「至れり尽くせり…最高じゃないですか」女子刑務所 急激に進む高齢化と再犯、死刑を免れた女たち 出口なき反省の日々【報道特集】

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2024-03-09 06:30
「至れり尽くせり…最高じゃないですか」女子刑務所 急激に進む高齢化と再犯、死刑を免れた女たち 出口なき反省の日々【報道特集】

全国の女子受刑者は約3700人。高齢化が急速に進む一方で、出所後に「再犯」ですぐに戻る受刑者も後を絶ちません。塀の中の女たちは何を語るのか。女子刑務所にカメラが入りました。

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女子刑務所 加速する高齢化、最高齢は94歳

鬱憤を晴らすかのように声を張り上げる女達。年に1度の“のど自慢大会”だ。

壁には非常ベルが付けられ、周囲では厳しい監視の目が光る。ここは200人が収容されている岩国刑務所。女子専用の施設だ。“塀の中の女達”の日々をカメラが追った。

住宅街で輝くイルミネーション。目を凝らすと建物はぐるりと塀で囲まれている。

平均刑期3年。犯罪は窃盗と覚醒剤でほぼ8割を占める生命犯、つまり人の命を奪った殺人罪の受刑者も1割近い。

刑務官「右を向くの。番号!」
受刑者「1,2,3,4」

高齢化が急速に進んでいて、最高齢は94歳。彼女は私達の取材中に出所したものの、2か月後、再び塀の中に戻ってきた。反省と後悔の言葉が空しく響く。

85歳・服役4回 常習窃盗
「お店に入ったときも(万引きは)しないよ、絶対しないよと思っている。だんだんお金払うのがバカらしくなる。しないという保証ができない」

86歳・服役4回 常習窃盗
「デパートで万引きしたことはありません。したのはスーパーです。焼き魚とか盗ったんです」

85歳・服役3回
「至れり尽くせり、食べさせてもらって、寝かせてもらって、お風呂に入れてもらって、最高じゃないですか」

15歳から覚醒剤を使用、“売人”を生業にしていた者もいる。

ーー(服役は)何回目ですか

50代後半・覚醒剤取締法違反
「9回。人生の半分いる。次きたら生きては出られないと思っている」

受刑者と刑務官がすっかり顔なじみというケースも多い。

担当刑務官
「ばつが悪そうな顔をする。『すみません』と最初に出る言葉はそれが多いですね。ここは困らないと思いますよ。食事も寝ることころも、仕事も適度にやって」

受刑者の日常 風呂は週3回、1日30分の運動、認知症の進行が止まることも

刑務官「点検終了、洗面、洗濯始め!」

舎房は独居房と集団室に分かれる。部屋に鍵はなく通路は自由に移動できる。ただし“私語”は厳禁だ。

トイレや洗面台は共同使用。入浴は夏、冬ともに週3回。20分が目安だ。男性の刑務所より5分長い。時間が徹底的に管理されている世界だ。

1日30分の運動時間は殆ど自由時間になる。働く工場別に帽子の色が分けてある。人数を迅速に把握する為で、逃走防止の意味合いがある。

爪切りは運動場で行う。自殺防止のために部屋に刃物類は一切ない。

刑務官のほぼ7割を女性が占める。男性刑務官は女子受刑者との不要なトラブルを避ける為に“ウェアラブルカメラ”を付けている。

ーー気を遣いますか

男性刑務官
「男性受刑者と違った気の遣い方がある。ちょっとぶつかって、ちょっと当たったりしても『ごめん』で済まないこともあるでしょうし」

刑務作業で受刑者が手にする報奨金は月に平均3千円程度。

工場ではフリガナが振ってある看板が目に付く。学力不足の受刑者も珍しくない。

この受刑者は家庭の事情で殆ど学校に通えず漢字を読めなかったと言う。

40代前半・服役2回 窃盗
「市役所で書類を書くときに漢字がでてこない。『ひらがなでいいですよ』と言われて悔しいし、恥ずかしかった」

刑務所から出す手紙に『漢字が増えたね』と子供に褒められたと自慢げに話していた。

決まった額で洗剤、チリ紙、タオルなどの必需品に限り売店で注文が出来る。しかしメイク道具の口紅などは一切許されない。

岩国刑務所 内藤睦所長
「化粧をするとかなり人相が変わる。逃走や保安上など、人相が変わった人がいると難しい」

面会時間は約30分。遠隔地から子供連れで訪れる家族も少なくない。

受刑者の短歌
『まってると  獄に届きし吾子の文  心弾みて今日が始まる』

20年間岩国刑務所に勤務する医師の専門は婦人科だ。塀の中では認知症が進まない傾向があると話す。

矢次信三医務課長
「認知症患者が刑務所にくると、不思議と一般社会より改善する。なぜかというと、刑務作業などがとても良くて、仕事をして頭を使う。毎日動いて、食堂に行って、人から刺激を受けるので、わりと進行が進まない。回復はしませんが、(進行が)止まったり、普通の生活に戻っていたりします」

受刑者の食事は複数の幹部が“検食”する。

刑務官
「本日の献立は、鶏肉のごま焼き、ほうれん草のクリーム煮、オムレツチーズ」

コロナの最中には一時期コンビニの弁当が調達されたという。

岩国刑務所 内藤睦所長
「最初のうちはとても好評だった。1週間経つと、刑務所のご飯が食べたいと言うようになった。“お通じ”とかですね」

受刑者が語る後悔 コロナ禍で“闇バイト”に手を染めた留学生も

お盆を前に所長らがある場所に向かった。到着したのは刑務所が所有する無縁仏の墓地だ。高齢受刑者は“獄死”と隣り合わせだ。家族が遺体の引き取りを拒否するケースも少なくないと言う。

「コロナさえなかったら」と語る受刑者がいた。彼女は激しいDVが原因で同居していた男性を殺害した。犯行直前、DVから逃れようと海外の知人を頼り出国を試みたが、コロナ禍がピークで叶わなかった。

60代前半・判決懲役7年 殺人
「裁判員裁判で心情を汲んでもらって、私に有利なというか、罪状にしては短めの刑期だと思う」

自分の犯罪で家族が崩壊し、子供達とも絶縁状態だという。

60代前半・判決懲役7年 殺人
「5月に鯉のぼり揚げてあげたかったなと思い、俳句を。『鯉のぼりバンコクの児らへ思い馳せ』」

コロナ禍で仕事を失い、ネットの“闇バイト”に手を染めた留学生もいた。

20代後半・特殊詐欺
「コロナ禍で国にも帰れず、学費も心配で、バイトもなく、生活も厳しかった」

刑務所は塀の外からの情報に神経質だ。手紙の検閲は厳しい。雑誌類も薬物や自殺に関する部分は削除される。

刑務官
「薬物の快楽性や入手ルートなど、具体的な情報は削除の対象となる」

“塀の外”から美容師が一般社会の香りを運んで来る。

ーー気持ちいいですか
受刑者
「はい。2か月に1回だけなので。美容がある日は嬉しい」

ーー口紅をしたいと思う?
受刑者
「刑務所ではしたくないが、社会に帰ったらする」

受刑者「耳を出して欲しいんですけど」
外部からの美容師「出せないんで」

カットにも細かい規則があり、完全に自由とはいかない。

ーー気持ちいいですか
受刑者

「さっぱりしました。(白髪染めは?)ここでは染められない」
外部からの美容師
「美しくなりたい気持ちが伝わってくる。どこにいても女性の本質である、綺麗でいたいという気持ちは強いのではないか」

女子刑務所の「年末年始」 大晦日だけは消灯が…年賀状も

塀の中でも新年を迎える準備が進む。女子刑務所では食事は全員揃って食堂でとる。“年越し蕎麦”はカップ麺だ。物価高に直撃されて今年は小型になった。

受刑者の短歌
『売店のアイスや菓子も値上がりし、社会の波は刑務所にまで』

大晦日だけは普段の消灯時刻の9時を過ぎても零時までテレビを観られる。外の世界に思いを馳せながら新年を迎える。

受刑者
「昔は年越しライブに行ったり、富士急ハイランドに行ったりした」
受刑者
「今頃はおせちを作ったり家族と過ごしていた」
受刑者
「おせちがあってお雑煮があって、初詣に近くの神社に行っていた」

一方、集団室では・・・

ーー今年はどんなニュースが気になりましたか
受刑者たち

「やっぱり戦争ですよね。(次は)WBCですね。感動しました」

大晦日、舎房では零時まで賑やかな声が消える事は無かった。

刑務官
「今から書信(年賀状)を交付します」
受刑者
「身元引受人からです」
受刑者
「嬉しいですね。年賀状が来ると。だんだん来なくなった。最初のころは来ていたけど」

受刑者200人に届く年賀状はわずか100通足らず。社会との距離を感じさせる。

正月には日頃食べられないお菓子が配られる。

炊場担当受刑者「やっぱり甘いものを好む。お菓子は貴重品です」

「生きて罪を償うことが罰」死刑を免れた女たち、出口なき反省の日々

手を合わせるのは“生命犯”達だ。

70代前半・殺人
「朝晩やっている。気持ちが落ち着く」
50代前半・判決懲役15年 殺人
「自分の間違った選択で家族の絆を裏切って壊してしまった」

岩国刑務所では約10人の無期懲役囚、つまり“死刑を免れた女達”が受刑生活を送っている。満期が来れば必ず出所できる有期刑の受刑者は、無期懲役囚をどのように見ているのだろうか。

20代・大麻取締法違反
「無期になって、刑務所で生活してたらここが全てになってしまう。(無期懲役刑に)向き合えるのかなと思う」

60代前半・判決懲役7年 殺人
「私だったらとても…無期って受け入れられるのかなっていう怖さもあります」

無期懲役囚達は世間を震撼させた事件を起こし、死刑と紙一重だった。Aは獄中に飛び込んでくる“死刑執行”のニュースに敏感だ。

40代後半・強盗殺人 無期懲役囚A
「ニュースが流れているのは知っているが、あまり見ないようにしている。ひょっとしたら死刑になっていたかもしれないと背筋がぞくっとすることもあった」

Bは服役して23年。仮釈放の審査が開始される時には90歳を超える。共犯は死刑判決後、既に獄死している。

80代前半・殺人 無期懲役囚B
「死刑は逃れられない事件だった。被害者には申し訳ないけど、生きてここで生活してみて、色々考えてみると、自分も生きているんだなと」

Cの事件は被害者が2人。1審は死刑判決だったが2審で無期懲役に減刑された。共犯が20歳になったばかりだった事から裁判官が2人の死刑判決に躊躇したとも推察される。

50代後半・強盗殺人 無期懲役囚C
「まだ若いし、生きて罪を償わせる方が。(裁判長が言った?)言いました。自分が生きて罪を償うことが罰。死んでしまったらそれで終わり。私が苦しいのは生きること」

鮮明に記憶しているのは被害者が命を落とす瞬間だ。

50代後半・強盗殺人 無期懲役囚C
「(被害者の2人は)無駄に死んでいったと思っている。ただ命を奪っただけ。それを考えると申し訳なくて、無駄に命を奪ったと思って、それを考えるとすごく苦しくなる」

事件後、“家族が自分の存在そのもの”を消さざるを得なかったと語る。

50代後半・強盗殺人 無期懲役囚C
「事件後に出会った友達には、話していないそうなので、私という存在はいないことになっている」

逮捕から30数年が経った今、死刑よりも無期懲役囚として生き続ける事の方が辛いとも語った。

全国の女子受刑者は約3700人。うち約90人が無期懲役囚だ。短い刑期の受刑者が次々に出所して行く一方で“死刑を免れた女達”の出口の見えない日々が続く。 

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