「令和の米騒動」の背景に“コメを作らなくなった日本” 専門家「あと5年もすれば崩壊の危機」【サンデーモーニング】
「令和の米騒動」の余波で高騰が続くコメ。かつて“コメ余り”から、国策で減産してきたコメが、ここに来て一転、“コメ不足”と指摘される事態になっています。その背景を手作り解説でお伝えします。
【手作りフリップで見る】「令和の米騒動」の背景をわかりやすく解説
100年後に再び起きた「令和の米騒動」
1918年(大正7年)に富山県で撮影された、コメを船に積み込む様子の写真があります。
当時、日本軍のシベリア出兵をきっかけにコメの価格が3倍に高騰したことに不満を募らせた主婦たちが、コメの積み出しを阻止しようとしたことをきっかけに暴動が全国的に広がったのが歴史上の「米騒動」。
それから100年以上経った今、「令和の米騒動」とも呼ばれる事態が起きているのです。
“コメ離れ”で半減した消費
今回の価格高騰の背景には“コメ不足”があるとの指摘があがっていますが、現在、日本で1年間に消費されるコメは1人あたり51キロで、1日に茶碗2杯分ほどです。これはピーク時の半分以下です。
食べる量が減ればコメは余りそうですが、生産量もピークのときから半分以下まで減っています。
「減反政策」後も続いたコメの減産
コメの需要が減るなかで価格を維持するために、政府は生産量を減らしてきたという経緯があります。
それが、1970年から始まった「減反政策」。田んぼでコメを作らず、代わりに麦や大豆などを作ると補助金が出る仕組みで、当初は代わりの作物を作らなくても、休耕田にするだけで補助金が出ていました。
この減反政策は2018年に廃止されましたが、それ以降も、食用のコメを作る代わりに家畜のエサになる飼料用のコメを作ると、田んぼ1枚あたり最大10万5千円。
輸出用のコメを作ると最大4万円の補助金が支給される制度があるため、食用のコメが作れたはずの田んぼで転作が進んでいます。
今回、政府は21万トンの備蓄米放出に追い込まれましたが、その裏で飼料用に74万トン、輸出用に5万トンのコメが作られているのです。
そんななか、政府は輸出用のコメを増産し、2030年までに、2024年の7倍ほどの35万トンを輸出する方針を打ち出しました。国内で不足した場合には、これを一時的に流用することを視野に入れています。
平均所得は「10万円未満」 疲弊する農家
一方で、コメ作りの担い手をめぐっては構造的な問題もあります。
国策でコメの生産を抑えて価格の維持を図ってきたにもかかわらず、コメ作りによる所得は、2023年では10万円にも満たない状況。コメ農家の数も半世紀あまりで7分の1に激減し、後継者不足で平均年齢は69歳です。
こうした現状に、東京大学大学院(農業経済学)の鈴木宣弘特任教授は「日本の稲作は食の安全保障に直結する問題だが、あと5年もすれば崩壊する危機にある。輸出用のコメを増やす議論の前に、国内の安定供給を維持するためのコメ農家へのテコ入れが急務」だと指摘しています。
「令和の米騒動」の収束は「朝飯前」とはいかないようです。
(「サンデーモーニング」2025年3月16日放送より)