【田原総一朗×小川彩佳 戦争語る】「違う」と言えない“政治の危うさ” 情報あふれる時代をどう生きるか【news23】

小川彩佳キャスターの「言論の師」でもある、ジャーナリストの田原総一朗さん。92歳になった今も権力に鋭く切り込み続けますが、その原点は、少年時代に経験した「戦争」にありました。戦後81年。終戦の日を前に、田原さんが今の日本に問いかけるメッセージとは。
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92歳 田原総一朗が語る戦争
ジャーナリスト・田原総一朗、92歳。小川キャスターにとって「言論の師」とも言える存在です。
田原総一朗さん
「自民党もさっぱり分かんない、何したいのか」
「そんなものは単なるパフォーマンス、パフォーマンスでいいのか」
数々の政治家に鋭く切り込み、半世紀にわたり、この国の行く末を問い続けてきました。19年前には、アナウンサー1年目の小川キャスターと報道番組で共演。
田原総一朗さん
「テレビ朝日にいらした時はしょっちゅう一緒にやった。番組」
小川彩佳キャスター
「そうですね、本当にありがたいことで」
小川キャスター
「政治家になろうと思われたことは?」
田原総一朗さん
「今になって、なってもよかったなと思う。つまり“権力者”。権力を持ちたくなかったの」
小川キャスター
「今になって、なってみたらよかったっていうのはどうしてですか?」
田原総一朗さん
「この国を動かすために。もっと『主体性のある国』にしたい」
田原さんが求める「主体性」とは――。その言葉の裏には、彼の原点である「戦争の記憶」がありました。
180度変わった“大人たち”
田原総一朗さん
「実は小学校の1年生の時に戦争が始まった。もう小学4年から5年にかけては空襲がいっぱいあった。勝てっこない戦争。アメリカと戦争して勝てるわけがない」
「戦争は絶対正しい」という空気に包まれた世の中。当時7歳だった少年が肌で感じたのは、反対意見を口にできない社会の異様さでした。
田原総一朗さん
「戦争反対と言ったら刑務所行かなきゃならない。『この戦争は正しい』と。『反対するやつ全員刑務所』と。それで負けた、惨敗」
1945年8月15日の終戦。この日を境に、大人たちの態度がひょう変するのを田原さんは目の当たりにしました。
田原総一朗さん
「戦争が終わったら、突然政府が『戦争は良くない』『戦争反対』『日本は平和にならなきゃいけない』。『平和でなきゃいけない』なら戦争するなよと」
小川キャスター
「教科書に墨を塗ったというのは」
田原総一朗さん
「戦争は間違いだったと示すために墨塗りをした。学校で教師に言われて。教師の言うことも全部180度変わった。『戦争はダメだ』『アメリカは素晴らしい国だ』。ガラッと変わって、だから学校の教師の言うことも信用できない。新聞や雑誌も信用できないと僕はなるわけね」
権力やメディアの言葉を鵜吞みにせず、自ら考え続けなければならない。「主体性」を持つことの大切さを痛感したのです。
田原総一朗さん
「“敗戦”で僕は人間は主体的に生きなきゃいけないと」
小川キャスター
「田原さんがジャーナリストとして今も走っているのも」
田原総一朗さん
「原点はそれです」
「違う」と言えない“政治の危うさ”
終戦から長い年月が経った今も、世界では2分に1人が戦争などの暴力で命を落としています。各地で戦火が絶えないなか、日本はどう振る舞うべきなのか。田原さんの話はやはり“政治”に及びました。
田原総一朗さん
「結局、今のアメリカもロシアも中国も、全部力で持って押さえ込んでいる。それでいいのか。日本が主体性を持つなら、アメリカに対しても言うべきことはちゃんと言った方がいい。『戦争はダメだ』とちゃんと言わないといけない」
政治の在り方について、田原さんは学生らとも本音で議論を重ねています。
早稲田大学近くの喫茶店で月1回開く「田原カフェ」。これからを担う世代と、正面から向き合っています。
大学院生
「ヨーロッパ諸国がトランプを批判したのは、哲学があったからか。それとも言った方が単純に得だったからか?」
田原総一朗さん
「両方あるけど哲学はある。日本はアメリカとの戦争に負けて哲学をなくしちゃった」
男性
「それは主体性がないってこと?」
田原総一朗さん
「何よりも問題は、日本人は『対米従属でいい』と思っている」
20代女性
「なんとなく守られると?」
田原総一朗さん
「アメリカに守ってもらえれば、それでいいと思っている」
20代女性
「実際守ってくれるか?」
田原総一朗さん
「今守っている。だから中国やロシアが日本に戦争を仕掛けない」
戦後、日米安全保障条約のもと、いわゆる「アメリカの核の傘」に守られてきた日本。アメリカに対し「戦争はダメだ」と異論を唱えられない現状を危ぶむ田原さんに、率直な問いが飛びます。
男性
「日本がなぜ主体的じゃなきゃダメ?対米従属でいいのでは?」
田原総一朗さん
「ここまで国際的になったら主体性を求められる。別に大喧嘩しなくてもいいけども、アメリカの言うことに『違う』と言えるかどうか」
男性
「『違う』と言えるかが主体的かどうか」
田原総一朗さん
「はい」
田原さんが、これからの時代を生きる私たちに求めることは何なのか――
情報あふれる時代 どう生きるか
小川キャスター
「これだけ今、色々な情報が溢れている世界ですよね」
田原総一朗さん
「だからこそ『主体性』が大事。つまり色々な情報あるけど、『自分はこれでいくんだ』と」
小川キャスター
「それはどうやって磨いていけばいい?『主体性』はどうやって身に付く?」
田原総一朗さん
「そのために勉強する。色々な情報を読んで『これはインチキだ』と。『これは間違っている』と」
周りに流されず、「何が正しいのか」自ら見極めること。それこそが、同じ過ちを繰り返さないために必要だと田原さんは考えます。
小川キャスター
「これからの世代に忘れないでほしいことは」
田原総一朗さん
「この国をどうすればいいか」
小川キャスター
「それを一人一人考えるということ」
田原総一朗さん
「この国をどうすればいいか。だって一人ひとりの人間がつくっている。『主体性』というのはそういうこと。そういう意識を持つことを『主体性』という」
小川キャスター
「それが持てていないのは」
田原総一朗さん
「持ってください。持つように努力してください」
田原総一朗(92)が問う「主体性」
小川キャスター
私がテレビ朝日のアナウンサー時代に、田原さんと共演したのは政治討論番組でした。田原さんには「あなたはどう思うの」と、目の前で行われている討論の感想を必ず求められました。
アナウンサーとして与えられた役割を前に、「自分としてどう思うのか意見を持ちなさい。そしてどう感じるのか、その感覚に正直でありなさい」ということを、繰り返し説いてくれたように思います。
それがこの「主体性」という言葉に繋がっていると感じますし、その原点が戦争体験にあった。そして今改めて、この主体性を持つことの大切さを感じているようでした。
東京大学准教授 斎藤幸平さん
「主体性を持て」と話されていますが、日本は今もなおアメリカの核の傘に守られている。その中で「自分たちの主体性を持とう」とすれば、一歩間違えれば、憲法改正や安全保障をめぐる議論につながり、一気に右派的な方向に傾いてしまう可能性もあります。その可能性について、田原さんにお聞きしたいと思いました。
田原さんは、こうした疑問を考えさせるきっかけを与えてくれる存在なのだと思います。そして、「田原カフェ」はこのような問いを考える場なのではないでしょうか。
私自身、以前「田原カフェ」で講師を務めたことがあります。そこでは、さまざまな若い人達がそれぞれの意見を自由に語っていました。
田原さんは、時に「何とかしろ」と強い言葉で問いかけることもあります。しかし、不思議と押しつけがましさがない。だからこそ、参加者も「違うのではないか」と、素直に言いやすい雰囲気があるんです。
それはある意味、田原さんが自分の答えを押し付けるのではなく、私たち自身に考えさせることで、「主体性を持つ」ということを、田原カフェという場で実践させている。それこそが田原さんのジャーナリズムの「核」であり、「田原イズム」と呼べるものではないでしょうか。
排除しない。まずは相手の意見を受け止める。そのうえで、自分自身の意見を持ち、それを言葉にして議論する。つまり、答えを最初から決めてしまうのではなく、「互いの意見を受け止めるところから議論を始める」ということが大切だと思います。