ホルムズ海峡への艦船派遣 トランプ氏の日本“名指し”に高市総理は?「したたかな外交を」首脳会談で米アラスカ産原油の調達要請へ【news23】
イランの国防や外交のトップ、最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長について、イスラエル軍が殺害したと発表しました。トランプ大統領が、再び日本を名指ししてホルムズ海峡への艦船の派遣を求めるなか、19日に迫る日米首脳会談に高市総理はどう臨むのでしょうか。
【写真を見る】イラクにあるアメリカ大使館がドローンで攻撃される
「早く戦争が終わってほしい」中東情勢の影響が日本にも…
少しずつ咲き始めた桜。
全国のご当地グルメのイベント「うえの桜フェスタ」が行われている東京・上野公園では、早くも花見客の姿がありました。
お花見にはおいしい料理が欠かせませんが、そこに暗い影を落としかねないのが、今の中東情勢です。
牛・豚串焼き店 本家金沢家
「輸送費やガソリンもかかってくるので、肉自体の販売の値段も上げなきゃいけなくなるかもしれない」
みそ焼きうどん店 エコクラシキ
「今後これ(容器)が上がっていくと、またいろんなことを考えなければいけない。不安。早く戦争が終わってほしい」
イスラエル側「イラン国防トップ“殺害”発表」イランの死者1400人超に
現地の状況は混沌としています。
17日未明、イラク・バグダッドにあるアメリカ大使館が標的となりました。少なくともドローン5機とロケット弾が発射され、このうちドローン1機がアメリカ大使館を攻撃したということです。
アルジャジーラによると、イランでは戦闘開始からの死者が少なくとも1444人にのぼっています。
こうした中、イスラエル側は、イランの国防政策を統括する最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長を殺害したと発表しました。
ただ、イラン側ではまだ確認されていません。
反応を確かめるため?艦隊派遣を求めるトランプ大統領
一方、トランプ大統領は、事実上封鎖となっているホルムズ海峡周辺で足止めされているタンカーなどを守るために、他の国に対して艦船を派遣するよう求めています。
しかし、ドイツがすでに「参加しない」と表明するなど、各国の反応はあまりよくありません。
トランプ大統領(16日)
「日本・韓国には4万5000人、ドイツにも4万5000~5万人の米兵が駐留していて、これらの国はアメリカが守っている。アメリカに感謝するだけでなく、支援もすべきだ。手伝う気すらないのは驚きだ」
トランプ大統領の言い分は、ホルムズ海峡が通れなくなって困るのはアメリカではなく、“石油の輸入を中東に依存している他の国だ”ということです。
トランプ大統領(16日)
「日本は95%、中国は90%..、ヨーロッパ諸国も相当量の石油がホルムズ海峡を通っている。こうした国家に支援に加わってもらいたい」
協力を求める国の筆頭に「日本」を挙げたトランプ大統領。一方で、こんな持論も…
トランプ大統領(16日)
「アメリカは世界最強の国であり、最強の軍隊を持っている。他国の助けは不要だ。私が協力要請するのは、『彼らが必要だから』ではなく『反応を確かめたいから』だ」
高市総理「したたかな外交を展開」日本が直面する難しい対応
日本はどうするのか。国会では…
公明党 西田実仁 幹事長
「今回、訪米されて、アメリカから『日本は中東の原油に依存しているのに何もしないのか』と言われた場合、どう対応するのか」
高市総理
「いま、法的に可能な範囲で何ができるかと、精力的に政府内で検討をしている」
3月19日に日米首脳会談が迫る中、政府内では“自衛隊派遣は法的なハードルが高い”との見方が大勢を占めているということですが、具体的に「護衛」とはどういうものなのでしょうか?
自衛隊のトップ「統合幕僚長」を務めた河野克俊氏は、今のホルムズ海峡の状況について…
自衛隊 元統合幕僚長 河野克俊氏
「(日本関係の)タンカーを目がけてミサイルとか無人機とか、あるいは水上無人艇なんかで攻撃をされる状況にある。要するに(自衛隊の護衛艦は)ミサイルが飛んできたら撃ち落とす、無人機が飛んできたら撃ち落とす、無人艇がきたら沈める等をして、タンカーを守る」
――戦闘を念頭に現場に行く?
自衛隊 元統合幕僚長 河野克俊氏
「そのための護衛ですから。何も(相手からの)攻撃がないのなら護衛する必要ない」
しかし、河野氏によると、相手が主権国家・イランだということが派遣のハードルを高くしているといいます。
自衛隊 元統合幕僚長 河野克俊氏
「(海賊などの)無法者を相手にする治安維持のための法律で対応するのは、法律の限度を超えている」
――現状の法律では?
自衛隊 元統合幕僚長 河野克俊氏
「(対応は)難しい。全くの『ノー』ということになると、日米同盟は非常に厳しい状況になる。いま本当に政府はいろんな観点から検討をして苦しんでいると思う」
アメリカ外交の専門家も…
上智大学 前嶋和弘 教授
「こんな難しい交渉を過去にやったことないかもしれない。トランプ大統領の顔を立てればイランとの関係が悪くなり、ホルムズ海峡からのエネルギーが止まる。ホルムズ海峡からのエネルギーを重視するとトランプ大統領との関係が悪くなり、日本の安全保障が弱くなる。なかなか難しい状況に日本がある」
この難しい局面に、高市総理は…
高市総理
「高市内閣はしたたかな外交を、そして、国益第一の外交を展開してまいります」
その“したたかな外交”のひとつでしょうか。
3月18日夜、高市総理が日米首脳会談で、アメリカ側に対し、アラスカ州で生産された原油の調達を要請する方向で調整していることが明らかになりました。
事態の収束に向け、高市総理の手腕が問われています。
日本は踏み絵されている?アメリカにつくか、イランにつくか…
藤森祥平キャスター:
茂木外務大臣は17日の夜、イランのアラグチ外相と約30分間にわたり、電話で会談しました。
茂木外務大臣からは、イランによるホルムズ海峡における航行の安全を脅かす行為を直ちに停止するよう強く求めたということです。
また、ペルシャ湾内に日本関係の船舶が多く留め置かれているとして、ホルムズ海峡における全ての船舶の安全が確保されるよう、イラン側の適切な対応を求めました。
イランのアラグチ外相からは、イラン側の立場について説明があったということです。
日本は、イランに航行の安全を脅かす行為をやめるよう求めたという情報があり、その前には、アメリカ側が関係各国に対して航行の自由の重要性を訴える共同声明を出すという情報がありました。それぞれが色々な主張を出すようになってきました。
TBS報道局 政治部 中島哲平 官邸キャップ:
アメリカ側の「共同声明を共に出そう」というのは、アメリカ側につくのか、イラン側につくのか「踏み絵」を求められたような状況であると思います。
日本にとっては法律上の制約はないので、「共同声明に一緒に出すけれども、今までの日本とイランの関係など、きちんと色々なことを考えていますよ」という、イランとの上手な水面下の交渉ができれば、共同声明を出すことも可能なのではないでしょうか。
まさに今、そういったことができるのか、政府内で検討しているところだと思います。
小説家 真山仁さん:
そのような常套手段ができるとは思えませんが、“したたかな外交”ならやるべきです。
ただ、高市総理とイランの関係を過去に聞いたことがない気がします。それでいきなり、“したたか”と言われても…。具体的に何も言わないところが高市政権の特徴ですよね。
中島哲平 官邸キャップ:
やはり外交なので、何でも正論を言えばいいわけでもなく、そこはなかなか難しいところですよね。
小説家 真山仁さん:
匂わしてはほしいですよね。もし何をしようとしてるかが分かれば、みんな安心すると思います。しかし、現状の様子ですと「本当に大変なことになっているのではないか」というニオイばかりしてきませんか。
中島哲平 官邸キャップ:
ただ日本も、外務省などは今までも長い歴史の中で、イランとの関係を積み上げてきたものがあるので、本当にいろいろなケースを検討しながら考えてはいるのだと思います。
小川彩佳キャスター:
具体的なところが煮詰まっていないということなのでしょうか。
中島哲平 官邸キャップ:
具体的なことが決められれば、そんな簡単なことはないのですが、トランプ大統領も何を求めているのか、日々言うことも変わるので難しいのだろうとは思います。
法律上「艦隊派遣は難しい」その上でできることを検討中
藤森キャスター:
大きな局面を迎えようとしている1つに、19日の日米首脳会談があります。
どのような要求をされるのかというところで、高市総理は「精力的に法律内でできることを検討している」としています。具体的にどのような準備をしていくのでしょうか。
中島哲平 官邸キャップ:
いま、トランプ大統領からは自衛隊の派遣を求められています。派遣のあり方として以下の3つがあります。
▼存立危機事態:武力行使が可能
▼重要影響事態:後方支援が可能
▼海上警備行動:民間船の護衛が可能
しかし、いずれも法律上「派遣は難しい」というのが、いまの日本政府の立場です。
そうした中で、2019年に調査研究など情報収集の形で日本独自でホルムズ海峡周辺に艦船を派遣したことがあります。こうした過去の例も見ながら、何が日本としてできるのか。まさに今それを検討している状況です。
藤森キャスター:
その検討方法が、アメリカが求めていることかどうかを擦り合わせなければいけないわけですよね。
小説家 真山仁さん:
トランプ大統領が何を考えているのか分からないように、高井総理が何を考えているのか、本当に官僚が分かっているのか、心配があります。
こういう時は総合力がすごく重要になってきます。例えば、日本にそのつもりがなくても、イラン側が「これはアメリカと共同戦線を張っているのでは」と思われた瞬間に終わりです。
そういう意味では、きちんとイランとのカウンターパートがいて、的確な発言をしながらアメリカと交渉するなど、非常に難しいと思います。
おそらく、戦後日本でこれをやれたのは、70年代ぐらいまでの話です。オイルショックのときのような、そういう対応が今できるとは少し想像ができないです。
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<プロフィール>
中島哲平
TBS報道局政治部 官邸キャップ
防衛省や外務省担当など歴任
真山仁さん
小説家
著書に能登地震がテーマの『ここにいるよ』
最新作は『チップス ハゲタカ6』