夏の日差しよけとしても重宝される「すだれ」や「よしず」。
ふたつとも古くから同じような目的で使われてきたうえに、形状も似ているので違いがわかりにくいです。
しかし、両者には設置場所や材料などに違いがあります。
そこでここでは、「よしず」と「すだれ」の違いについて解説します。
「よしず」と「すだれ」の共通点
まずは「よしず」と「すだれ」の共通点を解説します。
「よしず」と「すだれ」の効果
「よしず」や「すだれ」は、古くから涼を取るために使われてきた道具です。
玄関や窓辺に設置することで、風は通しつつ陽射しを遮ることができます。
また、よしずやすだれを設置することでカーテンのように部屋の目隠しをすることができたり、室内への虫の侵入を防ぐという効果もあります。
使用する際には、水をかけることで更に涼しくすると用い方をされることもあります。
「よしず」と「すだれ」のはじまり
「よしず」と「すだれ」では、それぞれ異なる歴史を歩んできたのでしょうか。
よしずの歴史
よしずがいつ誕生したのかは実は明確になっていません。
それでも、江戸時代頃にはすでにあったことが判明しています。
その材料となるのは、「葦(ヨシ)」という植物です。
現在でこそ生産量が減っていますが、かつての日本では川沿いや沼や湖などのまわりなど水辺で採取できる存在でした。
茅葺屋根の葺替えで用いられてきたほどなので、生活に根付いていた存在です。
すだれの歴史
すだれは中国で誕生したとされます。
漢書という、前漢の時代にまつわる歴史書の中でも登場することから、前漢の時代にはすでにあったということになります。
日本には、飛鳥時代には伝来していたとされます。
「君待つと 吾が恋ひをれば 我が屋戸の 簾動かし 秋の風吹く」という和歌があります。
これは、大化の改新で知られる天智天皇に宛てて額田王という女性が呼んだ一首となります。
この和歌に「簾」とある事から、この時点ですでに簾が中国などから伝来していたということが推察できます。
また、平安時代に貴族の邸宅様式である寝殿造りでは、大きな一部屋を細かく仕切るために用いられるようにもなりました。
他にもこの時代には、「御簾(みす)」と呼ばれる縁取りをした簾も登場しています。
設置方法で見る「よしず」と「すだれ」の違い
ここからは「よしず」と「すだれ」の違いを解説します。
「よしず」の設置方法
「よしず」は、軒先やベランダに設置します。
立てかける形で設置することで、日光が直接室内に入らないようにします。
「すだれ」の設置方法
「すだれ」は軒下に設置されることもありますが、サイズによっては屋内に設置されることもあります。
設置の際は、高さのある場所から吊り下げるというのがよしずとの違いの一つとなります。
屋外の場合は、風で揺れないよう紐を張ることもあります。
屋内の場合は、カーテンレールを利用したりフックを掛けることで吊るすよう設置します。
100円ショップなどで、すだれを取り付けるためのフックが販売されていることもあります。
「よしず」と「すだれ」の材料の違い
「よしず」と「すだれ」は、何で作られているのかという材料の違いもあります。
「よしず」の材料
伝統的な「よしず」の材料には、前述もした通り「ヨシ」が使用されます。
日本書紀では、日本ことを「豊葦原千五百秋瑞穂国(とよあしはらのちいほあきのみずほのくに)」という美称が用いられています。
これは、葦が草原のように豊かに生い茂っており、いつまでも穀物が豊かに実る国という事になります。
日本書紀の時代から、日本ではアシが豊富にあったことがこの美称ひとつからも分かります。
このヨシは、数も多く取れる上に軽くてまっすぐ伸びる性質があります。
何本もつなげるようにして糸で組んでいくのに最適だったことが分かります。
なお、立てかけて使うという性質上、「よしず」はヨシをタテに並べて編むことが多いようです。
「すだれ」の材料
「すだれ」の材料は主に「竹」が使用されます。
竹は日本で古くから様々な材料として重宝されてきました。
まっすぐ伸びて生長していくことや加工のしやすさから、家具や日用品、農具に漁労具そして多くの工芸品や玩具にも使われてきました。
簾を作る際は、竹を細く削ったものを糸で編んでいきました。
なお、竹だけではなくヨシで編まれたものも「すだれ」と呼ばれる事があったようなので、材料は厳密は違いにはならないのかもしれません。
現在では、「すだれ」を樹脂などの人工素材で作られたものもあります。
まとめ
「よしず」も「すだれ」も、古くから日除けとして用いられてきた道具です。
竹やヨシを編んで作られますが、どちらもわずかに隙間があるのでそこから風は通ります。
それでいて陽射しは通さないのですから、涼を求める夏場などは「よしず」や「すだれ」が活躍したことが容易に想像がつきます。
違いとしては、設置の仕方や材料、そして歴史等があげられます。