お笑いコンビ、マシンガンズの滝沢秀一氏は芸人をやりながら11年間ごみ清掃員として働き、環境省から工房大使にも任命されたごみのスペシャリスト。ごみに関する本を多数執筆するほか、講演などを通した子どもたちへのごみの教育、「ごみ育」にも全国各地で積極的に取り組んでいる。滝沢氏にSDGs達成期限の2030年に向けた新たな視点、生き方のヒントを聞く。
【写真を見る】「ごみという言葉をなくしたい」 ごみ清掃芸人・滝沢秀一さん【Style2030】
【前編・後編の後編】
住み続けられるまちづくりのために「SDGsを終わらせる」。教育が一番大事
――続いてお話ししていただくテーマは何番でしょうか?
滝沢秀一氏:
11番の「住み続けられるまちづくりを」でございます。
――このテーマを選ばれた方はあまりいません。
滝沢秀一氏:
それは被らないんで芸人としてうれしいです。
――この実現に向けた滝沢さんの提言をお願いします。
滝沢秀一氏:
「SDGsを終わらせる」ということでございます。
――SDGsを唱えなくても、大丈夫な地球になるということですか。
滝沢秀一氏:
そういうことでございます。僕の夢でいうと、ごみという言葉をなくしたいなと思います。
――さっき我々が資源ごみと言ってしまいましたが。
滝沢秀一氏:
そこなんですね。スウェーデンってごみ先進国なんです。生まれたものの99%が資源として使われて、1%しか埋め立てなかったりするんです。分別も保育園から教育を始めるんです。
――体に染み付くような形で理解させるということですか。
滝沢秀一氏:
教育って僕は一番大事だと思うんですけども、ルーティンの一つになると思うんです。例えば自分が分別しないと気持ち悪いみたいなことになってくると思うんですね。SDGsって言われてもう何年も経ちますね。この前、20歳ぐらいの人としゃべったら、牛乳をスーパーで普通に手前から取るんですって。なんでそんなふうに思うのって聞いたら、学校で習ったからって。
――手前取りですね。
滝沢秀一氏:
僕なんかおふくろに奥から取りなさいって言われて、それが染みていたんですよ。それが教育で習ったりとかすると、手前から取らないとなんか気持ち悪いなみたいなこととかもあったりするので、子どもの頃からちゃんと教えていたら、ちゃんとやってくれると思うんですよね。
このマークを知っていますか。これはMSCというもので、持続可能な魚の証なんです。乱獲するところとかもあったりするわけです。獲れば獲るだけお金になるから、計画しないで獲ったりするものもあったりするんですね。このマークを使っているものであれば、持続可能で食べても大丈夫ですよというマークなんです。
FSCも、何でもかんでも木を倒しちゃうという人もいたりとかするから、持続可能なものなので大丈夫ですよというマークなんです。子どもと買い物に行ったりすると、このマークのものであれば、もうプラス100円お菓子買っていいよみたいなことで教えたら、喜んで探すんですね。それによって、僕も「このメーカーはつけてないんだ」って気づいたりとかするんですよね。ゲーム感覚みたいなことで買い物をやるっていうのはいいですね。買い物って投票って言われていますよね。何を買うかによって何を支持しているかになるので、安いからいいやっていうことじゃなくて、どういうものを買って誰が喜ぶかってことは大事かもしれないですね。
「日本一のごみ清掃員になろう!」。SDGsは誰が喜ぶのかを考えること
――ごみ清掃員をやっている本業芸人の滝沢さんではなく、地球のことやSDGs、資源のことを真剣に啓発している滝沢さんが、時々テレビで芸をやっている。どちらが副か本業かということを乗り越えている滝沢さんの姿が感じられます。
滝沢秀一氏:
お笑いだけでご飯を食べられたらいいのにななんて思いながら、ごみを回収しているとだんだん途中から苦しくなってくるんですよね。いつまでやんなきゃいけないのかなっていう気持ちが発生しちゃったりする。同期がサンドウィッチマンで、かたやM-1チャンピオンだったりして、売れないなと思いながらごみ清掃やるってすごくつらいじゃないですか。
どうしようかなと思った時に、日本一のごみ清掃員になろうって思ったんです。例えば分別してないものを見て「何で分別しないんだよ」って頭に来るのが日本一のごみ清掃員かというとそうじゃない。分別してもらうにはどうしたらいいのか。SNSでちょっと発信してみようかなとか、こっちの考え方が変わったんです。目の前のことを一生懸命頑張るっていうことを繰り返していると、どっちが本業かあんまり関係なくなってくるんですよ。お笑いのときはお笑いを全力でやるし、ごみ清掃のときはごみを一生懸命回収するということで。
たまたま出合った言葉なんですけど、「セレンディピティ」っていう言葉があるんですね。偶然与えられたところで一生懸命頑張ってその中から幸せを見つけるっていう意味なんですけども、そういう精神で生きていったりすると生き方として何か楽になるなと思ったんです。本当はあれがやりたいのになと思って、今何かをやっているって一番無駄な作業だと思うんです。どうやったら楽しめるかなっていうことを中心に考えるようになりました。
――芸人さんが食えないから清掃員をやっていると思うのか、清掃を一生懸命プロとしてやっている人間が、好きだから時間を作って芸をやっている。やっていることは同じことでも、心の持ちようで生き方が楽しくなる、幸せになるというようなことも著書に書かれています。
滝沢秀一氏:
やっぱり仕事って、人生の中で結構な時間を使うじゃないですか。仕事が面白くないとやっぱり人生つまらないなと、僕は思ったわけですね。この仕事を通して何を見るかということはとても大切だと思います。
――最後に、改めて滝沢さんにとってのSDGsとは何でしょう。
滝沢秀一氏:
僕が思うのは、先を見るという力。自分の使ったお金で、誰が喜ぶのかって考えることは本当にSDGsにつながるんじゃないかなと思います。
(BS-TBS「Style2030賢者が映す未来」2024年2月25日放送より)