食料品の消費税減税、2年後、一体どうするつもりか【播摩卓士の経済コラム】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-06-21 07:30
食料品の消費税減税、2年後、一体どうするつもりか【播摩卓士の経済コラム】

食料品への消費税を、来年4月から2年間、1%に引き下げるという案が、次第に現実味を帯びてきました。高市総理大臣は、取りまとめ役の自民党の小野寺税制調査会長に対し、各党との調整を進めるよう指示しました。一方、そのための財源や、2年後に8%に戻すことについての議論は、全く進んでいません。

【画像でみる】食料品の消費税減税、2年後、一体どうするつもりか 「ゼロでも1でも、経済への影響は大差ない」

小野寺氏が議長案を総理に説明

高市総理大臣は、19日、超党派の「社会保障をめぐる国民会議」の実務者会議の議長を務める、自民党の小野寺税調会長と会談しました。小野寺氏は、(1)27年4月から食料品の消費税を2年間に限って1%に引き下げる、(2)残る1%分に相当する年6000億円の給付を組み合わせて実施するという、自らの案などを説明しました。

これに対し高市総理は、「引き続きしっかりと各党との調整を進めてほしい」と指示したということです。高市総理はすでに、フランスでのG7サミットでの記者会見で、「迅速性と十分性は確保して欲しい」と、小野寺議長案への理解をにじませており、月内の中間とりまとめを念頭に、議論が進みそうです。

7%減税と1%分給付で「実質ゼロ」と主張

小野寺議長案のポイントは、小売店のレジやシステム改修に時間がかかる「税率ゼロ」を見送る代わりに、「税率1%」を採用して、来年4月実施という「迅速性」を優先すると同時に、残る1%分は、低所得者向けの給付金を出すことで、「8%は国民に還元した」という「十分性」を確保して、高市総理の『食料品消費税ゼロという公約』を実質的に守ったと言えるようにすることです。

小野寺議長案に対しては、野党だけでなく、与党内からも、「食料品消費税ゼロという『公約』の重みがわかっているのか」などと批判が噴出し、政界では「ゼロ」か「1」かという「終わりなき論争」が続いています。

ゼロでも1でも、経済への影響は大差ない

しかし、政治的には重要な論争でも、食料品の消費税が、2年間、「ゼロか、1か」は、マクロ経済への影響はほとんど変わりません。それよりも「2年後の2029年4月に、一体どうするつもりなのか」の方が、はるかに重要な問題です。今のところ、「2年後」については議論が全くありません。

建前としては、2年間に限った消費税減税なので、2年後には再び食料品の消費税が8%に戻ることが前提です。しかし、そんなことがすんなり実現できると思っている政治家は、はっきり言って、誰もいないでしょう。

1%の消費税が一気に8%に上がるとなった時の、世論の反発は想像を超えた大きさになるでしょう。その前に行われる国政選挙では、大きな争点になり、8%への再引き上げは、政治的には、相当困難を伴います。

7%も一気に引き上げたら甚大な影響

また「政治的云々」という以前に、消費税を7%も一気に引き上げるなどということ自体、経済政策としてあり得ないと、私は思います。そのショックの大きさを考えれば、政策で大不況を作り出すようなものです。

過去の消費税の引き上げは、0%→3%→5%→8%→10%と、すべて2~3%の引き上げでした。それでも税率引き上げの度に、大きな「駆け込み需要」と「反動減」を生み出し、消費と成長の減速を作り出しました。

例えば、5%から8%になった2014年4月の増税の際には、引き上げ直後の実質GDPは、前期に比べ年率換算で7.1%もの壊滅的なマイナス成長を記録しています。もちろん2014年は、すべての消費税の引き上げで、消費税に占める食料品のウエイトは20%以下に過ぎません。また、食料品は、一般財と違って、「買いだめ」には限界もある上、「買い控え」の我慢にも限界があります。それでも7%と、当時の2倍以上の税率引き上げを、家計がすんなり受け入れるとは思えません。

コメや納豆、もやしの消費税が、一気に7%も上がって、感情的に怒りや不安を感じない消費者などいないはずです。

消費税再引き上げと同時に、別途給付が始まったとしても、給付がない人もいるわけですし、財布の紐は急収縮し、消費不況が訪れる可能性が高いと言わざるを得ません。店頭では、7%の価格転嫁を一気に行うことは難しく、小売業者の悲鳴は想像に難くありません。そんな状態を自ら進んで作り出すなど、経済政策としては、あり得ない話です。

1%が長引くか、「途中まで」しか戻せないか

結局、約束の2年後には、食料品を8%に戻すことができず、1%時代が長引くか、或いは、3%や5%など「途中まで」しか戻せない、という話になるリスクが高いように、私には思えます。そうであるなら、こんな振幅の大きな政策を採用するのではなく、最初から、2年後を見据えた議論を行うことが、政治の責任というものではないでしょうか。

そこには、軽減税率の恒久的な引き下げの議論もあってよいと思います。もちろん財源も含めて、です。食料品に8%もの高い消費税を課している国は、先進国では日本だけです。大きな税制改革の1つとして、議論に値するテーマだと思います。例えば、食料品の8%を5%に下げるのに必要な財源は、年1兆8000億円程度なので、所得税や法人税の改革とあわせて、財源に関する現実的な議論も可能なはずです。

物価は落ち着き、実質賃金もプラスに

高市内閣によるエネルギーなどへの物価高対策もあって、消費者物価指数は今年に入ってから2%を下回っています。焦点の食料品についても、コメ価格の低下もあって、落ち着きを取り戻してきています。目標だった実質賃金のプラス化も、4か月連続で達成しています。今、急いで消費税を引き下げなければならない、緊急性があるような事態ではないのです。

高市総理が掲げる「強く、豊かな日本」に向けて、経済が一定の巡航速度を保っている時に、あえて経済や財政の予見性を低下させるような政策に踏み込むことほど、愚かなことはありません。

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