東京メトロ、利用者の撮影画像を駅設備点検に活用へ 「ピクトレ」で地下鉄初の実証試験

2026-11-06 10:00

毎日多くの人が行き交う地下鉄の駅。その安全を守るために欠かせない設備点検に、普段駅を利用する人たちが参加できる新たな取り組みが始まります。東京メトロは、利用者がスマートフォンで撮影した画像を駅設備の点検に活用する実証試験を、2026年11月14日から有楽町線の3駅で実施します。

今回の試験で活用されるのは、身近な設備を撮影しながらゲーム感覚で社会貢献に参加できるアプリ「PicTrée(ピクトレ)」です。利用者が駅構内の照明や案内看板などを撮影・投稿し、その画像を設備の小さな異常の早期発見や点検業務の効率化に役立てられるかを検証します。

東京メトロが管理する駅には数万点もの設備があり、その安全を維持するために日々点検が行われています。そこに利用者の協力を取り入れることで、駅の安全を支える仕組みはどのように変わっていくのでしょうか。今回の実証試験の内容や、画像を活用した新しい設備管理の可能性について紹介します。

有楽町線の3駅で実証試験、利用者の写真を設備点検に活用

東京メトロは、株式会社Digital Entertainment Asset(DEA)、Growth Ring Grid Pte. Ltd.(GRG)と共同で、利用者が撮影した画像を駅設備の点検に活用する実証試験を実施します。地下鉄事業者として初めての取り組みで、駅を利用する人々の協力を得ながら、設備の異常を早期に把握できるかを検証します。

実施期間は2026年11月14日から2027年1月17日までで、各日10時から16時に行われます。対象となるのは、東京メトロ有楽町線の銀座一丁目駅、豊洲駅、新木場駅の3駅です。駅構内に設置された一般照明や案内看板を撮影対象とし、利用者から集めた画像を設備の状態確認に役立てます。

東京メトロでは、9路線180駅に設置された数万点もの設備について、安全を確保するために日々点検を行っています。多くの設備を適切に管理していくうえで、異常を早い段階で把握することは重要です。今回の試験では、従来の点検に加えて利用者が撮影した画像を活用することで、設備管理をより効率的に進められるかを確かめます。

駅を利用する人々が日常の中で設備管理に関わるという、これまでとは異なるアプローチです。専門スタッフによる点検を補う新たな方法として、利用者参加型の設備管理がどこまで役立つのかが注目されます。

ゲーム感覚で駅の安全をサポート、「ピクトレ」を活用した新たな仕組み

今回の実証試験で活用される「PicTrée(ピクトレ)」は、街中にある電柱やマンホールなどをスマートフォンで撮影し、ゲームを楽しみながら社会インフラの維持管理に参加できるサービスです。通常はチームに分かれ、設備の撮影や撮影地点同士をつなぐ操作などで得点を競う仕組みで、身近な場所を歩きながら社会に役立つ情報を集められることが特徴です。

東京メトロでの実証試験では、参加者がアプリの地図上に表示された指定地点を訪れ、駅構内の案内看板とその周辺を撮影します。案内看板を起点に前後左右の4方向から写真を撮ることで、照明や看板の状態を画像として記録し、設備の異常を確認するための情報として活用します。

撮影した画像はアプリを通じて投稿され、有効な投稿には「ピクトレ報酬コイン」と東京メトロのポイントサービス「メトポ」が付与されます。メトポは1か所につき5~15ポイント程度で、ピクトレ報酬コインは各種ポイントへの交換も可能です。こうした仕組みによって、利用者が楽しみながら駅の設備管理に協力できることを目指しています。

ピクトレでは、これまでにも防災設備や避難場所などの情報をゲームを通じて集める取り組みが展開されてきました。今回の試験は、その仕組みを地下鉄の駅設備へと広げるものです。日常の移動と社会インフラの維持管理を結びつける、新しい参加の形として注目されます。

駅構内での撮影は安全を優先、個人情報の保護にも配慮

利用者が駅構内で写真を撮影する今回の実証試験では、安全面やプライバシーへの配慮も重要になります。多くの人が行き交う地下鉄の駅で実施するため、撮影できる場所はアプリ上で指定された範囲に限られ、トイレや階段、エレベーター、エスカレーター、ホームなどは対象外とされています。

撮影時には、歩きながらのスマートフォン操作や通行の妨げになる行為、ほかの利用者や駅の従業員を無断で撮影することも禁止されています。参加者が安全に撮影できるよう、こうした注意事項はアプリ上でも案内される仕組みです。

また、撮影した画像は駅設備の保全に活用できるかを検証する目的に限って使用され、保存時や通信時には暗号化などのセキュリティ対策が講じられます。投稿された画像は、DEAとGRGがほかの利用者の写り込みや撮影対象と関係のない画像などを確認したうえで、東京メトロが取得・保管します。

なお、今回の試験は専門スタッフによる法定点検や専門点検に代わるものではありません。利用者が撮影した画像から確認できる設備の外観情報を、現地確認の補助や点検対象の絞り込みに役立てられるかを検証するものです。従来の点検体制を維持しながら、新たな方法を取り入れる可能性を探ります。

利用者の撮影画像が駅設備の異常発見に、新たな点検方法の可能性を探る

今回の実証試験で期待されているのは、利用者が撮影した画像を活用することで、照明や案内看板の小さな異常を早い段階で発見できるようになることです。日々の点検に加えて、利用者から集めた画像を設備の状態確認に役立てることで、異常の早期把握や修繕対応の迅速化につながるかを検証します。

また、画像から設備の状態を確認できれば、専門スタッフが現地で詳しく調べる必要のある場所を絞り込める可能性もあります。すべての設備を同じように確認するのではなく、異常が疑われる箇所を重点的に調べることで、点検業務の効率化や将来的な一部省力化につなげることも目指しています。

今回の試験では、こうした画像の活用が実際の設備管理にどこまで役立つのかを確かめます。異常の早期発見だけでなく、現地確認が必要な設備を効率よく把握できるかどうかも、今後の点検業務を考えるうえで重要な検証ポイントとなりそうです。

利用者とともに駅の安全を支える、新たな設備管理の形へ

普段何気なく利用している地下鉄の駅。その安全を守る取り組みに、利用者自身が参加できるという発想は、これからの社会インフラの維持管理を考えるうえで興味深いものです。スマートフォンで写真を撮るという身近な行動が、駅設備の異常を発見する手助けになるかもしれません。

今回の実証試験は、利用者の協力とデジタル技術を組み合わせることで、駅の安全を支える新たな仕組みを探る第一歩となります。こうした取り組みが今後どのように発展し、より安全で安心できる駅づくりにつながっていくのか、引き続き注目したいところです。

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