NHK「本件被害が発生したことは痛恨」 番組出演者からの性被害を受けた職員への不適切対応を謝罪 一体何が?【Nスタ解説】
NHKは5日、番組出演者から性被害を受けPTSD=心的外傷後ストレス障害を発症した職員に対し、社内で不適切な対応を続けていたと発表し、謝罪しました。
【写真で見る】NHKで番組出演者から“性被害” 事案発生からの経緯
NHK 性被害を受けた職員に不適切対応 事案発生からの経緯
井上貴博キャスター:
NHKの発表をもとにした、調査開始までの経緯です。
【調査開始までの経緯】
▼2025年4月
職員Aから「番組出演者から性被害により体調を崩して休職し、フラッシュバックなどもあるため、所属部局以外での復職等を希望したが聞き入れられなかった。なぜ実現されなかったのか確認したい」など労働組合を通じてNHK側に申し入れ。
▼2025年5月
NHKは外部の専門家等からなる調査検討委員会を設置。
▼2026年8月5日
検討委員会による約1年のヒアリングを経て、NHKが認定した事実を発表。
調査検討委員会では、どのような調査が行われたのでしょうか。
【調査検討委員会が認定した事実】
▼職員A
・番組の出演者などとの懇親会を行った後、当該出演者より意に沿わない性被害にあう。
→体調不良となり欠勤・休職。
・1年数か月後、職場に本件被害を打ち明ける。
・別の職場で復職できるよう「特段の配慮」を強く求める。
▼NHK人事局など
現所属での復職が原則であるとして「特段の配慮」は認めず。
▼職員A
・復職後も繰り返し別の職場への異動を求める。
→本件被害から3年余り後に希望していた職場のひとつに異動。
・意に沿わない性被害の影響によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断される。
2025年4月に申し入れを行うまでの間、出演者からの重大な人権侵害事案があったと認識し、リスク対策担当部局に相談した者はいなかったということで、会長や副会長・担当役員にリスク事案として報告が上がりませんでした。
ここまでの経緯で気になることや疑問はありますか。
お笑い芸人・プロデューサー 古坂大魔王さん:
こういった事案は、何よりも被害者の意向が重要だと思います。ここまでの経緯に具体的な名前などが書かれていないということは、被害者はそれを発表したいということではなく、あくまでも部署を移動できなかったことなどに対する意見ということですよね。
まず「被害者はどう思っているか」ということを発表から読み取らなければいけないと思います。
レイ法律事務所 河西邦剛 弁護士:
今回の発表内容・発表時期については、被害者の意向が最優先されていると思います。
発表の中でも「出演者が誰なのか」ということは特定されていません。被害者が「出演者が特定されると私も特定されてしまう」ということを非常に懸念している可能性があると思います。
調査検討委員会が指摘した3つの問題点 問われる責任の所在
井上キャスター:
実際、NHK側の会見でも「強くプライバシーを保護する」ということで公表しないという旨が発表されています。
調査検討委員会が指摘した協会の問題点は3つあります。
【調査検討委員会が指摘した協会の問題点】
(1)復職場所について「特段の配慮」がなされなかった
他の休職者などへの対応に影響が広がると懸念し、前例踏襲の対応に終始。
(2)組織的な対応が欠落していた
関係者間で「ファクト」と「事案の深刻さ」の共通認識形成がされず、対応方針や役割分担に関する検討がなされなかった。
(3)再発防止策等の検討の欠如
リスクマネジメント室や担当理事らに報告されることなく、組織として再発防止策の検討がされることもなかった。
ここで大きな焦点になりそうなのが、現所属での復職が原則であり、「特段の配慮」をNHK側が認めなかったという点です。
厚生労働省の手引きには「元の職場への復帰の原則」と記載されています。NHKとして、それを認めるかどうかの線引きや、どのような経緯でその判断に至ったのかについて、どのようなことが言えるでしょうか?
レイ法律事務所 河西弁護士:
厚生労働省のガイドラインには、「具体的に復職支援プランを作成する」という指針があります。
例えば、主治医や産業医から意見聴取をして、「こういうタイミング・環境でスタートしましょう」というプランを作っていくわけですが、そこについて怠っていた可能性があります。
この責任が誰にあるかというと、NHKの人事局の担当者です。今回の事案を把握した後に必要な判断をしなかった、特段の配慮をしなかったという点が人事担当者の問題として出てくると思います。
出水キャスター:
産業医も「同じ現場ではなく別の現場で」という進言をしていたそうですが、それも聞き入れられなかったというのは、結構異例なことではないでしょうか?
レイ法律事務所 河西弁護士:
放送業界における、昔の人権意識が色々なところから垣間見えるところではあります。
フジテレビや日本テレビの事案がある前の、旧体制の感覚に基づいて、各人が対応しているというところがあるからこそ、特段の配慮はしなかった。前例踏襲といったようなところが垣間見えるかと思います。
井上キャスター:
テレビ局は、そういった体質が古いと言われてきた業界です。
他の民間企業も含め、社会全体でコンプライアンスが確立されている中で、今回、NHKが他の担当部局と情報共有すらできていなかった点について、どのように見ていますか?
レイ法律事務所 河西弁護士:
まさにそれが2つ目の最重要ポイントになってきますし、フジテレビ事案とも共通の状況になってきます。
どういうことかというと、これだけ重要な事案があったにもかかわらず、▼「トップである会長や副会長に共有しなければいけない」という意識が現場になかったということ、▼そういった体制が十分に機能していなかったということが、まさに組織全体の問題になってくると思います。
「不適切対応だった」NHK会長が謝罪 今後の処分のあり方は?
井上キャスター:
NHKの井上樹彦会長のコメントです。
NHK 井上樹彦 会長
「本件被害が発生したことは痛恨であり、さらにその後のNHKの対応により、Aさんにさらなる負担をかけ、復職まで時間を要するなど、キャリアに大きな影響を与えたことを重く受け止めています」
「NHKを代表して、当時の対応の不適切さを心よりお詫び申し上げます。私は会長として人権・人格を尊重する方針を打ち出してきました。本件の教訓を生かし、調査検討委員会の提言に基づいて、組織全体で誰もが安心して働ける職場づくりを進めていきます」
今後、他の企業を含めて、次に生かすために、どういうことを構築していけばいいのでしょうか?
レイ法律事務所 河西弁護士:
もちろん被害者の意向が最優先なので、何が発表できるか、どういう処分が発表できるかというところで決まってくると思います。
ただ過去の流れを見てみると、今回はまだ曖昧な部分が残っています。
誰にどんな責任があり、どのような懲戒処分や不利益処分を行うのか。次のステップとしてNHKがそこを明確にすることこそが、他社への事例共有という観点からも、一歩踏み込んだ発表になるのではないかと思います。
井上キャスター:
事例を細かく発表することはプライバシーの観点から難しいですが、どういう処分をするのかというのは、また別の軸で考えるべきだということですね。
レイ法律事務所 河西弁護士:
ただ、フジテレビの事案でも、第三者委員会の報告書が出てから数か月後に「会社としてこういう懲戒処分を行います」と発表していました。今回も同様の対応をとるかどうかがポイントになってきます。
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<プロフィール>
河西邦剛さん
レイ法律事務所パートナー弁護士
芸能・エンターテインメント分野の法律問題が専門
古坂大魔王さん
お笑い芸人・プロデューサー
2児の父親として育児の様子を発信
SDGsを推進する活動も積極的に行う