自民党派閥の裏金問題で29日に開催された「政治倫理審査会」。出席したのは岸田文雄総理、そして二階派の武田良太議員です。肝心の「裏金」の使い道は明らかになったのでしょうか。
【写真を見る】「国民見ていない」と落胆の声 「裏金」の使い道は?岸田総理と武田良太議員が政倫審に【news23】
現職の総理が出席するのは史上初 公開された政倫審
自民党派閥の裏金問題を受けて15年ぶりに開催された衆議院「政治倫理審査会」。現職の総理が出席するのは史上初めてです。
岸田総理
「前例にとらわれることなく、マスコミオープンで説明責任を政倫審において果たさせていただきたい」
公開か非公開か。与野党で揉めに揉めた政倫審ですが、岸田総理が28日に出席を表明したことで、安倍派幹部ら5人も出席することで決着しました。
質問に立った立憲民主党の野田元総理。26日の予算委員会に続き、今週2度目の対決です。
立憲民主党 野田佳彦 元総理
「(予算委で)2022年に7回もパーティーをやって異常じゃないかと申し上げたけれども、(岸田総理は)どういう答弁(をした)かというと『勉強会だ』とおっしゃった。一晩で3000万円以上の収入を得るような集会をやって『勉強会』と言っている。私はごまかしだと思いますけれど、いかがですか」
岸田総理
「野田内閣の際にも何人かの大臣が政治資金パーティーを開催しておりますが、要は大事なのは説明であると思います」
立憲民主党 野田佳彦 元総理
「内閣総理大臣として、政治資金パーティーはやらないと明言できないんですか」
岸田総理
「内閣総理大臣としてパーティーを開催すること、これは今は考えておりません」
立憲民主党 野田佳彦 元総理
「ほとぼりが冷めたらやるってことじゃないですか。『やらない』と言ってください、在任中は」
岸田総理
「在任中はやることはないと考えております」
安倍派の「裏金」については…
日本維新の会 藤田文武 幹事長
「清和会(安倍派)の裏金作りは先ほど弁明にありましたが、いつから、誰の指示で始まったのか。総理、しっかりと把握して今日、この場に出ていますでしょうか」
岸田総理
「少なくとも10年前以前からこうした取り扱いがされていたと、報告書の中で記載されている。残念ながらはっきりした経緯や日時等については確認できていない、これが現状です」
岸田総理の言う「報告書」とは、自民党が2週間前に公表した議員への聞き取り結果。野党から「お手盛り調査だ」と批判があがっていました。
「裏金」の使い道について聞かれたときも…
岸田総理
「政治活動以外に使われたものは確認されていない、このように報告書の中で明記をされている」
日本共産党 穀田恵二 国会対策委員長
「報告書のことは全部知ってるんですよ、お互いに見ているんだから。問題はそれ以後、どういう努力をしてこの問題について解明されたのかと。あれで真相究明がすべてだと思いますか」
岸田総理
「すべて実態が把握できたものではないと思いますが、当初の再発防止策を考える上では聞き取り調査は大きな意味があったと考えている」
15分の弁明含め、1時間20分の審査。新たな事実は明らかになりませんでした。
二階派・武田氏「派閥幹部は関わっていない」 新事実語られず
岸田総理に続いて政倫審に臨んだ、武田良太氏。二階元幹事長の側近議員で、派閥の裏金問題について、実務を取り仕切る事務総長の立場で出席しました。
武田氏は菅内閣では、政治資金を担当する総務大臣を務めていました。
29日、派閥のパーティー収入の不正な取り扱いの責任を問われると、繰り返したのは…
二階派 武田良太 事務総長
「経理だけについては、事務局長に全て任せておったという状況」
「事務局長に委ねておったわけで、我々はその流れに従ってきた」
「事務局長が掌握して、本当に我々存じ上げないことだらけなんです」
武田氏が繰り返した「事務局長」は、二階派の会計責任者で、国会議員ではない、いわゆる「事務方」です。派閥のパーティーを巡り、3億8000万円以上が報告書に記載されておらず、東京地検特捜部に在宅起訴されています。
二階氏の裏金事件への関与を問われると…
立憲民主党 寺田学 衆院議員
「(二階)会長は把握していなかったんでしょうか?」
二階派 武田良太 事務総長
「先般、(二階)会長と話し合ったところ、全く把握しておられませんでした」
億を超える派閥の政治資金の取り扱いについて、派閥幹部は関わっていなかったという説明を政倫審の場でも繰り返しました。
また、政倫審の開催が二転三転したことについて、「公開であろうとなかろうと、私はそうした細かい条件をつけたことは一切ございません」と強調しました。
裏金の使途の説明「期待しない」政倫審に街の声は?
岸田総理からも、武田議員の口からも裏金について、新たな事実が語られることなく終わった政倫審の初日。
街で声を聞くと…
20代女性
「最初から説明していたら、こんな中継(で説明)しなくていいんじゃないですかって思います」
20代女性
「あんまり期待はしてない。結局こういうことにお金を使っているから、別に期待する価値もないかな」
70代男性
「我々は『所得税はすべて金払え』『税金払え』と言われている。絶対に許しちゃいけないと思う」
「政治的な責任・党としての処分」に岸田総理が踏み込む
小川彩佳キャスター:
街の皆さんからも厳しい声が聞かれましたけれども、29日の政倫審をどうご覧になりましたか。
ジャーナリスト 浜田敬子 氏:
午後、仕事の手を止めて見ていたんですけれども、もう本当に中身のない予算委員会の答弁、報告書をそのまま読んでいるような中身にがっかりしたというか。
この内容なら、公開・非公開を揉める必要すらあったのかとも思いました。ちょっと違和感を感じたのが、「派閥政治を解消する」と言っていましたが「派閥って解散したんじゃなかったっけ?」と。まだ派閥が存在しているかのような口調で話していて、岸田総理はやはり遠慮している感じがしましたし、二階派ってまだ残ってるんでしたっけというぐらいで、派閥政治からの解放ってちょっと無理なんじゃないかなっていう印象も持ちました。
23ジャーナリスト 宮本晴代記者:
29日のポイントは、大きく上げるとこの3つがあると思います。
(1)「連座制」の適用に前向き
(2)「政治的責任・党の処分」に言及
(3)総理在任中はパーティーをしない
この中でも個人的には2番目、岸田さんが「政治的な責任・党としての処分」というところに踏み込みました。要は今までずっと秘書がやった、事務方がやったということで、政治家は責任を取らなくてもいいんですかっていうところに国民はみんなモヤモヤしてきたわけですよね。でも、今後の説明次第ではきちんと責任を取らせる、それを検討するということに言及したというのは踏み込んだなと思いました。
もう一つ、29日は岸田さん以外にもう1人、審査会に出た武田良太さんですけれども、武田さんは二階派の事務総長という立場でした。
「なぜトップの二階さんが出席しないんですか?」と聞かれたときに、「二階さんっていうのは、派閥の象徴なんです」。象徴であるからこそ、あるいは象徴だけれども、「事務・経理には一切関わっていないんです」と、このように答えたのが印象的でした。
ただ、その派閥の「お財布事情」について、武田さんあるいは武田さん以外、二階さんや他の幹部は本当に知らなかったのか、という疑問は実は解消されていません。
小川キャスター:
「裏金」が何に使われたのか、様々な疑問がありますけれども、今回新たにわかったことがあったかというと、どうなんでしょうか。
宮本記者:
結局は、先日の自民党が出した報告書にまとめられた内容をなぞる形でした。岸田さんは「政治活動費以外に使ったり、違法な使い道に使った例は把握されていない」という答弁に終始したんですけれども、結局そのお金がどんなところに使われていたのか、という私たちの知りたい具体的なところの新しい事実はなかったですね。
藤森祥平キャスター:
政倫審は3月1日も行われます。1日は安倍派の幹部を務めた西村氏、松野氏、塩谷氏、高木氏の4人です。特に高木氏にいたってはちょっと愕然としましたが、28日、「これまでの会見と同じような話になるだろう」(28日)と、新しいことも言うつもりありませんと言ってるようなもんですよね。
TBSスペシャルコメンテーターの星浩さんはこのように見ています。
4人については、これまでの経緯とお金の使い道などを一番知る立場。だから、▼いつから始まったのか▼キックバックなどのやり取りを一度やめようと思ったのに、なぜ継続となったのか、それから最大の関心事と言ってもいい▼税金を支払う意思があるのかどうかなど、喋らざるを得ないと星さんは見ています。
小川キャスター:
ですから、1日に審査が行われる皆さんは何も知らないでは済まされない方々ということですね。
宮本記者:
今回の裏金事件の発端となったのは、実は安倍派の問題からだったんですよね。ですので、この4人が1日にきちんと説明をするのか。そうでないとすると、野党は参考人招致あるいは証人喚問ということも検討していると思います。
浜田氏:
岸田さんは少なくとも安倍派では10年以上前からっていうことを話していました。そこは少なくともやっぱり誰が、どういう形で進めたのかというのは話していただきたい。
そもそもこの4人でいいのかっていう問題ですよね。自民党内の駆け引きの中で、この出席者って決まっているわけですけれども、事務総長経験者と線引きしていますが、その線引きって、全く国民にとっては意味がない。派閥の幹部も萩生田さんとか、もう少しいらっしゃいますよね。
もっと言えば、50人以上の人がもらっていたわけですけども、この人たちは説明する必要がないんですかということと、安倍派の総会が終わった後に幹部の責任を追及するべきだと言っていた議員の方がいましたよね。皆さんその法的な責任は問われていないけれど、この50人以上の方たちは政治的責任・道義的責任はあるわけなので、個人の意思で出るっておっしゃったので、説明してくださいと言いたいです。
岸田総理の改革実現できる?「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『政治倫理審査会』などについて「みんなの声」を募集しました。
Q.岸田総理は自身が掲げた改革を実現できると思う?
「実現できると思う」…2.5%
「実現できないと思う」…94.5%
「その他・わからない」…3.0%
※2月29日午後11時19分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません