![日経平均株価4万円超えに警戒も【Bizスクエア】](/assets/out/images/jnn/1050311.jpg)
日経平均株価が、史上初めて4万円を超えた。上昇のスピードと先高感に市場では警戒感も高まっている。
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日経平均株価4万円超え 半導体が好調をけん引
3月4日の東京市場で、日経平均株価は取引開始直後に史上初めて4万円を突破した。年初からの株高を受けて2月から投資を始めたという男性は「不安は今のところ特に感じていない。増えていく確率が高いだろうということでやっている」。投資歴3年の20代男性は
「増えて嬉しいなっていう。いい傾向なのかなとは思います。このままどんどん上がっていってくれたら、嬉しいなっていう感じです」。投資歴5年の20代男性は「給料上がらないので株やっておかないと、インフレについていけないかなと思ってやっている」と話す。
3月1日のニューヨーク市場で、ハイテク銘柄が多いナスダック総合株価指数が2日連続で史上最高値を更新。これを追い風に、東京エレクトロンやアドバンテストなど半導体関連銘柄に買い注文が膨らんだ。
日本の株価を押し上げているのは、海外投資家。2024年に入り、日本株は大きく買い超され、2月第4週では7兆3000億円以上にも上っている。海外投資家向けのイベントで、日本株の魅力を聞いてみると、アメリカ人投資家は「ほかの国に比べて割安で成長性の観点からは欧米よりもはるかに伸びしろがある」。香港から来た投資家は「賃金が上がってインフレになれば消費が増える。今後も日本株を買い足す」と言う。
海外投資家が日本に向ける期待と楽観。背景にあるのは、強い利下げ期待だ。
FRB(連邦準備制度理事会) パウエル議長:
経済が予想通りに進展すれば、2024年のある時点で利下げを開始するのが適切になるだろう。
この発言を予想通りと受け止めた3月6日のニューヨーク市場では、エヌビディアなどの半導体関連銘柄の買いが集中。株価は、翌7日の東京市場におよび、日経平均は取引開始直後、一時4万400円台の後半まで値上がりし、取引時間中の史上最高値を更新した。
ところがその直後、株価は急落。きっかけとなったのが、この発言。「賃金と物価上昇の好循環を展望できる」。
3月7日午前、日銀の金融政策を決めるメンバーの1人、中川順子審議委員は高い企業収益が予想されることから、賃金と物価の好循環が展望できるとの見解を示した。また午後には、植田総裁が国会で「2%の物価目標の実現が見通せれば、金融政策の修正を検討する」とした上で、「賃金と物価の好循環という観点から、現在進行している春季労使交渉の動向に注目している」と発言。同じ日、連合は傘下の労働組合の要求額を集計した結果、
平均5.85%と30年ぶりの高い水準になったと発表した。市場は来週3月13日の集中回答日の結果次第で、3月中のマイナス金利の解除もあり得るとの思惑から、円を買ってドルを売る動きが強まり、2日で3円近く円高が進んだ。
植田総裁は、アベノミクス以降続く異次元の金融緩和に終止符を打つのか、春闘の結果が注目される。
日経平均株価4万円超え マイナス金利解除の行方は!?
――色々なことが起きているが、一番の要因は?
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
原因は日本自身ではなく、アメリカの株が膨張するので、その大波が日本に押し寄せている。
世界の株式の半分がアメリカ株になるぐらいまで溢れ出していて、分散投資という形で持ちすぎているアメリカ株以外にお金が行くので、アメリカ株が上がると、日本株にも買い圧力がやってきて、小さな池の日本はその水によって大きく水位が上がるのが、今の4万円の図式だと思う。
――ナスダック指数と日経平均株価の重ねたグラフ。見事に連動しているがここにきて日本株が少し上抜けしてきている。価格水準の訂正が起きている感じか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
アメリカ株が崩れない限り、日本株はそんなに大きく暴落はしないとは思うが、今水準訂正が起こっている。
――その背景にあるのが、海外からの投資資金が買い越しになっているということか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
この数字も、全体で2023年の頭から7.3兆円となっているが、実は2023年いっぱいで3.5兆円ぐらいで、2024年のたった2ヶ月で3兆円。半分ぐらいは今年の2ヶ月の話なので、大量に行き過ぎているという見方ができる。
――どれくらいマネーが過剰なのかという試算がある。「マネーストックM2」というものが世の中に出回ってるマネーの量と考えていいのか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
アメリカの肥満度を表している。トレンドは10数年ずっと肥満ではなかったが、コロナ禍で財政出動と金融緩和をやりすぎて20何%ぐらい肥満になったところから、今引き締めてダイエットしてるが、政策金利5.25%でも現状まだ15%ほど肥満があるので、その金が日本に7兆円入ってきているという図式。
――利下げ期待もあって、より株式市場にマネーが入りやすくなっているのか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
これ以上落ちないという人の見方もあるが、それは何で支えられてるかというと、6月ぐらいにはFRBは物価上昇率が鈍化して利下げするだろうという期待感が前のめりなので、それが逆に裏切られることはリスクではないかと感じる。
――いま、ビットコインも金も上がっている。過剰なマネーがそこにも流れているが、利下げ期待が裏切られると、株価が下がるリスクがあるのか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
何もかも上がる「エブリシングバブル」という人もいるが、アメリカの利下げが予想に反すると、絞り込まれるリスクがあるんじゃないかと思う。
――3月6日。FRBのパウエル議長は「2024年のある時点で利下げに転じるのが適切」「インフレ率2%に確信を得るまで利下げしない」という発言した。利下げはするが、市場が期待するような6月にするか明言を避けたという感じか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
2023年は3%台の物価上昇がずっと続いていた、今3月で5月ぐらいのまでのデータで、3%が2%に下がるかどうかは、結構厳しい気もする。
――日銀の政策修正がどうなるか、やや神経質になりつつあるか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
多くの人は4月ではないかと思っているが、3月も十分ありうると。例えば日本の物価データの中で先行性がある東京の都区部のデータを見ると、生鮮・エネルギー除くと、差分がエネルギー要因。まさにエネルギー電気代が上がっているので、2月の日本の消費者物価、つまり3月の決定会合で日銀が物価上昇を見込んで緩和解除するのではという観測に繋がっている。
――注目の賃上げがいよいよ山場を迎えてくる。2023年が3.58%。どれぐらい行きそうか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
4%ぐらいはいくのではないか。この集中回答の結果が15日に出てくると日銀はそれを見て、緩和解除する可能性は結構あると思う。
――そうした中で、足元の実質賃金はなかなか伸び悩んでいるというのが実情。1月がマイナス0.6%と、実質賃金は22ヶ月の連続のマイナス。実質消費支出も1月はマイナス6.3%だった。物価高が厳しく賃金が追いつかず、消費が萎縮している。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
実体経済はそんなにイケイケではない。GDPは速報値で2期連続マイナス。データから見ると1~3月もマイナスで3期連続、特に消費がマイナスだと見られている。物価は日銀がいうように安定的に2%を超えているが、実体経済は逆に物価の重しによって、あまりいい調子ではないというのが実情。
――株高で企業収益も良い。3月11日に10-12月期のGDPの改定値が出て、設備投資がいい数字が出て、2期連続のマイナス成長は回避できるかもという話になっている。だから今やった方がいいという心理が、働くかもしれないということか。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
植田総裁は、気持ちとしてはマイナス金利が非常に副作用の弊害が大きいので、是が非でもチャンスがあるときにやりたいということが先行しているのではないか。執行部の9名のうち5名がOKと言っているから、引き金に指が掛かっていると市場は見ている。
――副作用が大きいマイナス金利をやめるタイミングと口実を探しているのが実情か。
第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生氏:
その通りだと思う。
(BS-TBS『Bizスクエア』 3月9日放送より)