西には「星の王子さま」の奇妙な木々!東には猛毒を食べるサルの森!マダガスカル島に対照的なふたつの自然遺産が生まれたワケ【世界遺産/アンドレファナの乾燥林群、アツィナナナの雨林群(マダガスカル)】

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2024-03-09 10:00
西には「星の王子さま」の奇妙な木々!東には猛毒を食べるサルの森!マダガスカル島に対照的なふたつの自然遺産が生まれたワケ【世界遺産/アンドレファナの乾燥林群、アツィナナナの雨林群(マダガスカル)】

奇妙な生き物の島!マダガスカル

放っておくと巨大化し、根が惑星を貫き、やがて星を破壊してしまう恐ろしい木・・・サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」でこんな風に描かれた「バオバブ」が、ずらっと林立しているのがマダガスカルです。実際は、実を食べることもできる有用な木で、ずんぐりした幹に、上の方にだけ短い枝葉が生えている姿は愛嬌があります。バオバブがこんな形になったのは乾燥した気候に適応したためで、太い幹には水分を貯め込んでいます。

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こうしたバオバブを見ることが出来るのが、マダガスカルの世界遺産「アンドレファナの乾燥林群」です。以前からあった「ツィンギ・デ・ベマラハ厳正自然保護区」という世界遺産に、いくつかの自然保護区や国立公園をプラスして、昨年に今の名前に変わりました。

ツィンギ・デ・ベマラハでは、塔のような巨岩が密集し100キロも続く様子を見ることができます。その奇観は、石灰岩の大地が浸食されて生まれた自然の造形です。さらに、その林立する巨岩の高みには、岩から岩へと飛び移る白いサルの群れがいます。番組「世界遺産」ではドローンを使ってこのフォン デア デッケン シファカというサルを撮影したのですが、目もくらむような高所での凄いワザを上手く捉えることが出来ました。

このツィンギ・デ・ベマラハだけでも十分に魅力的な世界遺産だったのですが、「アンドレファナの乾燥林群」に変わったことによって、さらにマダガスカルの自然環境の違いが分かりやすくなりました。

マダガスカルはアフリカ大陸の東側、インド洋に浮かぶ島で南北約1600キロ、東西は600キロ弱の縦に長い形をしています。島の西側にはバオバブを含む世界遺産の乾燥林がありますが、東側は雨が多く「アツィナナナの雨林群」という別の世界遺産があります。つまり乾燥した西と雨の多い東という島の環境を象徴しているのが、「アンドレファナの乾燥林群」と「アツィナナナの雨林群」というふたつの世界遺産なのです。

マダガスカル島には南北に走る山脈があり、東から吹く湿った風が山脈にぶつかり、島の東部に雨を降らせています。その雨が生んだのが「アツィナナナの雨林群」で、鬱蒼とした森にはやはり珍しいサルが暮らしています。番組で撮影したのですが、雨林には猛毒の青酸を含む特別な種類の竹が生えていて、その竹を主食にする奇妙なサルを撮ることができました。

西では奇岩で跳躍するサル、東の森では栄養を独占するため猛毒を食べるサル。マダガスカルの東西の環境の違いが、そこに住む動物たちの生態に現れていて、特色を映像で伝えやすい自然遺産でした。

アフリカ!大地の裂け目に巨大湖

このように特異な環境と、そこに適応した生き物の姿を見ることができる世界遺産は他にもあります。そのひとつが、ケニアの世界遺産「グレートリフトバレーの湖群」。

グレートリフトバレーは日本語だと「大地溝帯」といい、アフリカ大陸東部を南北7000キロにわたって縦断する巨大な谷です。実は地殻変動によって生まれた大地の裂け目で、谷の幅は広いところで実に100キロ。この裂け目は今も東西に拡がり続けています。

この大地溝帯の谷底に水が溜まり、湖がいくつもできました。ケニアにある、そうした3つの湖を世界遺産に登録したのが「グレートリフトバレーの湖群」です。ボゴリア湖はそのひとつで、水質は普通の生物では生きていけないほどの強アルカリ性。この過酷な環境に適応したのがフラミンゴです。

番組でボゴリア湖を撮影したのですが、フラミンゴの大群を撮ることができました。フラミンゴの足の皮膚は丈夫で、強アルカリ性にも耐えられるといいます。さらに湖にはスピルリナという強アルカリ性水質でも繁殖する藻類がいて、フラミンゴはこのスピルリナを主食にしているのです。ちなみにスピルリナは、赤い色素の元となるベータカロテンを多く含み、これを食べ続けているのでフラミンゴの身体はピンク色になると考えられています。

自然遺産に登録されるための基準のひとつに、「生態系の顕著な例であること」というものがあります。マダガスカルでは、乾燥林と雨林という対照的な森にそれぞれの環境に適応した動植物が暮らしています。またグレートリフトバレーの湖では、強アルカリ性に適応した生きものたちの姿を見ることが出来ます。共に特異な環境が生んだ生態系を残していることで、その貴重さから世界遺産になったわけです。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太

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