![「くしゃみや咳で肋骨が折れることは、あります」花粉症でも要注意…くしゃみが引き起こす疲労骨折の仕組みと対策](/assets/out/images/jnn/1026408.jpg)
「ハクション!」と大きくくしゃみをして、胸のあたりが痛んだ経験はないだろうか。「誰かに噂されているのかも」なんて笑っていると、「肋骨が折れていた…」という場合があるというから驚きだ。一体、どんな場合に、くしゃみで肋骨が折れてしまうのか。"骨"のプロに聞いた。
「くしゃみや咳で肋骨が折れることは、あります」なぜ?
気温が上がり、春めいた空気を感じるようになると、天敵が現れる。花粉だ。目はかゆくなるし、鼻はむずむず、くしゃみも止まらない。そして、くしゃみを連発していると、なにやら肋骨のあたりが痛くなる。まさに踏んだり蹴ったりだ。
SNSをみると、「くしゃみしたら肋骨パキッて音した」「くしゃみしすぎて肋骨が痛すぎる」と、嘆いている"仲間"がたくさんいる。中には、「くしゃみして肋骨が折れたことがある」という人まで…。
いやいや、さすがに折れはしないだろう…。くしゃみという何気ない動作で、硬い骨が折れてしまうなんて、なんだか信じがたい。整形外科の医師に真相を聞いた。
──くしゃみをして肋骨が折れることはあるのでしょうか?
東海大学医学部付属八王子病院 整形外科・小林由香准教授
「くしゃみや咳で肋骨が折れることは、あります」
──えー!にわかには信じられません。
「骨折と一口に言っても、明らかに骨がずれている骨折と、ヒビの骨折があります。くしゃみや咳などで起きる肋骨の骨折は、小さな力が繰り返し同じ場所に加わることによるヒビのような骨折=疲労骨折です」
──肋骨は折れやすい"弱い"骨なんでしょうか?
「肋骨は、左右に12対の骨で、後ろは胸椎という背骨から、前は胸の真ん中にある胸骨についています。籠のような形で、心臓や肺などの臓器を守っている骨です。強度というと難しいですが、簡単に折れるような骨ではありません」
肋骨の骨折は、机の角に体をぶつけたり、自動車事故にあったりなど、1回の"大きな"衝撃で起きることが多いという。それでは、くしゃみでヒビが入ってしまうというのは、どういうワケか。
「くしゃみをする際、横隔膜や肋間筋が緩んで肺が広がり、肋骨に力が加わります。くしゃみを繰り返し、力が加わり続けると、ちょっとずつ折れることもあります」
くしゃみの繰り返しが、肋骨のヒビにつながりかねないというわけだ。となると、スギ、ヒノキ、黄砂などなど、これからの時期は、特に注意が必要になってくる。しかし、いったいどう気を付ければいいのだろうか。
花粉症の人は要注意?「性別や年齢層は関係ありません」
「例えば花粉症の場合、一度に立て続けにくしゃみをしますし、一日にそれが何回も起きますので、毎日昼も夜もしていれば、2~3週間のうちに疲労骨折してしまうというのは考えられます。花粉症の方は要注意です」
──どんな人が肋骨が折れやすいのでしょうか?
「骨密度が関係しています。実は、これは性別や年齢層は関係ありません。若い人でも、減量をしていたり、栄養のバランスを考えた食事をしていないと、骨粗鬆になっている場合があります。そうすると、小さな力でも同じ部分に加わり続けることで折れることがあります」
──万が一、「肋骨のあたりが痛い…」と感じたら、どうすればいいのでしょうか?
「くしゃみやせきをしたときに胸の周りが痛いとか、寝返りをしたり、体をひねったり、腕をあげたりすると胸が痛いときは、整形外科を受診してください。肋骨骨折と診断されたならば、炎症を抑える薬を飲んだり、湿布を貼るといった処置になります。
もし痛みが強ければ、胸に巻く"ベルト状のバンド"で圧迫固定をして、胸の動きを抑えると痛みが減ります。折れた場合呼吸運動で痛みがひどくなるので、息を弾ませたり深呼吸は避けた方がいいでしょう。これらの治療で、3~4週間で徐々に改善していきます」
──最後に…肋骨にヒビが入らないよう、"骨にやさしい"くしゃみの姿勢なんて、ありませんよね?
「姿勢を変えても、肋骨の"籠"の形は変わらないので、姿勢では予防できません。予防するには、花粉やほこりなどを取り除いて、くしゃみや咳が出ない環境を整えることが大事です」
生活習慣を改善するなどして骨密度を上げ、くしゃみの原因と向き合うことがまずは大事なようだ。