“高市カラー”で経済成長と財政規律の二兎を追えるのか 来年度予算 概算要求143兆円超 物価高続く中…生活への影響は?

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2026-09-06 07:00
“高市カラー”で経済成長と財政規律の二兎を追えるのか 来年度予算 概算要求143兆円超 物価高続く中…生活への影響は?

来年度予算案の編成に向けて、霞が関の各省庁から予算の「概算要求」が出そろい、総額は143兆円を超えて過去最大になった。

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来年度予算案は、高市総理にとってゼロから作る初めての予算案となるだけに、持論の「責任ある積極財政」をどこまで反映させるか、マーケットの動きも含めて大きな注目点だ。

概算要求を見てみると、随所に「高市カラー」が映し出された一方、財政悪化につながりかねない懸念も見え隠れする。

概算要求過去最大も「大幅増加との指摘はあたらない」片山さつき財務相

一般会計の予算要求額は143兆656億円と、4年連続で過去最大となった。122兆円余りだった今年度の当初予算と比べると20兆円以上増えた。

ただ、財務省の幹部はこの比較に対して「正確ではない」と異論を唱える。

「日本政府が無責任な放漫財政に突っ走ろうとしている」と市場が受け止め、財政悪化への懸念から、円安や長期金利の上昇に歯止めがかからなくなることを恐れたことも要因の一つだろう。

だが、もっと大きな理由は来年度予算案が「戦後最大の予算編成改革」に位置付けられ、高市政権が「補正予算依存から脱却する」と掲げていることにある。

片山さつき財務大臣は9月4日の会見で「令和9年度の要求額と比較すべきは令和7年度補正予算と令和8年度当初予算の合計額」だと強調。

概算要求の総額はこれを2.5兆円上回る額で、「大幅な増加との指摘はあたらない」と述べ、野放図な財政規模ではないとの考えを示した。

「補正予算依存からの脱却」高市総理と財務省で思惑一致?

コロナ以降、政府は経済対策や物価高対策と銘打って、10兆円以上の巨額の補正予算を、毎年秋の恒例行事のように編成してきた。

高市政権はこの補正予算に依存する財政運営から脱却し、恒常的な政策の予算措置は当初予算で手当する方針だ。

本来は災害やパンデミックなどの緊急時に措置される補正予算ではなく、当初予算で措置することで、予見可能性を高めて、企業の投資を促して経済の成長につなげたいと考えている。

一方、財務省にとっても、補正予算からの脱却は好都合だ。

補正予算の編成は短期間で行われるため、霞が関の各省庁からの予算要求に対して、厳しい査定を実施しきれず、予算が膨れ上がる一因になった。

ただ、当初予算であれば、9月から12月までおよそ4か月間、財務省と要求官庁の間で、予算の必要性やその効果について十分な議論、査定ができる。

片山財務大臣は「予算編成プロセスをフルに生かして、腰を据えた議論が可能となる。それぞれの施策の費用対効果を重視し、無駄を削ぎ落とした筋肉質な予算としていきたい」と、補正予算依存から脱却する意義を強調した。

今年の秋は大型の補正予算を編成せず 物価高対策は消費税減税に

財務省の幹部からは「今年の秋は大型の補正予算は編成しない」との声があがる。

「補正予算依存から脱却する」と政府が掲げる中で、仮に、物価高対策を含む大型の補正予算の編成を打ち上げれば、マーケットに見放され、円安や長期金利の上昇に歯止めがかからなくなる。

政権幹部も「現金を配るような物価高対策は、国費への負担の割に、国民ひとりひとりが感じている恩恵が小さい」とし、物価高対策は来年4月から始める食料品の消費税減税に集中する考えを示している。

このため物価高対策は、現在実施しているガソリンへの補助金や、冬場の電気・ガス料金支援など、今年度の予備費を活用したものにとどまるとみられる。

「強く豊かな日本投資枠」の予算要求は青天井に

補正予算依存からの脱却と合わせて、今年の概算要求で最も大きな特徴は、新たに創設された「強く豊かな日本投資枠」にある。

概算要求には「シーリング」と呼ばれる予算要求の上限が設けられてきた。
かつては「ゼロシーリング」や「マイナスシーリング」など前年度並みかそれ以下の予算要求しか認めない時代もあったが、片山財務大臣は7月の会見で「もはやシーリングと呼ぶべきものはない」とし、来年度予算案の編成に向けた予算の要求は青天井で可能となった。

その結果「強く豊かな日本投資枠」を使った予算要求は12兆1730億円まで膨らんだ。

このうち、経産省は4兆5250億円、文科省は2兆1830億円とこの2つの省庁だけで半分以上を占めている。

「クールジャパン機構」の失敗から何を活かす?

さらに、経産省の事項要求を紐解くと、「コンテンツ産業支援」でおよそ1700億円を要求している。
高市政権は2033年までにコンテンツ分野に官民で34兆円投資を目指していて、民間企業の投資の呼び水としたい考えだ。

ただ、コンテンツの支援と聞くと、「クールジャパン機構」の失敗が記憶に新しい。

日本のアニメや食文化などの海外展開を支援するため、2013年に官民ファンドとして設立されたが、新型コロナの流行などで不振が続き、累積の赤字額は540億円に達した。
経産省はクールジャパン機構に関する来年度の予算要求を見送り、廃止する方向で調整している。

そうであれば、新たに予算要求した「コンテンツ産業支援」は「クールジャパン戦略」と何が異なるのか、どのように失敗を活かし、本当に投資効果のある予算となっているのか、徹底的な説明が必要だろう。

片山財務大臣は「成長への寄与や民間投資の誘発効果などを精査して、真に効果的な施策を作り上げる」と財務省が徹底的に査定する方針を示している。

かねてから強調する「どんな積極財政でも無駄なモノは無駄」との言葉通り、要求の中に隠れた無駄を省けるか、財務省に課せられた役割は例年以上に大きくなっている。

予算編成の焦点は「通年の国債発行額」40兆円が一つの目安に

来年度にかけては、概算要求の143兆円以外にも、防衛力強化や国土強靭化などで、金額を示さずに予算を要求する「事項要求」もあるため、財務省の予算査定があっても、最終的に年末に示される来年度予算案はより大きな額になる可能性もある。

予算額に加えて、マーケットが注目するのが「通年の国債発行額」だ。

予算編成では、税収や税外収入などの歳入見通しから、必要な予算などの歳出を差し引いた不足分を、新たに国債を発行することでまかなっている。

通年の国債発行額は2024年度は37.1兆円、2025年度は37.3兆円となっていて、「40兆円」が財政規律を維持する一つの目安とみられる。

ただ、予算要求が膨張するなかで、肝心の税収は来年度、食料品の消費税減税で、5兆円程度財源に穴があき、高市総理が強調する「通年の国債発行額をコントロールする」ことは困難を極める。

仮に、40兆円を大きく超える新規国債の発行が必要となれば、マーケットは「無責任な放漫財政だ」とみなし、30年ぶりに3%を超えた長期金利がさらに上昇するほか、物価高につながる円安が加速する恐れもある。

「責任ある積極財政のもと、強い経済を作る成長路線と財政規律を維持する持続可能性の二兎を追う、両立させる」と自信をのぞかせる片山財務大臣。

その言葉が守られなければ、私たちの生活にも悪影響が出ることになる。

TBS報道局経済部 蓮井啓介

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