高市総理が掲げる“消費税0%”実現への課題は?“事実上の増税”懸念と「外為特会」の限界【Nスタ解説】【選挙の日、そのあとに。】
自民党が「検討を加速する」としている消費税減税。
高市総理は、夏前をめどに意見などを集約する考えを示していますが、実現に向けた動きはどうなるのでしょうか。
【図で見る】高市総理の『円安ホクホク発言』で話題になった「外為特会」とは?
消費税0%実現への課題は?「長期政権目指すなら消費減税しないほうがいいのでは」との声も
井上貴博キャスター:
消費税減税を実現するために、 高市総理は今後どう進めていくのでしょうか。スケジュールをまとめました。
▼2026年6~7月:超党派の国民会議で「中間とりまとめ」
▼2026年内?:臨時国会で「審議」「成立」
▼2026年度内:2年間限定で「食料品消費税ゼロ」開始
2年後には参院選もありますが、このあたりはどうなのでしょうか。
TBS報道局 経済部 蓮井啓介 記者:
総理は「給付付き税額控除」という低中所得者を支援するための制度をつくるまでの、時限的な2年間の消費減税を訴えています。
ただ2年後には参院選を控えており、消費税減税を選挙の前後に終えるとなると、“事実上の増税”となり、政治的に難しい決断になるため、「長期政権を目指すなら消費減税しないほうがいいのでは」という政府関係者の声もあります。
消費減税に向け 国民会議へ参加する野党は?
井上キャスター:
選挙と税の話は相性が悪いなどと言われていますが、いずれにしても減税をするとなれば、国民会議が設置されます。
蓮井啓介 記者:
高市総理は月内にも立ち上げたい考えですが、政府関係者からは「月内の立ち上げは難しいのでは」との声も聞かれます。
というのも、メンバー選びが難航しています。政府・与党のほか、野党や民間の有識者も参加予定ですが、どの野党が参加するのかまだ決まっていません。
各野党の対応は、以下のようになっています。
▼中道:慎重に対応
与党側からの正式な打診でその意向をよく見極める
▼国民:参加の意向
「食料品消費税ゼロ」より「社会保険料還付」「住民税減税」
▼みらい:参加の意思
「社会保険料の負担軽減を」
井上キャスター:
各党のやり方が異なるので、どのように折衷案を見つけるのかということになります。食料品の消費税減税における課題は様々ありますが、主な課題は3つあります。
消費税減税に3つの課題「レジシステム」「物価は下がるのか」「外食産業への影響」
蓮井啓介 記者:
まず1つが「レジシステム」です。
レジシステムを消費税0%に対応するために改修が必要になりますが、約1年かかるといわれています。
2つ目は、「物価は下がるのか」という課題です。
ドイツでは、2020年に期間限定で消費税にあたる「付加価値税」を減税しましたが、多くの商品で店頭価格が変わりませんでした。減税した額の7割程度しか下がらなかったというデータもあります。
企業側は人件費の高騰や値上がりしているものがあることから、消費税が減税された分を自分たちの利益になるチャンスと捉えている面もあるので、本当に物価が下がるのかは未知数です。
そして3つ目が、「外食産業への影響」です。
食料品・弁当などの消費税は現在8%ですが、それが0%になると、外食は10%のままなので、差がひらきます。それにより「外食離れが起こるのではないか」と業界からは懸念の声も出ています。
井上キャスター:
レジシステムに関しては、「改修にかかる期間を半年に前倒しできるのではないか」という関係者の声もありますが、外食産業への手当は何かしら必要になりそうです。
個人的に感じているのは、給付付き税額控除までの2年間のつなぎとして、食料品の減税を行うとしていますが、給付付き税額控除の制度設計が本当に2年間でできるのかということです。
また、消費税減税をすると円安リスクがずっとつきまといます。マーケットをにらみながらというのは、高市総理の腕の見せどころだと強く感じます。
高柳光希キャスター:
国民会議は、幅広い意見を取り入れなければならないという側面はありますが、高市総理としては、できるだけ給付付き税額控除に同意している人も含めて、近い意見の人でやりたいという思いがあるのでしょうか。
蓮井啓介 記者:
国民会議は、元々は給付付き税額控除を導入するために設立するという話でした。こちらが本筋で、後から消費税の減税が加わってきています。あくまでも、「給付付き税額控除に賛同していただける野党の方と一緒に議論したい」というのが高市総理の思いです。
高柳キャスター:
野党も国民会議に自分が出たいかどうかという判断もあるということですね。
一番の課題は「代替財源」 外為特会の資金で、減税分を補える?
井上キャスター:
そこに野党が出て批判ばかりしていると、先に進まないのはどうなのかという国民からの見方もあります。そのあたりも戦略なんだろうと思います。
やはり一番の課題は「代替財源」の確保です。
高市総理「赤字国債の発行に頼らない」と話しています。
▼税外収入の活用、▼補助金の見直し、▼優遇税制の見直し、こういったものが1つの柱になると見ていいでしょうか。
蓮井啓介 記者:
この中でも、特に優遇税制の見直し、租税特別措置と言われる税制がありますが、仮に、法人税の租税特別措置を全て廃止したとしても、その規模は2.9兆円です。
2年間の消費税減税で必要になる10兆円という規模にはなかなか届かない見通しです。
井上キャスター:
そこで注目されているのが、高市総理の『円安ホクホク発言』で話題になった「外為特会」です。「外為特会」とは、急激に円高・円安が進んだとき、為替介入するための資金のことで、多くはアメリカ国債の形で保有しています。
蓮井啓介 記者:
2024年度は、この外為特会の剰余金、つまり利子などが5.3兆円でした。
しかしその全てを使えるわけではなく、ルールとして国の予算に使えるのは最大で7割と決まっていて、この年は3.2兆円です。
このうち1兆円は防衛費に使うことになっており、その他も使い道が決まっていて、自由に使えるお金はあまりありません。「消費税の減税の財源には、なかなかならないのではないか」という意見もあります。
井上キャスター:
為替に関しての縛りも出てくるのでしょうか。
蓮井啓介 記者:
今は円安ですが、円高になることもありますので、そうしたときはこの『ホクホク状態』が目減りしていくことになります。常にこの5兆円が出てくるわけではないという問題もあります。
井上キャスター:
このあたりも含めて、国民会議がどういう話し合いで結論を導き出すのかというのが今後の焦点になりそうです。
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<プロフィール>
蓮井啓介
TBS報道局 経済部 財務省担当
財政・税制などの経済政策を取材