「この世のものと思えない」住民が明かす“川の氾濫”の恐怖 能登豪雨の被害で遠のく復興に「もう疲れた」【報道特集】

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2024-09-29 08:00
「この世のものと思えない」住民が明かす“川の氾濫”の恐怖 能登豪雨の被害で遠のく復興に「もう疲れた」【報道特集】

石川県・能登地方を襲った豪雨から1週間。現地では今も行方や安否がわからない人の捜索が続いている。地震からの復興も思うように進まないという状況に豪雨の被害が重なり、地域の人からは「もう疲れた」という訴えが聞かれた。

【写真で見る】仮設住宅の6割が“浸水想定区域”に設定 豪雨で遠のく復興

輪島市・塚田川が氾濫 住民が語る恐怖

豪雨で住宅4棟が流された輪島市久手川町。集落を流れる塚田川沿いでは、2人の安否がわかっておらず、いまも懸命な捜索が続いている。行方不明になっている中学3年生の喜三翼音さん。自宅は塚田川の上流にあったが、基礎だけが残り家ごと流された。当時、輪島市では、午前8時から11時までの3時間で、220ミリの雨を観測した。塚田川が氾濫したのは午前9時半ごろだった。

山本恵里伽キャスター
「久手川町の塚田川に来ています。今は穏やかに川が流れているのですが、川岸には巨大な流木が大量に残っています」

川の氾濫を間近で目撃していた住民に話を聞くことができた。

塚田川沿いの住民
「普段、川幅は細いのですが、当時はあたり一面に川の水が流れていました。怖くて怖くて、とてもじゃないけど こんな家にいられないと思って」

普段は、畑のそばに川が流れ、のどかな風景が広がっているという。

塚田川沿いの住民
「水がガーッと大量に上から流れてくるんで、どこから来てるのこの水みたいな。もう本当怖かったです。本当にこの世のものと思えない怖さでした

塚田川沿いの住民
「車で逃げようとしたら玄関を見たら電柱倒れてて、電線が(道を)塞いでて」

塚田川沿いの住民
「股下まで水に浸かって歩いて避難したんです。もう大変です」

仮設も浸水 2度住まいを失い…

豪雨は無情にも、生活再建を目指す人々に追い打ちをかけた。輪島市・宅田町の仮設住宅で暮らす78歳の大崎トキ子さんはこう話す。

大崎トキ子さん
「玄関先で(水が)ひざ下くらいまで来た。今ボランティアさんに頼んで掃除してもらったとこなんですよ」

大崎さんが息子一家とこの仮設住宅に入居したのは8月初め。運び入れたばかりの家財道具は泥水に浸かり、この日処分したという。

――大雨のときは仮設住宅の中にいた?

大崎さん
「はい。(水が)玄関や窓から入ってきたし、床からも空気みたいにポコンポコンって上がってきて。小学校の孫2人と留守番をしていたのですが孫が『怖い怖い、ばあちゃん怖い怖い』と言うので、棚の上に孫2人を乗せました。『下りたら駄目よ』と言いながら、電気のコードや電気製品も上にあげました」

仮設住宅のすぐ隣を流れているのは河原田川だ。仮設住宅は堤防よりも低い位置にあり、流れ込んだ泥水が溜まったままだ。

大崎さん
「電気は通っていますが、水道はまだ出ません」

地震以来2度目の断水で部屋の掃除も容易ではない。

大崎さん
「今年は元日からすごい事ばっかりある、災害ばっかり」

ハザードマップでは、仮設住宅の場所は洪水が起こった場合の浸水の深さは最大5mが想定されていた。輪島市内の仮設住宅の6割は、こうした浸水想定区域に建てられている。
石川県の馳浩知事が22日、床上浸水した仮設住宅を訪れた。

住民
「せっかくの仮設住宅だけど住めないです」

馳知事
「その状況じゃないね」

住民
「(復旧を)早いとこお願いします。住むところがなくて弱っている」

平地が少なく、リスクがある場所でも仮設住宅を建設せざるを得なかったと県は説明するが、復興はさらに遠のいてしまった。

仮設住宅が被害に遭った大崎さんが、以前住んでいた自宅を案内してくれた。

大崎さん
「大きい木が倒れていますが、その下に家があります」

地震で傾いた家には今回の豪雨でさらに土砂が流れ込んでいた。

大崎さん
「仮設住宅に避難していたから助かった。もし今回の豪雨の時に家にいたら怖かっただろうね。いなくて良かったって言ってたけど、もう住める状態ではないです」

住む場所を2度も失った大崎さん一家は今、地震直後に避難していた公民館に再び身を寄せている。

――また公民館に来て生活はどう?大丈夫?

小1の孫
「普通。大丈夫」

大崎さん
「避難所慣れしているからじゃない?地震のときは(避難している人が多くて)狭かったから、体を小さくして寝ていた。やっと仮設に慣れた頃に(入居から)1か月ちょっと経って、またここ来るとは夢にも思ってなかった。大変だけど仕方ないしね。こうやっていられる場所があるだけでも助かります」

孤立集落 通う住民の想い

輪島市の西保地区では豪雨で道路が寸断され、一部の集落が孤立した。

村瀬健介キャスター
「西保地区は1月の地震でも孤立状態に陥ったんですが、今回の豪雨災害でも唯一の道が寸断され、再び孤立状態に陥っています」

集落に向かうルートは大量の倒木や土砂に阻まれ、なかなか前に進むことが出来ない。

歩くこと、2時間。

村瀬キャスター
「今、ちょうど集落が見え始めていますが、あちらの方に人影も見えますね」

谷内吉夫さん(78)。地震後は輪島市内の仮設住宅に入ったが、自宅での生活を立て直すため、二日に一度は様子を見に戻っていたという。

この日は豪雨の後、初めて帰宅。片道3時間かかったという。

谷内吉夫さん
「水道は全くこの通り。出ない」

雨の被害は免れたものの、1月の地震以降、断水は続いたままだ。自宅にいる間の生活用水は雨水や田んぼの湧き水を貯めて使ってきた。食料は畑で採れた野菜など。停電に備え、発電機も新たに購入した。

谷内さん
「地震の後は電気も復旧して、道もそれなりに行き来はできていたんですけど、水害でまた駄目になってしまって二重のショック」

――でもやっぱりこの場所で、生活を再建したい?

谷内さん
「私自身はそう願ってるんです。ここにいれば自分の田畑もありますし、今は行き来に不便だけど下には海があって、上に行けば山がありますから」

山口茂夫さん(74)も輪島市の中心部から集落に通い続ける住民だ。

――今日は片付けですか?

山口茂夫さん
「商売道具を取りに来た」

仮設住宅に住みながら大工として働く山口さん。被災した建物の補修を依頼されたため、工具を取りに3時間かけて戻って来たという。

二度にわたる大きな災害を受けて、故郷への思いは揺らぎ始めている。

――ここで生活再建したいという思いは?

山口さん
「(自宅に戻るかどうか)5分5分。あんまり思わなくなった。これを飾って帰る。いつ来られるかわからんもん」

神棚に供え物をし、10キロの工具を背負いながら来た道を帰っていった。

一方で、やむなく集落を離れた住民もいる。仮設住宅で暮らす小脇春美さん(73)。

小脇晴美さん
「来る気はなかった」

――本当は向こうがよかった?

小脇さん
「そうそう、この2~3日は涼しくなったけど、暑いしね」

2024年2月、私たちが取材した際は孤立集落に残り、夫の政信さん(72)と二人で暮らしていたが、7月、政信さんが突然、心筋梗塞で倒れ、そのまま帰らぬ人に。

春美さんは一人、この仮設住宅に移り住んだ。

――この震災でのストレスというのも?

小脇さん
「そんなのもあったんだろうと思う。布団に入ったって何もせんで『寝られん』と言ってたけどね。寝られん寝られんって目が覚めたりね。まさか死ぬとは思わなかった」

被災地を支える住民の願いは

輪島市内で20年以上にわたり美容院を営む、高響子さん。この店も豪雨で大きな被害に見舞われた。

山本恵里伽キャスター
「本当に全部浸かってますね」

雨が降り始めると、水はじわじわと扉の外から侵入。その後、勢いを増し、あっという間に床一面を覆い尽くした。

高響子さん
「慌てて下に置いてあるものを上げたんですよ。だから最小限の被害だったんです」

元日の地震で水道が止まり、店は休業を余儀なくされたが、ひと月足らずで再開。ようやく軌道に乗り始めた矢先だった。

高さんは、地域の人たちにとって「美容院は憩いの場でありたい」と考えている。浸水から3日後、ボランティアの力を借りて店を復旧させた。

――こういうふうに美容室が開いてるというのも?


「助かるよ。家にいると1人だから、テレビとにらめっこ。イライラしたらここへ来て髪をバッサリ切ってもらう」

元日の地震の際に高さんは、自ら被災しているにもかかわらず、避難所に行けないお年寄りたちの家を一軒一軒回り、物資を届けた。

鵠巣地区は、震災から5か月後に断水は解消したが、豪雨で水道管が破損。再び水が通らなくなった。

今回も高さんは、そんな不自由さを解消するため、地域のボランティアの人たちと共に、連日、生活用水を届けている。

住民
「全然水が来てないし、道が崖崩れで通れない」

家の裏を流れる川は大雨で氾濫。水は濁流となって道路にまで溢れ出ていた。

住民
「ゴロゴロという石の転がる音は聞いた」

――地震があった後にまたこういうのは厳しいですよね?

住民
「うん、天のあれやし」

断水が続く鵠巣地区では、今回の豪雨で道路も激しく陥没した。

麻窪泰彦さん
「ここに車が1台あった、軽自動車。片側が完全にタイヤが出ていた。地震でまだ緩んでいたんじゃないですかね。ひどい雨で緩んだところが脆くなって流れたんじゃないかなと思う。もういい加減にしてくれよね」

高さん
「本当に疲れていると思います、みんな、心が。体はもちろん、心が相当疲れていると思う。日本のトップの人たちは、どういう人が困っているのか、そういうことをしっかりと見ていただける、目線をもっと下げていただきたい」

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