赤い体に大きな目をした魚の「キントキ」。
正式にはキントキダイというのですが、赤いタイといえば「キンメダイ」が有名ですよね。
両者は別物の生き物となります。
このキントキ、その名前は昔話に出てくる「金太郎」が由来となっています。
ここでは全身真っ赤な魚体でとても綺麗なキントキについて詳しく解説します。
「キントキ」とは
キントキとは、キントキダイ科に属する魚の総称です。
チカメキントキなど20種類ほどおり、その多くは食用とされています。
体は全体的に赤く、目が大きいので見た目にインパクトがありますよ。
キントキの生息地
キントキは、東シナ海、西太平洋、インド洋など世界的に広く分布しており、東大西洋をのぞく世界中の熱帯・亜熱帯地域の海洋で見ることができます。
西は南アフリカ、紅海から、東は日本やオーストラリアまで、東太平洋ではメキシコからペルーまで、西大西洋ではカナダからアルゼンチンまでの広い海域で生息しています。
浅い海から水深300~400mくらいまでの岩礁、サンゴ礁域に群がって生息する特性があります。
日本では、南日本を中心とした北海道以南の東シナ海、日本海、太平洋沿岸で生息しています。
特に新潟県以南の日本海側、相模湾以南の太平洋側、水深100m以上の深い海域に生息していることが多いです。
大きな個体は、深い場所にいることが多いです。
キントキの特徴
キントキダイは、最大体長は30㎝、重さ5㎏ほどで全身が光沢のある赤色をしています。
全身は小さく硬い鱗に覆われていてザラザラしていて、口は大きく下あごが前に突出しています。
キントキは総じて赤い魚体の他に、目が大きいという特徴があります。
この特徴から英名では「Red bigeye」、中国名は「大眼鯛」と呼ばれています。
またキントキは体の割に鰭(ひれ)が大きいのも特徴の1つです。
腹鰭、背鰭、臀鰭が大きく、鰭には褐色の斑点が散らばっています。
キントキの中でもチカメキントキにおいては腹鰭が極めて大きく、折りたたむと後ろ端が尻鰭の始部をはるかに超える大きさをしています。
キントキは高級魚
キントキは食用魚であり、美味しいと評判です。
身が締まった白身魚で癖がなく、脂が少ないものの真鯛に似た食感と上品なうま味が特徴。
日本では刺身、煮つけ、干物など様々な料理で食べられています。
このキントキ、高級魚として知られています。
市場では旬の季節である秋~冬にかけて高価格で取引されている魚の1つです。
都市部の市場ではあまり見かけられず、産地で消費されています。
大きい個体になると、キロ単価1,500円以上になることもあります。
キントキの名前の由来は昔話に出てくる「金太郎」
キントキという名前はなぜついたのでしょうか?
実はキントキという名前は、昔話で知られる「金太郎」が由来となっているのです。
大人になった金太郎の名前は「坂田金時」
金太郎と言えば、誰もが知る昔話の主人公ですよね。
足柄山の山奥で育った金太郎が熊と戦って勝つという話を思い浮かべる人が多いでしょう。
昔話に登場する金太郎は、源頼光の四天王・坂田金時の幼少時代の伝説を物語にしたものです。
マサカリ担いだ金太郎は、その腕っぷしの強さが評判を呼び、源頼光に認められ家臣になります。
そして、坂田金時と名前を改めると「頼光四天王」と呼ばれるほど出世していきます。
また、伝説の中では酒呑童子という鬼退治をしたメンバーの1人として伝わっています。
「金時」は赤の代名詞
金太郎といえばおかっぱ頭で、真ん中に「金」の文字が入った赤い腹掛けをしているというイメージが強いですよね。
この金太郎、江戸時代は赤顔もしくは全身赤く描かれて来ました。
そのため、赤と言えば金太郎=金時というイメージが定着したのです。
キントキは全身真っ赤な魚体をしているので、金時(金太郎)の赤のイメージから「キントキ」と呼ばれるようになりました。
他にもある「金時」と呼ばれるものも赤い
高級魚であるであるキントキ以外にも「金時」と呼ばれるものはいくつかあります。
ここで上げる「金時」と呼ばれるものは、全て赤みを帯びているのが特徴です。
赤インゲンマメ
赤インゲンマメは「金時豆」と呼ばれており、赤い皮をしています。
この赤インゲンマメ(金時豆)は、甘煮や飴の原料などにもよく使われます。
小豆
小豆餡(茹でた状態のもの)のことを「金時」と言います。
また小豆餡(金時)を乗せたかき氷のことを「金時」と呼ぶこともあります。
「宇治金時」は緑じゃない?と思うかもしれませんが、あのかき氷、宇治抹茶だけでなくシロップや小豆餡がのっていますよね。
なので、宇治が抹茶を指し、金時は小豆餡のこととなります。
金時ニンジン
京野菜の金時ニンジンはニンジンの一種です。
他の人参に比べて赤みが濃いのが特徴です。
別名は同名の魚がいる「アカメ」や「キンメ」
キントキは、地方によっては「アカメ」や「キンメ」と呼ばれることがあります。
これはキントキの瞳の部分が、角度によって赤色や金色にも見えることが由来です。
実はキントキとは別に「アカメ」や「キンメ」という魚は存在するので、時に混同してしまうかもしれませんね。
アカメとの違い
地方名では「アカメ」と呼ばれることもあるキントキですが、同じ「アカメ」という名前の別の魚も存在します。
アカメは赤色の体を持つキントキとは異なり、銀白色の体をしています。
また体長は1mにもなるのでかなり大きいです。
目は小さく、光の反射で赤く見える時があることから「アカメ」と呼ばれるようになりました。
キンメダイとの違い
キントキとキンメダイはどちらも赤い体をしているため、見た目はよく似ています。
キントキとキンメダイの大きな違いは「鱗(うろこ)」です。
キンメダイは鱗が大きく、簡単に剥がすことがでいますが、キントキダイは細かい鱗がたくさんついているため、綺麗に剥がせません。
また、キントキとキンメダイには「口」にも違いがあります。
キンメダイには口先にトゲがありますが、キントキダイには口先にトゲはありません。
キンメダイを調理する際には、口に気を付けなければなりません。
まとめ
キントキは赤い体で大きな目と鰭を持つ高級魚です。
キントキという名前は、昔話で有名な金太郎が関係しています。
金太郎が大人になった時の名前が「金時」で、この金時が赤の象徴でもあることから、赤い体をもつキントキはそう呼ばれるようになったのです。
またキントキ以外にも、金時豆、金時ニンジンなど「キントキ」がつくものはたくさんあり、そのどれもが「赤」が関係しているんですよ。