AIが個別育成プランを自動作成 KK Company Japanが「スキルアップサプリ」の新機能を発表
人手不足やDXの加速により、多くの企業で従業員のリスキリング(学び直し)や人材育成の重要性が高まる一方、一人ひとりに合わせた育成計画を作成・管理するには大きな負担が伴うことが課題となっています。
こうした中、KK Company Japanは、企業向け学習プラットフォーム「スキルアップサプリ」に、AIが従業員ごとのスキルや目標を分析し、最適な育成プランを自動で提案する新機能「個別育成プラン(IDP)」を追加すると発表しました。発表会では実際のデモンストレーションも披露され、AIを活用した新しい人材育成の仕組みが紹介されました。
AIで「一人ひとりに最適な育成」を実現

近年、多くの企業では人手不足やDXの進展に伴い、従業員のリスキリング(学び直し)が重要な経営課題となっています。一方で、集合研修や一律のeラーニングでは、個人ごとのスキルやキャリア目標に応じた育成が難しいという課題がありました。
そこで注目されているのが、IDP(Individual Development Plan:個別能力開発計画)です。従業員ごとに現在のスキルや目標を整理し、それぞれに適した育成計画を作成する手法で、1980年代から欧米企業では広く活用されています。最近ではサッカーなどのスポーツ分野でもIDPが導入され、話題になることも増えつつあるとのこと。
しかし、IDPは自己分析や上司との面談、育成計画の作成、進捗管理など多くの工程が必要となるうえ、人材育成には多くの時間と手間がかかるため、企業側の負担も大きいことが課題です。 そこでKK Company Japanは、このプロセスをAIによって自動化する新機能を開発しました。
職務経歴書をアップロードするだけでスキルを分析

新機能のIDP分析機能は、職務経歴書(PDF)と目標とする職種のジョブディスクリプション(職務内容)をアップロードすると、AIが数秒でスキルギャップを分析。
IDPは大きく5つのステップで進められます。
まず、従業員自身が「将来どのようなキャリアを目指したいのか」を整理し、目標を言語化することから始まります。次に、上司との面談を通じて現在のスキルと目標とのギャップを分析し、育成目標を設定します。
その後、不足しているスキルを補うために必要な学習内容や実務経験を検討し、それらを「いつまでに何を行うか」というスケジュールに落とし込んで、個別の育成カリキュラムを作成します。特に「必要な学習内容の検討」と「育成カリキュラムの作成」の2つの工程が、IDPにおいて重要なポイントになるとのこと。
不足しているスキルを可視化したうえで、目標達成に向けた育成プランを自動で提案する、という仕組みです。

提案内容は「70:20:10の法則」に基づいて構成されます。
70%:実務経験
20%:上司やメンターからのコーチング
10%:eラーニングなどの座学
それぞれの割合に応じて、具体的な行動や学習内容が提示されるほか、関連するeラーニングコンテンツも自動でレコメンドされます。
また、スキルの充足度はグラフで可視化され、現時点で保有しているスキルと、育成プランによって習得できるスキルを一目で確認できます。
「スキルアップ・サプリ」の主な特徴

「スキルアップ・サプリ」は、従来のLMS(学習管理システム)ではなく、学習者主体のLXP(学習体験プラットフォーム)として開発されていることが大きな特徴です。
従来のLMSは、企業が従業員に受講してほしい研修をトップダウンで管理する仕組みで、部署ごとに決められたカリキュラムを受講する形式が一般的でした。一方、LXPでは学習の主役は従業員自身となります。従業員のキャリア目標や現在のスキルに合わせて、プラットフォームが最適な学習コンテンツを提案し、企業はその学びを支援する役割を担います。
さらに、個人が目指すキャリアと企業が求める人材像を結び付け、一人ひとりに最適化した育成プランを作成できることがLXPのメリットだといいます。

次に特徴的なのが「マルチモーダルAI」による動画解析機能です。
この機能はAIが動画の映像や音声を自動で解析し、タグ付けやチャプター生成を行うため、社内に蓄積された研修動画や業務マニュアルも特別な設定をすることなく検索・活用できるというものです。
従来のAIによる動画分析は、音声を文字起こしして内容を検索・要約する機能が中心でした。一方、マルチモーダルAIは、動画内の音声だけでなく映像に映っている人物や物、場面の変化といった視覚情報も同時に分析できます。
それはAIが「人間のように」動画の内容を理解できるようになるということ。音声と映像を統合して解析することで、動画全体の内容をより正確に把握します。
これにより、動画の要約だけでなく、重要な場面や見どころとなるハイライトシーンをAIが自動で抽出することも可能になります。
従来は担当者が手作業でメタデータを登録する必要があったが、この作業をAIが代替することで、社内コンテンツを効率的に学習資産として活用できる点が大きな利点と言えるでしょう。
料金は据え置き、進捗管理機能も追加予定

例えば営業担当者が営業マネージャーへの昇格を目指すケースを例に、新機能の活用方法が紹介されました。
AIは現在のスキルと目標とのギャップを分析し、特に優先して習得すべきスキルを提示します。例えば、営業戦略や収益管理に関する知識、営業チームの運営やメンバーのマネジメントなど、営業マネージャーに必要な能力が重点項目として示されました。また、代理店や他部門との連携といった周辺スキルも推奨項目として提案されます。
スキルの習得状況はグラフで可視化され、1回の育成プランで全てのスキルを身に付けるのではなく、プランを繰り返し実施しながら段階的に目標へ近づけていくことを想定しているということです。
今後は、育成計画の進捗状況を確認できるダッシュボードや、人事部門・管理職向けの管理機能も年内に追加する予定です。

料金は現行プランから変更なく、最小構成で1ユーザーあたり月額880円から利用可能、とのこと。
発表会では、「IDPの考え方自体は以前から存在していたが、実際には運用負担が大きく、多くの企業で導入が進まなかった」と説明されました。
KK Company Japanでは、自社でも過去にIDPの導入を試みたものの、運用工数の多さから継続が難しかった経験があるということです。
現在、多くの企業では人材の不足がますます深刻化しており、採用だけで事業の成長を支えることが難しくなってきています。また、AIの普及によって従来の業務スキルが通用しなくなる「スキルの陳腐化」が進み、従業員には継続的な学び直し(リスキリング)、そして企業にはより効果的な従業員育成が求められています。
AIが変えるこれからの人材育成
こうした背景から、従業員一人ひとりのスキルやキャリア目標に応じた、個別最適化された人材育成の重要性は今後さらに高まっていくと考えられます。人材不足やリスキリングへの対応が企業共通の課題となる中で、育成計画を効率的に作成・運用できる仕組みへのニーズも、ますます拡大していくでしょう。
今回発表された新機能は、AIによってスキル分析から育成プランの作成までを支援することで、これまで運用負担の大きさから導入が難しかった個別育成を現実的なものにする可能性を秘めています。今後、実際の導入企業でどのような成果を生み出していくのか、その活用の広がりにも注目が集まりそうです。