「アサヒ」サイバー攻撃被害の実態 巨大な物流網が停止で看板商品も“在庫切れ”の影 完全復旧で“反転攻勢”は?【シリーズ・サイバー攻撃①】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-05-22 12:26

去年9月、サイバー攻撃で甚大な被害を受けたのが、アサヒグループホールディングスです。当時、何が起きていたのか?サイバー攻撃の実態を関係者の証言から追いました。

【写真を見る】サイバー攻撃を受けたアサヒ 当時何が起きていたのか?

サイバー攻撃でアサヒの“物流網”が停止 何が起きていたのか?

2025年9月、サイバー攻撃を受け市場から消えたアサヒの商品。想定外の事態、その原因は、サイバー攻撃によるシステム障害の発生でした。

ビールシェアNo.1。看板商品の「スーパードライ」まで影響し、売り上げが約4%ダウン。決算発表も延期に追い込まれました。

アサヒビール 松山一雄社長
「最初の1日は相当パニックになっていた」

あの時、何が起きていたのか?当事者たちの証言と独自映像から、サイバー攻撃による被害の実態に迫りました。

アサヒの“心臓部”、東京ドーム9個分の広大なビール工場。製造計画の責任者である出原さんが、朝出社して異変に気づきました。

生産部門 出原隆司さん
「とにかくいろんなシステムを立ち上げても、エラーが出るとか、通常通り立ち上がらない。なにかいつもと違うことが起きたんだなと…」

その後、本社からの報告で、サイバー攻撃を受けたことが判明。工場の製造設備そのものは無事でしたが、2日間の生産停止。

出原隆司さん
「製造自体がストップするというちょっと異例の事態が起きた。作りたいのに作れない」

なぜ生産停止に追い込まれたのか?狙われたのは、アサヒの巨大物流網を支えるシステムでした。

そのシステムを熟知する物流部門の責任者だった筑紫さん。

物流部門責任者(当時)筑紫浩二理事
「基本的には、注文を聞いて届けるという部分が、全部一連のシステムの中で全てが動いていく話なんですけども、それが全部できませんので…」

通常、アサヒの取引先である卸が、必要なビールの種類や数量を入力し、データとして預けます。そのデータをアサヒが受け取り、工場などに出荷を指示。卸に商品が届くまで、全て自動で完了します。

このシステムを狙ったのが、2022年に活動を始めたとみられるロシア系ハッカー集団「Qilin」。

アサヒは、大切な発注データを受け取れなくなったのです。

筑紫浩二理事
「何といってもスーパードライが、我々の中の本当に一番のメイン商品で、もうこれが店頭から消えるなんてことは、あり得ない」

看板商品が店頭から消える…?飲食店に迫る“在庫切れ”の影

本社では、経営陣による緊急会議が、毎日のように開かれていました。

JNNが入手したその会議の映像には、ビール以外の飲料や食品にもサイバー攻撃の影響が及んでいたことから、日本事業を統括する「アサヒグループジャパン」の濱田社長が各子会社から報告を受けている様子が残されていました。

店頭への商品の供給が滞るなか、在庫の状況について議論する経営陣。

通常の出荷は不可能。他の商品を諦めてでも、主力のスーパードライの注文は守るという苦渋の決断をしました。

それでも、地方の飲食店には着実に“在庫切れの影”が忍び寄っていました。

広島市で営業を担当する入社6年目の八尾さん。
システムが止まったあの時、まるで“前時代”にタイムスリップしたかのような働き方になりました。

営業部門 八尾直紀さん
「もう電話と、出向くのと、メールとか携帯の方が使えていたので」

何が起きているのか説明したいのにできない。ひたすら担当の飲食店への謝罪行脚の日々。

八尾直紀さん
「あの時、切れた商品って何でした?」

酒菜処きっすい 高木勇一代表
「切れたのが酎ハイのベースですね。酎五郎が一度切れました」

在庫が切れた酎ハイのベースや瓶ビール、スーパードライの生ビールも。

高木勇一代表
「もうここは空っぽに、ゼロになったんで一度。ちょっと『おーヤバいね』っドキドキしながら」

この店との関係を維持することはできましたが、当時の混乱は今も脳裏に焼き付いてます。

八尾直紀さん
「他の人は一般の日常が流れている中で、そのギャップにすごく、なんでしょうね。衝撃を受けたというか、辛さもあった」

完全復旧まで7か月 アサヒ“反転攻撃”の一手は...?

システムを再構築するなどして、障害から完全復旧したのは攻撃を受けてから7か月経った4月のこと。

9年ぶりとなる麦芽100%の新ビールを発売しました。そこには、あるこだわりも。

アサヒビール ゴールド開発担当 松井茜人さん
「スーパードライとかに使われている酵母が保管されている場所です。30人くらいしか入れない貴重な場所」

松井さんも入ることができません。部屋の前を撮影するのも異例のこと。厳重に保管されているこの酵母が、再起をかけた新商品にも投入されたのです。

松井茜人さん
「(酵母は)核かな、コア。これなしでは語れない。その味わいは、当社にしかない強みなので」

迎えた発売日。店頭には、松井さんの姿が。

松井茜人さん
「本当に、なんとかここまで来てよかったなと思いますね。でも、これからだなと思います」

「サイバー攻撃」による未曾有の事態。社長はいま、こう振り返ります。

アサヒビール 松山一雄社長
「最初の2か月間はちょっと辛かったですけれども、復旧復興を果たした後に、元に戻すんじゃなくて、もっと強い良い会社になるために、何ができるのかをみんなで考えてきた」

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