小さな命を失った痛みを一人で抱え込まないために ~流産・死産ケアに取り組む「iKizuku」の活動

一人で抱え込まないように
厚生労働省などの調査では、流産や死産を経験した女性の多くが、その後にうつ状態を経験するなど、心身に大きなダメージを受けることが分かっています。しかし、その苦しみは周囲に見えにくく、当事者が一人で痛みを抱え込んでしまうケースが少なくありません。今回は流産や死産によって、生まれる前の小さな命を失った人のケアについて取材しました。
【写真を見る】小さな命を失った痛みを一人で抱え込まないために ~流産・死産ケアに取り組む「iKizuku」の活動
悩みながら働く当事者の女性たちが、流産・死産後のケアや、お互いを支え、思いやりの心が息付く社会作りを目指して活動している自助グループがあります。それが、働く天使ママコミュニティ「iKizuku(イキヅク)」です。共同代表・藤川なおさんと、星野よしみさんも、大切なお子さんとのお別れという経験をしています。
まずは藤川さん、星野さんご自身のお話を聞きました。
2017年に死産を経験しています。妊娠18週の時でした。私の場合はメンタル、うつ病というところまで落ち込んでしまって仕事に復帰するということに苦労しました。流産でも死産でも出産したという事実は変わりないんですけれども、まわりからは産んでない人と思われるという…(藤川なおさん)
私は2016年から2019年の間に3回の流産・死産を経験しています。その内容としては初期流産と、一卵性の双子を早産と死産をしていること。また、妊娠15週で先天性の障がいが見つかりまして人工死産を経験しています。特に3回目の人工死産の時は、自分でサインをすることから処置が始まるのでほかの2回の経験よりはやはり罪悪感というところが一番大きかったかなと思います(星野よしみさん)
「二次的な傷つき」減らす働きかけ
藤川さんは、うつ病のため仕事への復帰に非常に苦労されました。そして星野さんは、3回の流産・死産を経験。職場に妊娠を伝えていない段階だった当時を振り返り「妊娠していました、流産しました、休みます」と3つ同時に上司に報告したといいます。
こうした自身の経験から立ち上げた「iKizuku(イキヅク)」。そのいきさつについて、星野さんに伺いました。
職場とか社会でも、無事産めた人に対する支援だとか、仕事と育児の両立支援っていうことはたくさんあるのに、無事に産めなかった場合はそこからスポっと落ちてしまうような感覚を持っていて、そういった人たちに対しての光が当たってもいいという思いを持っていました。その時に藤川とオンライン上で同じような悩みを持っている仲間として繋がりまして、こういった働く女性の流産・死産に対する取組をしている団体がないということでなければ私たちで作ろうということで立ち上げました(星野よしみさん)
星野さんが言っていた「産めなかった人」についてですが、心身のダメージを抱えていることを、職場の認知がない事による配慮不足でうまく社会復帰できなかったりする例も多くあるといいます。
小さな命を失う悲しみそのものは防げなくても、その後に社会や職場で受けるこうした「二次的な傷つき」は周りの理解によって減らせるはずだということで、イキヅクでは、座談会・勉強会の開催、SNSやホームページでの啓発活動などを行っています。イキヅクは設立から5周年。藤川さんにこれまでに働きかけをしてきて起きた変化を聞きました。
当時は厚生労働省、今は子ども家庭庁ですけれども、それまで流産・死産した働く女性が産後休業の対象ですよという情報が注記で小さく書かれているものをしっかりと明記してもらえるようになったというのは大きな変化かと思います(藤川なおさん)
制度を周知し孤立しない社会へ
そのほかにも、大学の講義の一コマに呼ばれて学生に伝える機会もできたそうです。星野さんに職場や社会へ望むことを聞きました。
流産・死産に関わる制度が全然知られてないなというところがあります。特に「母性健康管理措置」という、医師などからこういう症状があるのでお休みが必要とか、配慮が必要ということを記入して事業主に提出をすると、その事業主は医師からの指導を守るようにしなければならないという制度があります。やはり医療従事者も流産・死産した場合に適用となる制度を正しく理解していただいて「職場に伝える手段がありますよ」みたいな形でそういった情報提供が医療の現場でももっとあっていいのかなと思っています(星野よしみさん)
今まさに、小さな命との別れに向き合い、苦しんでいる当事者の方に伝えたいメッセージを藤川さんに聞きました。
一人じゃないよということはよく私たちは伝えるようにしています。涙が止まらないとか、逆に涙が出ないとか、大切なものをなくしたあとの反応は100人いれば100通り。すべてどんなご自身の状態もおかしくないんだよっていうふうに思ってもらえればいいかな。ただ、本当に自分だけじゃどうしても解決できないような苦しみ、辛さがあるのであれば私たちのような当事者の団体もありますし、自治体とかの相談窓口もどんどん頼ってもらえればいいかなと思います(藤川なおさん)
女性が、仕事や子どもを持つことを諦めなくてもいい優しい社会、自分らしい人生を再び築いていける社会になることを願います。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当・TBSラジオキャスター 加藤奈央)