若年性認知症の人たちが手作りパンを子ども食堂に提供。埼玉県三芳町のデイサービス

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2026-05-19 18:00
若年性認知症の人たちが手作りパンを子ども食堂に提供。埼玉県三芳町のデイサービス

できること、得意なことを

埼玉県三芳町の社会福祉協議会が運営するデイサービスセンター「けやきの家」。毎週金曜のお昼過ぎになると、65歳未満で発症した「若年性認知症」のデイサービスの利用者が集まります。

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デイサービスでは10年前から、夕方に開かれる「子ども食堂」に来る子供たちのため、利用者が料理を作っています。ただ、新型コロナの流行後は感染リスクを低くし、安心して楽しんでもらうため、家族一組を毎週招待してパンを中心にした料理を作って提供しています。

取材した日のメインは、ウールロールパンの中に、様々な具を入れた料理です。それに、サラダ、スープ、食パンを使った甘いデザート。この日は60代前後の4人の利用者が、スタッフや地域のボランティア一人ずつと組んで、自分のできること、得意なことを分担して、取り掛かりました。

メインのパンを担当する利用者の男性の掛け声で作業が始まり、男性は小麦粉をこねはじめました。この男性を含め、ほとんどの利用者は、デイサービスに来るようになるまでは、パンを作った経験はなかったということです。ウールロールパンの生地が出来たら、一次発酵させ、形を作り、中に具を入れて、包んでゆきます。

この日は、ソーセージ、コーンとチーズ、それに高菜の漬物。一緒に組んだボランティアの女性と話し合いながら、ご自身のペースで、着実に作ってゆきます。他の利用者も、食パンの生地をこねたり、サラダの野菜を切ったり。この日招待した家族が来る時間を目指して、作業は進みます。

「遊んでいる場合じゃないんだ」

「けやきの家」の介護保険統括管理者で、このデイサービスを始めた時から担当している内城一人さんに話を聞きました。デイサービスを始める5年前、当時56歳の男性の利用者がいたそうですが、認知症の症状が進行するにつれ、いらだちや不安、不可解な行動が増え、高齢者と一緒のデイサービスの活動中、逃げるように外に出ていくことが何度もあったということです。

内城さんはいつも後ろからそっと付き添っていましたが、ある日、この利用者が外に出てゆき、30分ほどして戻ってきた時、怒ったように「俺はこんなところで遊んでる場合じゃないんだ」とか、「働きに行かなきゃ」とか「家族や妻を守らなきゃ」と言ったそうです。

内城さんは「その時に、若年性認知症の方々は確かに、一般的なデイサービスでレクリエーション、ゲームをしたり歌を歌ったりして遊んでいる場合じゃ本当にないんだなっていうことを理解したというか、私自身もはっとして、けやきの家の中で何かできることはないかなと考えるようになりました」と話します。

働き盛りの世代で発症し、家族や社会の役に立ちたい、という気持ちが強い若年性認知症の方がいるということに気付いたということです。

そこで、内城さんは「若年性認知症の人が主役となって、人や地域の役に立つ活動をする」ということで2016年、けやきの家で「子ども食堂」を開き、そのための料理を作るデイサービスが始まりました。

働く喜びとつながる温かさ

取材した日の午後6時過ぎ、パンが焼け、他の料理も完成し、招待された女の子とお母さんがやってきました。ウェルカムドリンクから、スープ、サラダ、メインのパンの料理、最後のデザートまで、利用者が組んでいるスタッフ、ボランティアと一緒に代わるがわる、配膳をします。 

この日招待されたお二人は、以前の形の子ども食堂や学習支援などを通じて、けやきの家の方々とは顔なじみ。「大きくなったね」といった会話がはずみます。そして、ちょっとしたお祝い事が最近あったそうなので、食べている頃合いを見て、1人のスタッフが「きょうはですね、みんなから元気になれる歌をプレゼントしたいと思います」と声をかけ、全員で「世界に一つだけの花」を歌いました。

女の子に話を聞くと「ここで作ってくださるパンとか、心がこもってて、全部すごい美味しいし、歌もすごい感動して、きょうはめっちゃ嬉しいです」と話します。お母さんは「この場で、社会とつながりを提供してもらっています。みんなで食事を囲むことにとても温かさを感じます」と話していました。

内城さんは「いつもこの場が、利用者ご本人の中でやりがいになっているのを感じます」と話します。人それぞれ得意なこと、できることはあり、また状況も変わるので、金曜日のパン作りのほか、地元農家が提供する野菜を販売したり、一人暮らしの高齢者の家の庭掃除といった作業もあり、どれも作業の対価として謝礼が支払われています。

10年続いてきた、埼玉県三芳町のデイサービスセンター「けやきの家」の取り組みは「認知症と付き合いながら、地域で暮らしてゆく」、ひとつのモデルケースになり得るのかもしれません。

(TBSラジオ「人権TODAY」担当: 崎山敏也記者)

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