バレー男子日本代表・高橋慶帆「愛知だから、金を取らなきゃいけない」最高到達点3m60cmの若き大砲が明かす壁と成長【アジア大会】

バレーボール男子日本代表のオポジット・高橋慶帆(けいはん)が、愛知・名古屋で開幕するアジア大会への意気込みを語った。2023年大会でシニア代表デビューを果たし銅メダルを獲得した22歳は、「愛知ゆかりの地で、金メダルを取らなきゃいけない」と静かに、しかし力強く言い切った。
「全てが初めてだった」前回のアジア大会と“世界”の名
「“ケイハン”がペルシャ語で“世界”という意味なんです」
自分の名前の由来を語るとき、高橋は少し誇らしげに微笑む。代表入りを重ねるうちに、その名前の意味をより強く意識するようになったという。「自分の志にあった名前だな、と改めて思った」――そう静かに言葉を結んだ。
2023年のアジア大会は、高橋にとって忘れられない大会だ。「シニアの代表として初めて戦った大会で、すごく思い出深い」と振り返る。チームが一丸となって戦う感覚を初めてリアルに実感した場所でもあった。結果は3位。メダルは手にしたが、金ではなかった。
その年は、コート内外のすべてが変わった1年でもあった。
「生活も、見られ方も、目標も――全てが変わった年でした」
思うようにいかないことも多かった。それでも、周囲の選手やスタッフに支えられながら、1つずつステップアップしてきたと語る。アンダーカテゴリーとシニアの違いについても率直だった。
「同年代が多いアンダーと違って、シニアは年齢の幅も経験値も全然違う。そういった選手に引っ張ってもらいながら押し上げてもらうという形で。大きく違いました」
「悔しさが残るシーズン」壁に直面した2025年
直近の2025年の代表活動について、高橋は「非常に悔しいシーズンだった」と自己評価する。
出場機会はネーションズリーグの中国ラウンドのみ。試合に出た時にしっかり結果を残し続けなければアピールにならない、それができなかった、という悔しさが言葉の端々に滲む。
世界ランク1位のポーランドとの戦いでは、経験値の不足を痛感したという。
「今までのチームと比べても、高さが本当にもう1段階高かった。そこに対して自分の点の取り方が、まだまだ経験値が不足していると感じました」
視野が狭まり、スパイクのバリエーションをうまく出せなかった。「もっともっと考えてプレーしなきゃいけない」という言葉には重みが宿る。
「高さ」という最大の武器
日本代表のオポジットのポジションには、西田有志(26)、宮浦健人(27)の高い壁が立ちはだかる。しかし高橋は揺れない。「他の選手にない自分の武器を生かしながら、自分の理想の選手像を作っていきたい」と言い切る。
その武器とは、「高さ」だ。身長194cm、スパイクの最高到達点は3m60cmにも達する。これはエース石川祐希(30)や髙橋藍(25)を上回り、チーム屈指の跳躍力だ。
「高さを生かしたスパイク、サーブ、ブロック――そこはまだまだ磨きをかけていきたい。世界と戦う上で、自分が誇れる、一番の武器なので」
他の選手とは異なるアプローチ、異なる印象をいかに放てるか。そこに高橋の勝負どころがある。
「クラピカが好き」フランスでハマったアニメと素顔
そんなコート上の凛々しい姿から一転、柔らかな表情になったのはオフの話題に移ったときだ。
リフレッシュ方法を聞かれると、「最近はドライブですね」と即答した。海の近くに生まれ育ったこともあり、自然豊かな場所へ出かけるのが好きだという。好きな曲を流しながら、海へ、山へ、川へ車を走らせる。
フランス滞在中にハマったアニメの話も飛び出した。「一番は『HUNTER×HUNTER』です。見たことがなくて見始めたら、もう2周しました」と笑う。
推しキャラはクラピカ。理由を尋ねると、「冷静で、信念を貫き通す。自分を犠牲にしてでも。戦い方がすごくクレバーで好きです」と、どこか自分の理想像を重ねるように語った。
「愛知だから、取らなきゃいけない」
オフで英気を養い、再び見据えるのはアジアの頂点だ。アジア大会は愛知・名古屋の地で19日に開会式を迎える。
「金メダルを取ることが目標です。前回は銅メダルで終わってしまったので。今回は愛知という、金にゆかりのある場所(金のしゃちほこなど)でもあるので、取らなきゃいけないと思っています」
前回は年上の選手に引っ張ってもらうことが多かった。だが今大会は立ち位置が変わってくる。
「自分のプレーで得点を量産して、チームに貢献できる選手になりたい」
共に戦う、同世代の甲斐優斗(22)については、「大会を通してしっかりプレーできるのはアンダーカテゴリー以来になるので、すごく楽しみ」と顔をほころばせた。
家族とチームメイト、二つの支え
激動の日々を支えてきたのは、家族とチームメイトだという。
「1番近くで支えてくれているのは家族です。遠くからでも、現地でも応援してくれる。メンタル的に難しい時も、声をかけてもらったり」
チームメートとは、練習だけでなく生活も共にする。「いろんな価値観に触れ、いろんな選手の取り組み方を間近で感じながらプレー、生活ができている。そういう部分で絆が生まれやすいと感じています」
「勝負どころで、チームを押し上げる選手に」
これから先、自身が目指す「理想の選手像」を問われると、高橋は少し思案したあと、短く、しかし決意を込めて答えた。
「個の力で打開できる選手。勝負どころで得点につなげて、チームを押し上げられる選手になりたい」
苦しい局面、プレッシャーのかかる場面でこそ、ボールを託され、それを確実に決めてチームを勝利へ導く。それは、彼がアニメ『HUNTER×HUNTER』のクラピカに憧れた「信念を貫き通すクレバーさ」とも重なる、真のエースの姿だ。
壁にぶつかり、悩み抜いた経験を糧にして、若き大砲は進化を続ける。
【アジア大会 日程】
■予選ラウンド(グループA)
9月27日(日)10:00~ 日本 vs ウズベキスタン
9月28日(月)10:00~ カザフスタン vs 日本
9月29日(火)10:00~ 日本 vs パキスタン
■決勝トーナメント・順位決定戦
10月1日(木)10:00~ 準々決勝
10月2日(金)10:00~ 5-8位決定戦/準決勝
10月3日(土)10:00~ 7位決定戦/5位決定戦/3位決定戦/決勝戦
【アジア大会 代表一覧】※年齢は9月19日開会式時点
◆セッター
河東祐大(28、ジェイテクトSTINGS愛知)
下川諒(26、サントリーサンバーズ大阪)
◆アウトサイドヒッター
大塚達宣(25、パワーバレー・ミラノ/イタリア)
新井雄大(28、広島サンダーズ)※キャプテン
甲斐優斗(22、大阪ブルテオン)
後藤陸翔(25、東京グレートベアーズ)
◆オポジット
西山大翔(23、大阪ブルテオン)
高橋慶帆(22、ジェイテクトSTINGS愛知)
◆ミドルブロッカー
西本圭吾(27、広島サンダーズ)
麻野堅斗(21、早稲田大4年)
西川馨太郎(26、大阪ブルテオン)
◆リベロ
高橋和幸(26、ジェイテクトSTINGS愛知)