「病気になってから通う」はもう限界?高齢化社会が求める“予防と継続支援”の新たな医療モデル

2026-06-29 22:50

糖尿病をはじめとする生活習慣病は、自覚症状に乏しいまま進行するケースが少なくない。厚生労働省による「国民健康・栄養調査」でも、糖尿病が強く疑われる者やその予備群は依然として一定数存在しており、高齢化の進展とともに地域医療における重要課題となっている。

こうしたなか、三重県松阪市で糖尿病・内分泌内科を中心に診療を行う医療法人松徳会 松本クリニックは、治療だけでなく生活習慣の改善支援を含めた診療体制を構築している。同院の取り組みからは、生活習慣病と地域医療の今後を考えるうえでの論点が見えてくる。

なぜ生活習慣病は「治療」だけでは解決しないのか

生活習慣病は、薬物療法のみで管理が完結する疾患ではない。糖尿病、高血圧、脂質異常症などは、食事や運動、睡眠、仕事環境など日常生活の影響を大きく受けることが知られている。

医療法人松徳会 松本クリニックは2016年に開院し、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの診療を行っている。同院の説明によると、管理栄養士や理学療法士、フットケア指導士など多職種による支援体制を整え、生活習慣の改善を含めた診療を重視しているという。

松本和隆氏は、患者ごとの生活背景に応じて継続可能な取り組みを検討することが重要だと話す。生活習慣病は長期的な管理が前提となるため、治療方針を患者自身が理解し、日常生活の中で実践できる形に落とし込むことが求められる。ただし、生活習慣の改善は患者個人の意思だけで実現できるものではない。就労環境や家庭環境、地域資源など社会的要因の影響も大きく、医療機関単独で対応できる範囲には限界がある。

症状が出る前にどう気づくか――早期発見の課題

糖尿病が問題視される理由の一つは、初期段階では自覚症状が少ないことである。症状を感じないまま進行し、健康診断などをきっかけに発見されるケースも少なくない。

松本氏は、地域医療の現場において早期発見の重要性を繰り返し伝えているという。症状が現れてから受診するのではなく、定期的な健診や検査によってリスクを把握し、必要に応じて生活習慣の見直しを行うことが重要であると説明する。

厚生労働省の国民健康・栄養調査でも、糖尿病が強く疑われる人は依然として多く存在するとされている。一方で、健診受診率や継続受診率には地域差もあり、早期発見の仕組みをどのように地域へ浸透させるかが課題となっている。もっとも、健診や検査によって異常が見つかった場合でも、全ての人に同じ治療や介入が必要になるわけではない。年齢や全身状態、合併症の有無などを踏まえた適応判断が前提となり、個別性の高い医療判断が求められる。

多職種連携は合併症予防の鍵になるか

糖尿病において問題となるのは、血糖値そのものだけではない。長期間にわたり適切な管理が行われない場合、神経障害や腎症、網膜症、足病変などの合併症につながる可能性がある。

松本クリニックでは、日本フットケア・足病医学会認定のフットケア指導士資格を持つ看護師による指導のほか、管理栄養士による栄養指導、理学療法士による運動指導を実施しているという。同院は、多職種が関与することで患者の日常生活に即した支援を目指している。

生活習慣病対策は「知識を得ること」と「実際に行動を継続すること」の間に大きな隔たりがあるとされる。そのため、医師だけでなく専門職が継続的に関与する体制は、患者にとっての選択肢の一つとなり得る。一方で、多職種連携を維持するためには人材確保や運営コストが必要となる。地域によっては専門職不足も指摘されており、こうした体制をどのように持続可能な形で普及させるかが今後の課題となる。

地域医療に求められる「相談できる窓口」

高齢化が進むなかで、地域医療機関には治療だけでなく、住民の健康相談窓口としての役割も期待されている。

松本氏は、患者が専門用語を理解することを前提とせず、できるだけわかりやすい説明を行うことを重視していると話す。また、自院で対応が難しい症例については急性期病院などへ紹介し、地域の医療機関と連携しながら診療を進めているという。近年は患者自身が治療方針の決定に参加する「共同意思決定(Shared Decision Making)」の重要性も指摘されている。生活習慣病のように長期間付き合う疾患では、医療者が一方的に治療を決めるのではなく、患者が理解し納得したうえで治療を継続することが重要とされる。

ただし、こうした関係性の構築は短期間で実現できるものではない。地域医療の質は、医師個人の経験やコミュニケーション能力に依存しやすい面もある。今後は個人の力量だけに頼らず、地域全体で継続的な支援体制を構築できるかが試金石となりそうだ。

【取材協力】
医療法人松徳会 松本クリニック
院長 松本和隆氏
http://www.matumoto-clinic.jp/



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