なのかもしれないが、トランプ政権がただそう言っているだけ。交渉が始まる前にそんなことを言うべきではない。私たちはメディアを通じて交渉はせず、会談の場でのみ交渉をする」
一方、停戦が発表された当日、高市総理はイランのペゼシュキアン大統領と電話会談に臨んだ。「最重要事項」として伝えたのが、「ホルムズ海峡の航行の安全確保」だという。
高市早苗総理大臣
「最も重要なことは、ホルムズ海峡の航行の安全確保を含む、事態の鎮静化が実際に図られるということ。『外交を通じて最終的な合意に早期に至るということを期待している』と伝えた」
セアダット大使は“電話会談の成果”として「地域に平和と安定を取り戻して利益を享受できるよう対処することで一致した」と強調した。
セアダット駐日イラン大使
「海峡は私たちの生命線だ。自分の首を絞めるような真似はしない」
「我が国がホルムズ海峡にどれくらい依存しているかわかりますか。石油の輸出だけでなく、食料の輸出入も含めて、依存度は日本よりも遥かに高い」
──2週間の停戦期間中、イラン政府は、自由に通航できるよう許可するのか?
セアダット駐日イラン大使
「紛争地帯では我々の軍が、日本などの船舶を誤って標的としないよう、船についての情報を受け取り、『調整』する必要がある。この『調整』を通じて、すでにインド、パキスタン、トルコ、フランス、ドイツなどの船が、海峡を通過した。責任を問うべき相手は侵略者だ。戦争を始めた側の人だ。戦争で世界経済とエネルギーを人質にとった者だ。それは私たちではない」