デマ・誹謗中傷が奪った命「このままでは社会が壊れる」誹謗中傷と闘い続ける県議【報道特集】

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2026-06-13 06:30
デマ・誹謗中傷が奪った命「このままでは社会が壊れる」誹謗中傷と闘い続ける県議【報道特集】

選挙のたびに繰り返されるデマや誹謗中傷。そのきっかけとなったのが2024年の兵庫県知事選挙です。

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今なお膨大な数の誹謗中傷と闘い続ける県議会議員がいます。彼を突き動かしているのは「このままでは社会が壊れるのではないか」という強い危機感です。

デマ・誹謗中傷が奪った命「このままでは社会が壊れる」

選挙期間中のSNSを使ったデマや誹謗中傷を防ぐための法整備について、いま、与野党が協議を続けている。

自民党 逢沢一郎衆院議員
「ネット空間SNSから誹謗中傷でありますとか、あるいはフェイク、偽情報、誤情報、そういったものを排除して政治や選挙の健全性・公正さを確保していく」

中道改革連合 落合貴之衆院議員
「わざと偽情報・誤情報を流しちゃいけないということも全く法律に規定されていないので。そういう当たり前のことぐらいは、法律の文言に入れましょうという話をしています」

嘘や誤った情報が拡散することを防ぐため、政治系切り抜き動画について選挙期間中の収益化の停止も議論になっている。

大きなきっかけとなったのが、2024年11月の兵庫県知事選挙だ。

NHK党の立花孝志党首が自ら出馬して斎藤知事を支援するという異例の2馬力選挙を展開した。その標的となったのは…

NHK党 立花孝志党首
「丸尾とか竹内とか、いじめの原則でいじめるときっていっぱいいじめたらだめなんですよ。誰か一人にいくんですよ」(2024年11月)

斎藤知事のパワハラ疑惑などを調査する、兵庫県議会百条委員会の委員を務めていた二人の県議だ。

一人は竹内英明元県議。立花党首やその支持者からSNSで誹謗中傷をうけ、2025年1月自ら命を絶った。

立花党首
「竹内県議めっちゃやばいね。警察の取り調べを受けているのはたぶん間違いない」(2024年12月)
「竹内元県議会議員どうも明日逮捕される予定だったそうです」(2025年1月)
「そもそも政治家が中傷されたぐらいで死ぬなボケ」(2025年3月)

2025年11月、竹内元県議の名誉を毀損したとして、立花党首は逮捕・起訴された。

竹内元県議の妻
「なかったことにはできないし、忘れて生活できないじゃないですか」

竹内元県議の妻は、今も夫や自分に対する誹謗中傷が続いていることに苦しんでいる。

竹内元県議の妻
「なんでこうなってしまったのか、まだその答えが見つからなくって。その後も亡くなってもずっとまた攻撃を受け続けて、攻め続けられて、声を上げられずに苦しんでいる人がいて、それを放置している」

そして、もう一人が丸尾牧県議だ。今も膨大な数の誹謗中傷と戦い続けている。

この日も裁判所に向かっていた。

兵庫県 丸尾牧県議
「大きな課題を背負ったというか、非常に大きな問題だと思いますので、立花さんの動画を拡散した人たちの責任を問う。また新たな仕事が始まったな」

「責任問う」誹謗中傷との闘い

斎藤知事の再選後、丸尾県議への誹謗中傷が激しさを増した。

SNS上で匿名のアカウントから大量の投稿が…

匿名の投稿(現在は削除)
「大ボラ吹き」
「斎藤おろしの黒幕の一人」

SNS上だけでなく、匿名の脅迫電話や嫌がらせが毎日のように続いた。

録音された留守電
「県民や、死んでしまえ、ぼけ、あほ」
「丸尾、いい加減にせえよ、はよ辞めろ、ばかやろう」

村瀬キャスター
「これは参りますね」

丸尾県議
「そう、これで精神がやられちゃいますね」

他にも身に覚えのない商品が届いたり、保険の契約を勝手に結ばれたり様々な嫌がらせを受けた。

村瀬キャスター
「群集化したエネルギーを特定のターゲットに向けられる恐怖を、丸尾さんは感じられたんじゃないですか?」

丸尾県議
「信じられない状況にいきなり陥ってしまって、どう手立てしたらいいのかもわからないし。デマ、切り取り動画がバンバン出されて殴られ続けているという感覚ですよね、無抵抗のままで」

丸尾県議の裁判を担当する石森雄一郎弁護士も…

石森雄一郎弁護士
「昔の誹謗中傷というか、そういったものとはちょっとレベルが違って、誹謗中傷の言葉がイナゴのように集団で襲ってくるというような特徴もあると思うんですよ」

丸尾県議は、投稿者を特定するため100件を超える「開示請求」を裁判所に行っている。

そのほとんどがXやYouTubeへの投稿だ。特定できた投稿者の1人は、事実とは違うこんな書き込みをしていた。

2024年10月15日の投稿(現在は削除)
「既得権益に溺れた丸尾まき」
「尼崎の駅前開発についても、かなりの裏金を得たらしいと聞きました」

この人物に損害賠償を求めるため、開示請求を担当する弁護士が電話をかけると…

特定された投稿者たちの主張

笠原一浩弁護士
「裁判所に対して発信者情報開示請求を行いまして」

相手
「本人死亡しているんです」

笠原弁護士
「え、本人死亡してる?そうしましたら私の方で調査します」

「投稿した人物は死亡した」と当初は主張した。その後、本人であると認めたものの損害賠償の支払いを拒否。このため丸尾県議は裁判に踏み切った。

さらに…

この日、丸尾県議は亡くなった竹内元県議の妻を訪ねた。

竹内元県議と丸尾県議を誹謗中傷してきたアカウント。「斎藤知事を貶めた主犯格」と題した動画を掲載していた。

丸尾県議が開示請求を行うと、投稿者からこんな手紙が届いた。

投稿者からの手紙
「私自身YouTubeの収入で家族を支えてきましたが、現在は生活面でも困難が続いており、別の収入手段を摸索しております。該当動画の削除はもちろんの事、必要であれば訂正や謝罪の内容を動画等で公開することも検討しております。今後事実に基づかない内容については一切動画を公開しないことをここに誓約いたします。穏便にご対応いただきますよう心よりお願い申し上げます」

ところが…

丸尾県議
「この件に関しては、竹内さんのご遺族にも謝罪してほしいということで、連絡入れてですね。それから返事待ちの状態になったんですけど、その後もう返事ナシなんですよ」

一部の動画は削除されたものの、竹内元県議を誹謗中傷する動画は今もアップされている。

竹内元県議の妻
「これだけ問題が深刻になっている。それでもなお、そういうことをするっていうのは…亡くなった人間をなんで中傷できるんでしょうね」

丸尾県議
「難しいのは、まさにルールがきちんと整ってなくて、やった者勝ちみたいな」

投稿者の特定 法制度上の高いハードル

投稿者たちに誹謗中傷をやめさせることの難しさ。丸尾県議はそもそも投稿者を特定する作業自体に、法制度上の高いハードルがあると訴える。

丸尾県議
「なかなか相手先の氏名住所までたどり着けない」

丸尾県議は100件を超える開示請求をしたが、その結果、氏名まで特定できたのは5人だけ。一体どういうことなのか。

発信者を特定するためには、一般的に裁判所に対し2段階の開示請求が必要とされる。

被害者はプラットフォームに対し、どのプロバイダが使われたか開示請求をする。丸尾県議の場合、ここまではかなりの数が開示されている。それが判明したら今度はプロバイダに発信者の住所や氏名などの開示を求める。

ところが、この2段階の開示請求の間にプロバイダの通信記録の保存期間が過ぎてしまい、特定できないケースが相次いでいるのだ。

例えば、2024年11月2日に投稿されたYouTube映像。

丸尾県議は2025年9月18日にYouTube側に開示請求をしたが、プロバイダが判明したのは2026年1月9日、約4か月後だった。

結局、このプロバイダからは通信記録の保存期間は93日、約3か月しかなく、すでに消去されていると回答があった。

丸尾県議
「やってみてこれだけ時間かかるというのがわかったという部分もありますけど。ただ入口でそれがわかってたら、最初からやはり責任を問うことを断念してた可能性がありますよね」

そもそも裁判所が「開示命令」を出しても、アメリカに本社を持つXなどのプラットフォームはすみやかに応じないケースもあるという。

その場合、強制的に開示命令に従わせる手続きを裁判所にとる必要があり、さらに時間がかかる。

丸尾県議
「それこそ被害者の立場で言うと、ずっと心理的な負担が続いてる状況ですよね。終わりのないものと闘って、結論がまだまだ見えないという不安感と、ちょっとストレスと様々な思いがありますね」

この1年半で開示請求にかかった弁護士費用は600万円にものぼる。もともと政治家への誹謗中傷は表現の自由との兼ね合いが議論になりやすい。

それでも費用と労力をかけて投稿者の特定を進めるのは何故なのか。

丸尾県議
「公職者だからもちろん一定の批判は当然許容しないといけない。ただそこに虚偽が含まれると、一般の人以上にその攻撃は厳しくなりますから。一つ一つきちんと責任を問うていくことが必要なんだろうな、それが再発防止に繋がるんだろうなという風に強く思ったのは間違いない」

SNSの誹謗中傷問題に取り組み、これまで1000件以上の開示請求を行ってきた清水陽平弁護士は、制度の問題点をこう指摘する。

清水陽平弁護士
「プロバイダの方に開示請求したけれども、『ログ(通信記録)の特定ができませんでした』と言われるケースも一定程度あるというのが現状です。対応が遅いがゆえに間に合わないというケースは、ほとんど外国の会社。平気で半年、1年後に開示してくる、それぐらい遅い」

村瀬キャスター
「被害者側からしたら、とても重要な時間ですよね」

清水弁護士
「そこが一番のネックになっているところかなと思います。国内の事業者だと、そこまでかかることはないんですよね。2~3週間、かかっても1か月以内には大体回答してくれるので、あまり問題になることはないと思うんですけど」

2021年の法改正によって手続きの一部が簡略化されたが、開示のハードルは依然高いままだと話す。

清水弁護士
「プラットフォーマー側の善意に頼っているような制度に現実的にはなっているという形なので、対応までの期間に制限をつけて、それに対して対応しなければ罰則なり過料なりというところまでやらないと、特に海外の事業者は対応しないんじゃないか。そういうところ、何かしら動かすためのサンクション(制裁)をつけるということは、重要なんじゃないかなというふうに思います」

立花党首の演説「デマ」と認定 日本社会に希望を与える判決

石森雄一郎弁護士
「立花孝志がデマを言ったということが完全に認められました。完全勝訴です」

2026年1月、画期的な判決が言い渡された。

丸尾牧県議
「こういうことが二度と起こらないようにということで、一つの警鐘になる判決でしょう」

丸尾県議が立花党首を訴えた裁判。兵庫県知事選で行った演説の内容がデマだったとして、賠償が命じられた。

立花党首の演説動画(現在は削除)
「実は丸尾とかが書いたんですって、嘘を。あの告発文書を書いたのは竹内だけじゃなくてこの丸尾牧も書いとるんです。丸尾いつでもかかってこいよ」(2024年11月2日)

斎藤知事のパワハラなどを告発した文書に、丸尾県議と竹内元県議が関わっていたというデマだった。

この演説の動画は立花党首の支持者たちによってSNSで拡散され、丸尾県議は激しい誹謗中傷を受けた。

丸尾牧県議
「かなり攻撃的なコメントがたくさん残されてて、多分この中には命を狙うんだとか、そんなこともやっぱ想像してしまいます、そんな勢いでいろんな発信がこっちに届いてるということでは、まさに恐怖ですね」

裁判で立花党首は、当時真実だと信じたことには相当の理由があったと主張した。

だが裁判所は…

裁判所
「被告は虚偽内容であることを知りつつ、あえて本件街頭演説を行ったものと認められるから、デマを用いてでも世論を誘導する意図でこれを行ったものと評さざるを得ない」
「民主制の過程の根幹である選挙活動において、虚偽の内容を流布し、有権者の判断を歪めることを辞さない態度が認められるから、誠に悪質と言わざるを得ない」

こう述べて、立花党首に慰謝料など330万円の支払いを命じた。

判決の直後、丸尾県議が電話をかけたのは亡くなった竹内元県議の妻だ。

丸尾県議
「告発文書のお話、竹内さんと一緒に作成したという話だったから、それがデマだと認定してもらって」

竹内元県議の妻
「何より夫が喜んでいると思います。報告しておきます」

丸尾県議の代理人を務める石森弁護士は、判決が立花党首の演説について事実誤認ではなく、デマと表現したことに驚いたと話す。

石森雄一郎弁護士
「書かれ方として事実誤認っていう風に書かれる可能性もあるわけですよ。これはデマですというのと、まず意味合いが全然違うわけです。今回はっきりデマですと書かれただけじゃなくて、それを世論を誘導するためにやった。そこまで書かれているんですよ。広く日本社会そのものに、希望を与える判決になったんじゃないかなと思います」

立花党首は判決を不服として控訴した。

兵庫県知事選挙が大きなきっかけとなった、選挙戦でのSNSの誹謗中傷問題。

その責任の所在が問われている。

丸尾県議
「やはり目の前で被害者が出たということも含めて、このままいくと、社会は壊れるんじゃないかなという、非常に強い危機感を持っています。きちんと責任を取ってもらう、けじめをつけていくということが、まさにXだとかYouTubeだとか、SNSの中でのそのルール作りに必ず繋がるとは思いますので。そこはやはり、逃げ得は許さないと、きちんと最後まで責任は問うていきたいなとは思います」

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