卓球・張本美和「お兄ちゃんが自分のお兄ちゃんなんて贅沢」 元エース石川佳純に語った兄・智和への本音と“心の成長”【バース・デイ】

9月に愛知・名古屋で開催されるアジア大会で金メダルが期待される卓球女子日本代表の張本美和(18)。5月の世界卓球では、世界ランキング上位を独占する卓球王国・中国の壁を初めて打ち破り、ランキングは自己最高となる3位に上り詰めた。
日本の若きエースはいかにして覚醒を遂げたのか。アジア大会「スペシャルアスリートアンバサダー」の卓球元日本代表・石川佳純(33)が取材した。
15歳差の元チームメイトが語る「最大の武器」
久々の再会を果たした二人。15歳離れているが、かつてTリーグで同じチームに所属し、共に汗を流した元チームメイトでもある。最年少の10歳で参戦した当時を振り返り、張本は「石川さんと練習させていただいた時は本当に集中していました。当時は子供だったので失礼なことをしちゃうんじゃないかと緊張していました」と明かす。
世界のトップで戦い抜いてきた石川は、現在の張本のプレーをこう分析する。
「なんでもできる選手ですが、やっぱりバックハンド。安定感があって攻撃もすごく鋭い。コントロールもいい、スピードもある。コースを変える時に打点があまり変わらないですね。だから相手はクロスにくるかストレートにくるか、わからないんですよ。どちらで待てばいいかわからなくなって、どんどん外される」
その精度を体感するため、直径6cmの小さな的にバックハンドで当てるチャレンジを実施すると、張本はなんとわずか1球で命中させてみせた。石川も「余裕だね、すごい!」と唸るほどの精度とパワーの進化を見せた。
英会話と中国語、過酷な練習が生んだ天才の礎
幼い頃から天才少女として注目された張本。両親は中国出身の元プロ選手で、卓球教室を経営していた影響もあり、3歳の頃にはラリーを続ける才能を発揮していた。
しかし、両親が授けたのは技術だけではない。将来を見据え、3歳から英会話教室に通わせたほか、中国語も学ばせた。母は当時の教えをこう語る。
「卓球は体のスポーツだけではなく頭のスポーツでもあります。相手や自分を分析するために頭を使います。語学で文章を読んで考えることも、卓球と深くつながっています」
さらに練習量も苛烈を極めた。60回連続でラリーを続ける練習では、ミスをすれば即やり直し。18セット成功するまで終わらない特訓は球数が1400球を超え、クリアまでに1時間半を要することもあったという。過酷な特訓は確実に実を結び、中学1年で全国大会を制覇、高校1年でオリンピック初出場を果たした。
中国の絶対王者を撃破「心の成長が一番大きかった」
5月の世界選手権・団体決勝。相手は世界ランキング2位の王曼昱(オウ バンイク、27)。フルゲームに及ぶ激闘の末、張本は3-2で勝利し、絶対王者・中国の牙城を崩した。
石川から「中国に勝って成長を感じたところは?」と問われた張本は、精神面の変化を口にした。
「やっぱり心ですかね。考えすぎちゃう時もあって。実力的に比べたら自分の方がないと思って『勝てないだろうな』と。そこがなかったのが大きな成長でした」
試合では2-0から2-2に追いつかれる展開となったが、「3-0で勝てるとは思っていなかったので想定内でした。『ラスト1ゲームは思い切ってやるぞ』という気持ちになれたのはあの試合が初めてでした」と振り返る。
石川も「私自身、気持ちの部分で勝つ勇気が必要だと感じたことが何回かあった」と共感を示した。
「超えたい目標」から「誇れる存在」へ――兄・智和への思い
張本を突き動かす大きな原動力となっているのが、5歳年上の兄・張本智和の存在だ。
幼い頃、学校に掲げられた兄のポスターを前に「(智和の妹ではなく)自分の名前で呼ばれたい」「超えたい」と語っていた張本。兄・智和も「自分が作ってきた記録は妹だけになら抜かれてもいい」と妹の才能を認めていた。
石川から改めて兄の存在について問われると、張本は素直な胸の内を明かした。
「お兄ちゃんとしてもすごく自分は誇りに思いますし、選手として本当に尊敬する部分があります。たまに贅沢だなって思っちゃいますね、お兄ちゃんが自分のお兄ちゃんなんて。お兄ちゃんの妹になれてる自分がすごく嬉しいです」
兄の背中を追い続けた結果、張本は全日本選手権で出場全種目を制し、前人未踏の4冠を達成。名実ともに日本のエースへと成長を遂げた。
エースの重圧を胸に、アジア大会で目指す頂点
全日本4冠という偉業について、張本は「すごく大きな自信になったというよりは、やっと優勝できて安心という気持ちの方が強かった」と語る。
重圧が増す中で、かつて同じ立場を経験した石川に「『自分が絶対勝たないと』という気持ちは持っているんですけど、そこまで重くとらえていない。もっと責任感を持って戦った方がいいのか」と尋ねる場面も。石川は「もう十分だと思いますよ。エースとしての役割を一生懸命果たしていると思うし、すごく頑張っていると思います」と温かい言葉をかけた。
先輩からの言葉を受け取り、張本は次なる大舞台を見据える。
「出るからには優勝したいですし、金メダルが欲しい。4種目で金メダルを獲れるように頑張りたいと思います」
日本の若きエース・張本美和。覚醒を遂げた18歳は、偉業達成に向けてさらなる高みへ挑み続ける。
(TBSテレビ「バース・デイ」2026年8月8日放送より)