「洪水警報」が廃止? 5月29日から変わる新たな防災気象情報とは

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-05-28 19:30
「洪水警報」が廃止? 5月29日から変わる新たな防災気象情報とは

新しい防災気象情報の運用が始まる。「大雨」「河川の氾濫(はんらん)」「土砂災害」「高潮」という気象災害に対して発表される注意報や警報の仕組みが、法律上の正式運用として5月29日(金)午前0時から、大きく変わる。

気象庁が設置した防災気象情報に関する検討会に委員・副座長として関わった静岡大学防災総合センター教授の牛山素行さんと、長年気象情報と防災報道に携わってきた気象予報士の長谷部愛さんが、新たな防災気象情報について解説する。

(TBSラジオ「荻上チキ・Session」2026年5月27日放送「新たにスタートする防災気象情報。何がどう変わるのか?」より)

「1、2年に1回の改訂で、現場の運用が追いつかなかった」

そもそも、なぜ今回の改訂が必要だったのか。

牛山さんは「まず押さえておきたいのは、避難行動を直接呼びかける情報は市町村が出す避難指示などの避難情報であり、今回改訂される防災気象情報は気象庁が発表するもので、気象状況が激しくなっていることを告げる情報だということです」と前置きした上で、議論の経緯を語った。

避難情報は2010年代の半ばから2020年代の初めにかけて、大きな災害が起きるたびに繰り返し改訂されてきた。「ほんとに1、2年に1回ぐらいの割合で大きく変わるという状況があった。現場レベルで運用が追いつかないし、周知も全然図られないままに次の改訂を迎えることへの批判があった」と牛山さんは振り返る。

2021年の改訂を機に、避難情報側の頻繁な改訂にようやく歯止めがかかった。そして2022年初めごろから、落ち着いて防災気象情報全体を見通した議論が行えるようになったのだという。

「特別警報」「危険警報」「警報」の違いとは

今回の改訂の核心は、「大雨」「河川の氾濫」「土砂災害」「高潮」というすべての情報にレベル1から5の数字を付け、さらにレベル4相当には「危険警報」という統一名称を新設した点にある。

気象予報士の長谷部さんは「最大のポイントは、危険警報という名前が加わること」と整理する。体系はこうだ。レベル5が「特別警報」、レベル4が「危険警報」、レベル3が「警報」となる。

ここで注意が必要なのは、レベル5と4の間に「大きな隔たり」があることだ。

牛山さんは強調する。「レベル5(特別警報)というのは、もうなんらかの災害が起こってしまった、あるいはほぼ確実に起こったろうというときに出される情報です。レベル5があるんだからまだ4だな、と思われると、これは非常にまずい」

長谷部さんも「レベル4(危険警報)のうちに避難完了なんだよということを、伝える側も受ける側も意識してもらいたい」と語気を強める。

実際に屋外での行動が危険である現実は、牛山さんの調査データが裏付けている。「洪水や土砂災害などで亡くなる方のほぼ半数は家の外で亡くなっている。状況がものすごく悪化したときには、むやみに動かない、なるべく距離を少なくして近くで何とかするということが重要になってくる」。

「洪水警報」はなぜ消えるのか

今回の変更でもう一つ注目されるのが、長年使われてきた「洪水警報」の廃止だ。

ただし牛山さんは「洪水に関する情報がなくなるわけではない」と言う。比較的大きな河川の氾濫については、新たに「氾濫警報」という気象庁発表の警報として整理される。これまで河川管理者が出していた「〇〇川氾濫危険情報」が気象庁の警報のひとつになることで、メディアでも大雨警報と同様に扱われるようになる見通しだ。

「これまで使われてきた『洪水』と今回の『氾濫』はほぼ同じ意味。でも検討会のアンケートでは『氾濫』のほうがイメージしやすいという意見が多かった。それが氾濫警報という名前になった経緯です」と牛山さんは明かす。

一方で課題もある。川は複数の自治体にまたがっており、荒川、広瀬川、中川など、同じ川の名前が全国各地に存在する。長谷部さんは「都道府県名や市町村名をつけ、ランドマーク的なものも伝えながら、イメージが湧くようにしていきたい」と語る。

震度と同じように、体感で覚える日を目指して

レベル制の導入によって気象庁が目指すのは、地震の震度と同じように、数字を聞いただけでおおよその状況が直感的に浮かぶ社会だ。

ただし長谷部さんは「1年や2年では無理」と正直に言う。「小さい頃から体験してきて、10年、20年かけて培っていくもの。それがここから始まるんだなという、重たい気持ちがある」

牛山さんは「危険性の度合いを言葉で表現するのはもう無理だと、議論を通じて感じた。数字と色の対応関係をなるべく社会に浸透させていくことが重要」と述べた。

レベルには色も紐付けられている。5は黒、4は紫。色覚に障害のある方でも識別できるよう配慮したうえで決められており、「これからは変えてはいけないもの」だと牛山さんは言い切る。

キキクルとハザードマップの確認を

新しい情報体系を使いこなすために、長谷部さんは最後にこう伝えた。

「まずレベル5は災害が起きている、または行動するのが手遅れな場合がある。レベル4の危険警報のうちに避難完了、レベル3は高齢者や妊婦など要配慮者が行動を始めるタイミング、これをまず覚えてください」

さらに1点、見落とされがちな注意点を加えた。「土砂災害の警報が出た場合、最悪1時間で次の危険警報に繰り上がる基準値になっています。ここだけは特に気をつけてください」

そして、リアルタイムの情報だけでなく、平時からのハザードマップ確認の重要性を牛山さんも強調した。「洪水や土砂災害で被災した方のほぼ9割方は、ハザードマップで危険性が示されているか、地形的に危険性があるところで被災している。まずどこでどんな危険性があるかを知ることが先決です」

新しい防災気象情報の運用は始まった。だが「定着」はこれからの長い道のりだ。数字と色が体感として刻まれていく日まで、伝える側も受け取る側も、この情報と付き合い続けることになる。

(TBSラジオ「荻上チキ・Session」2026年5月27日放送「新たにスタートする防災気象情報。何がどう変わるのか?」より)

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